プロローグ
ここは天界大聖堂第7ホール。
同じ目的を持った3人が今か今かと待っていた。
とても緊張した様子で、直立不動。
私語などもってのほかな空気だ。
その内の1人、頭に大きな2つのリボンをつけたシャロン。
全体的に能力はそこそこ高いのだが、それ以上にここ一番に強いというのが教官達の評価だ。
落としてはいけない所は必ず落とさない。
その粘り強さというか勝負感のような物があるのだろう。
故に彼女は第512期生の中でも特出した優秀さは無いが主席だ。
天界時間のお昼を告げるメロディが響き渡る。
そして3人の眼前にフワリと音もなく、とても大きな羽根の男が舞い降りた。
彼女たちの3倍以上あるであろう羽根はとても美しく、
長い金髪をなびかせる姿は見るものを虜にするようだ。
「これより第512期生、着任式を始めます」
透き通る様な声で男はそういうと何もない空間から書状を取り出した。
天界の試験はとても難しい、そして厳しい。
シャロン達の第512期生は314人いる。
そこから3年間ミッチリと訓練や勉強をして合格に至るのは約1%だ。
落ちたものはエリートを諦めて一般職に就くか
もう一度、第515期生として入学するかだ。
年齢に制限などは無いが、大抵の者は1回で諦める。
「シャロン、前へ」
「はい!大天使長様!」
元気よく返事をしたシャロンはギクシャクした足取りで大天使長の前へと向かう。
残りの2人はハラハラとその様子を見ていた。
「そんなに緊張することはない、シャロン」
大天使長の優しく諭す言葉にシャロンはなんとか落ち着きを取り戻した。
ニコリと大天使長は笑うと、ひと呼吸おきキリッとした表情に戻す。
「第512期生シャロン、着任先は―――」
シャロンはギュッと拳を握り、目を見開く。
「―――天界異世界転生課!」