プロローグ
「一目惚れです。僕と付き合ってください!」
「ごめんなさい。無理です」
開始1秒で振られてしまった。
片膝をつき、一輪の銀の花弁の花を差し出すように彼女の前に出したまま固まってしまった。
いやしかし、こんな事でめげる僕ではない。
「なんでダメなんだ。僕は君のためならなんでもできるのに!」
「何度も言っていますが、私とあなたでは住む世界が違いすぎます」
彼女に告白をしたのはこれが初めてではない。
彼女と出会ってから既に3回目の告白だ。
見事に撃沈したのだが。
周りから彼女のストーカーと言われても否定できない。
若干の自覚もある。
しかし、彼女を一目見た時から僕は彼女のことしか考えられなくなってしまったのだ。
彼女のためになら僕は最悪の悪にも堕ちれるし、最高の善にも成れる。
「私、これから用事があるので失礼します」
彼女のきめ細かい銀髪が風に靡く。
彼女は背を向けその場を去ろうとする。
「ちょっとだけでいい。教えて欲しい。僕の何が駄目なんだ」
去ろうとする彼女の前に回り込み、僕は頭を下げる。
騎士団長や他の騎士達見られたら失笑ものだろう。
騎士が主君以外に頭を下げるなどあってはならない事だ
「だから、そういうお話じゃなくて、私とあなたではそもそも種族が・・・」
「種族がなんだっていうんだ。僕は君を見た時から、君しかいないと思った。僕の全てを君に捧げたいとも思った。お試しという形でもなんでもいい。君の側に居させてくれ!」
心の内で感じたままに言葉をぶつける。
体裁、プライドなどどうでもいい。
彼女の顔を覗くと深いため息をついたように見えた。
「随分と前に、私に告白をしてきた人間がいました。彼は「君を一人にしない」と何度も言いましたが結局、その10年後には病でこの世を去り、私を一人にしたのですよ」
彼女は暗い、とても低い声で呟くように話を続ける。
「その言葉を信じた私が馬鹿でした。私たちに比べて人間は脆弱で短命。人間がいくら言葉を紡ぎ、どうにかするなどと言っても私達より先に死ぬ運命です。だから私は貴方達人間と交わる気はありません」
きっとその男も僕と同じで彼女に惹かれて、どうにかして彼女の側に居たかったのだろう。
同じ女性を好きになった者としてその気持ちはわかる。
しかし彼女はその男の口にした「一人にしない」という言葉を強く信じてしまったのだ。
所詮は人間。
彼女達エルフと人間では生きていく時間が違う。
僕らの一生は彼女達にとってたった数ヶ月の出来事かもしれない。
けど、それでも、僕は彼女と居たいと強く願うのだ。
「だったら約束しよう。僕は必ず君より先に死なない。僕の命、いや魂を賭けても誓約をしてもいい!」
「なっ!?」
魂を賭ける。
それは誓約を破った場合、次の生がないという事だ。
生物が死ねばその魂は次の生へと循環し生まれ変わる。
しかし、魂を賭けた誓約を破った場合、その魂は生まれ変わることはなく、永遠の苦痛という地獄を味わうことになると言われている。
「なんでそこまでして私に」
「何度だっていうさ、一目惚れだ」
そこで初めて彼女が赤面したところを見た。
不意をついたつもりは無かったのだが、とても良いものが見れた。
彼女はまたため息をつく。
先ほどの暗いため息とは違い、少し口角が上がっているように見えた。
「そこまで言うのでしたら魂を賭けて誓約をしてください。本当にできるのであればお試しですがお付き合いしてもいいです」
彼女はきっと本気で誓約をするとは思っていなかったのだろう。
やれるものならやって見なさいと言わんばかりのドヤ顔だ。
今日は本当に色々な彼女の顔が見れた。
彼女には、いや他の誰にもわかってもらえないかもしれないが、それは僕にとって、魂を賭けるだけの価値のあるものだ。
腰に携えた剣を抜き、地面に突き立てる。
「我、ハルト・インクラートは魂を賭けてここに誓約をする。僕はアイリ・ラフィリアより先に死なないことをここに誓う!」
剣が青白く輝き、その周辺を光で包む。
徐々に光が収まり、いつのまにか右手の甲に誓約の紋章が刻まれて居た。
彼女は本当に驚いたように、口を開けて僕を見ていた。
本当に今日は彼女のいろんな顔を知れる。
こうして僕は彼女、アイリより先に死ねない理由が出来たのであった。
お久しぶりです。
いなおです。
少しラブストーリー系の小説を書いて見たいなと思いまして書き始めようかなと思いました。
グラマス、リングリンクスの連載も続けていきますがリングリンクスは正直しばらく更新はしないかなと思います。
グラマス同様頻繁に更新はしたいと思っているのでよろしくお願いいたします。