表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は君より先に死なない  作者: いなお
4/22

アルフレッド

王国騎士の朝は早い。

朝4時には目を覚まし、身なりを整えて5時には夜勤明けの騎士と交代して職務に就く。

騎士達は国民の平和を守るために24時間体制で働いているのだ。

しかし、そういう仕事は下っ端の仕事。

騎士団長クラスになると9時出勤17時退勤という羨ましい生活を送る事ができる。

団長曰く「その代わり胃に穴が開くぞ」とのことだ。

何でも上からのプレッシャーがどうとか。

途中から話を聞いてなかったのであまり思い出せないのだが。


「早いなハルト。おはようさん」

「おはよう。アル」

「アルフレッドさんな」

「えー呼びにくいんだけど」

「せめてさん付けろさんを。団長に聞かれたらゲンコツ食うぞ」


アルフレッド・カンタレール。

長髪の赤髪を後ろで縛っているのが特徴的な人物だ。

自分が王国騎士になった時、あれやこれやを教えてくれた先輩騎士だ。


「いやこんな時間に団長がいたら星が降って来るよ」

「ちげえねえ」


二人で笑っていると誰かにゴンと強く頭を殴られた。

痛さのあまりに僕は変な声を出しながらその場でうずくまる。

どうやらアルフレッドも殴られたようで、地面をのたうちまわっている


「俺がこんな時間に来たら何だって?ハルトォ」

「だ、団長、何で本当に居るんだ.....」


黒髪でヒゲつら、勇ましいという言葉がこれ程までに似合う人間を僕は知らない。

再びゴンという音がした。

音のした方向を向くとアルフレッドが動かなくなっていた。

机の角に頭をぶつけたようだ。


「ああ?今度ある闘技大会の打ち合わせでな。他の団長らと話し合ってたんだが結局朝までかかっちまった。だから俺は今から帰って寝る」

「闘技大会?」


床で倒れていたアルフレッドがその言葉に反応して起き上がった。


「ああ、去年お前がハルトに負けたやつだ」

「ふっふっふ、この時を待ち望んでいたぞお!ハルトォ!」


王国主催の闘技大会は毎年開催され、誰でも出場できる腕試しの場だ。

力を持て余した者達がトーナメント形式で一対一で戦い、優勝者には金貨1000枚の賞金が与えられる。

昨年、王国騎士に入団してから団長に勧められて参加をしたのだが、決勝戦でアルフレッドと戦う事になり死闘の末、勝ちを拾ったのだ。


「あー、今年はそんな気分じゃないんだよなあ」

「何!?どうしてだ!?」


率直な感想だ。

色ボケと言われても仕方がないのだが、今はアイリとの事しか頭にない。

しかし団長からツッコミが入った。


「流石に前回の優勝者が出ないのは盛り上がらんからダメだ。団長命令だ。出ろ」


流石団長。

多分本当に熱とか怪我とかしてても前回優勝者は出ろとかいうんだろうな。


「うーん。モチベーション探さないとなあ」

「何だ?金じゃ不満なのか?」

「まあ前回出たのも半分くらいストレス発散のためだしね」

「じゃあお前らが優勝したら俺の権限で金貨1000枚と同等の事なら何でも叶えてやるよ」

「ちょっ俺は普通に金貨でいいんスけど!」


アルフレッドは賞金のために闘技大会に出ている。

しかし、私利私欲のためではない。

アルフレッドの家は貧しく、家族のために王国騎士になった男だ。

給料の半分以上を家に仕送りしていて、賞金も全額仕送りに使うそうだ。

前回優勝した時もその事を知っていたので賞金は全てアルフレッドに渡した。

しかし、流石に貰えないとアルフレッドは言うものだから、言い合いになり、酒場で飲み比べ勝負で負けた方が金を受け取るという勝負が成立し、結局アルフレッドが先に潰れた。

その日の飲み代で結局金貨800枚になってしまったのだが200枚も何に使ったのか自分もアルフレッドも覚えていなく、今では王国騎士の笑い話になってしまった。


「金貨1000枚と同等かあ。考えとこ」

「ああ、考えとけ。じゃあお前ら仕事頑張れよ」

「えっ帰るって話本当だったんスか!」


そう言って団長は本当に帰ってしまった。


「しょうがねえ。仕事するか。今回の闘技大会は負けねえぞハルト」

「残念だけど、アルフレッドには負ける気しないね」


さんをつけろとアルフレッドはツッコミを入れて、二人で今日の仕事場に向かった。


「そういえばお前、あのエルフの子とどうなったんだ?また振られたか?」

「それがなアル。実は付き合う事になったんだ」

「またかよお前。何度振られたら....え?」

「付き合う事になったんだ」

「マジで?」

「マジで」


アルフレッドはアイリの事情を知っている数少ない人間だ。

本当はアイリと二人で報告したかったのだが、その話題になったのでついつい話してしまった。

というより早く言って自慢したかった。

まだお試しだけど。


「やったじゃねえか!ハルト!いやけどまて!闘技大会でモチベーション上がらないって理由まさか女か!?ふざけんな!」

「喜ぶか怒るかどっちかにしてくれ!」


僕の頭をクシャクシャとしたかと思ったらいきなり拳が飛んできた。

しかし、喜んでくれてる様子が見れたのは嬉しかった。

直接は言わないけど。

しかし、闘技大会の優勝商品か。

金貨1000枚でエルフと同じ長寿の命を貰えれば話は早いのだが、いや、金貨1000枚じゃ安すぎるか。

とにかく、今年も闘技大会には出なければならない。

怪我をしたら、アイリに「そんな調子で私より長く生きられるのですか」などと言われたら死んでしまう。

いや死なないけれども。


読んでくださった皆様。

いつもありがとうございます。

無事今日も更新できました。


細かい設定は休みの日に投稿しますね。

次回更新は明日できるかわかりませんが

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ