シャロンの憂鬱
「はぁ~・・・」
シャロンは一際大きなため息をつく。
あの着任式から3時間後、3人は天界居酒屋に来ていた。
「元気だしなよシャロン!」
「そうだよ!」
そう声をかけるのは同じ第512期生のアイとスルームだった。
「いや~・・・アイは恋愛成就課だっけ?
いいよね~THE天使、THEキューピットって感じじゃん・・・
でスルームは秘書課でしょ?
大天使様たちのお世話が出来るなんてなんて羨ましい・・・」
どんよりとした空気を出すシャロンに2人は慌てる。
「でもシャロンの異世界転生課だって凄い所じゃない!」
「ここ最近新設された1番新しい課だから1番のシャロンが選ばれたんだよ!」
「・・・そうかな?」
シャロンは2人の太鼓持ちにヨイショされて少し元気を取り戻した。
「あ、ごめんね!秘書課はもう明日からお仕事なんだよ!
だからまた今度一緒に食事にでも行こうね!」
「はーい」「お疲れ様ー」
スルームと別れを告げ、2人になったシャロンとアイ。
「で、新設されて忙しいのは知ってるんだけど
異世界転生課って実際何する所なの?」
「うーん・・・私もよくわからないんだけど
なんか死んじゃった人間を別の世界へ送るとか習わなかった?」
「あーそういえば教官がそんなこと言ってたわね」
「というか教官もあんまり分かってなかったような気もする・・・」
2人でいくら考えても答えは出ないのでお開きにすることにした。
「まあシャロンだったら何とか上手いこと出来るでしょ!」
「うーん・・・」
「いつまでもクヨクヨしてるなんてあんたらしくないって」
シャロンはポカっと頭を叩かれると、へへっと笑った。
3日後、シャロンは扉の前に立っていた。
扉の上には【異世界転生課】と大きく書いている。
すると中から女性が出てきた。
「あら~?あなたが第512期生のシャロンさん?」
「はい!今日からよろしくお願いします!」
「私はミューといいます~。ここじゃあ先輩だからわからないことあったら聞いてね~」
「はい!ミュー様よろしくお願いします!」
「はいはい~それじゃあ中にどうぞ~」
天使とは基本、役職が同じ場合でも年齢が上であれば「様」を付けて呼ぶのが当たり前だ。
相手から許されたりしない限りは罰則を受ける場合もある。
とりあえずよくわからなかったら「様」を付けて呼んでおけば当たり障りないのである。