初めての勇者撃退
図がPCに合わせているので、携帯だと壁の位置がズレています。すみません。
~~~エリオット博士の研究所~~~
ふむ。どうやら私を生み出したエリオット博士は既に死亡しているらしい。博士の人格データが移植されているので事態の把握は簡単だな。
部屋の四方は入口を除きコンピューターが埋め込まれている。中央に培養槽(私が生まれた場所)が1つだけある。床には研究資料が散らばっている。
代わりに今日から私がエリオットと名乗るのか。マジシャンが着るような衣装が用意してある。白衣ではないのか。変わった人だったのだな。
此処はレベル60が適性のイベントダンジョン。「エリオット博士の研究所」という場所らしい。
勇者が適正レベルであれば潔く負けてよし。適正レベルではなければ此方が勝利して問題ないらしい。
負けてよし? 冗談ではない。死んでしまうではないか。
勇者は順番に適性レベルの低いダンジョンから攻略し、魔王を討伐するようだ。
私のスキルは3つしかない。
①「万能眼」:千里先を見通す事や鑑定を行う等の事が出来る。
②「モンスタークリエイト」:最大5体までモンスターを作成できる。
③「研究者」:物事を分析・分解し、理解できるようになる。
「研究者」スキルのおかげで、基本魔法等は全属性使えるようだ。
しかし、勇者システムか。恐ろしいシステムだな。特に「何度倒しても蘇る」がおかしすぎる。勝てる可能性が見つからない。
だがやれる事はやってみよう。ざっと見た所「勇者システム」には幾つかの欠陥もありそうだ。とりあえずモンスターを作成するか。
『|我が名のもとにその存在と現存を許可する《モンスタークリエイト》!』
『種族を選んでください。(人族・魔族・ホムンクルス)』
『強さを選んでください。(自分のレベル-3まで・自分のレベルの2/3以下の場合は無限増殖可能。』
『職業を選んでください。(自由設定)』
『特徴を選んでください。』
……とりあえず助手が必要だな。
『ホムンクルス』 『ホムンクルス』
『自分のレベル-3』 『自分のレベル-3』
『研究助手』 『雑務専門』
『頭脳明晰』 『ランダム設定』
この2体でいいな。「千里眼」で見た所、勇者のレベルはまだ20程度だ。此処に来るまで3ヶ月はあるだろう。
『作成完了』
眩い光と供に1体目のモンスターが出現した。ストレートな青い髪を胸まで伸ばした女性型ホムンクルス。その瞳は大きく白衣を着ており、胸は貧相だが端整な顔立ちをしている――此方は助手だろう。
再び眩い光と供に2体目のモンスターが出現する。内側に向かって癖毛の緑色の髪が巻くようなショートヘアー。切れ長の目に豊満な胸をしたメイド服を着た女性型ホムンクルス。顔立は慈愛に満ちているが、どこかボーっとしている。――此方は雑務担当か。
「「マスター・これから宜しくお願い致します」」
ふむ。|予想通り機械の様な性格だな《・・・・・・・・・・・・・》。このホムンクルスを人間らしくするのは既に博士が研究済みだ。培養槽先に研究助手を培養液に入れてPCの入力を行う。
余った時間で勇者システムの追加情報を検索しよう。
①バトル時は横並び、ターン制で行われる。
②1度の戦闘で4人までしか参加できない。(モンスターは7体まで)
②移動は縦に1列で並んで移動する。
こんな所か。非常識すぎてまだ信じられない。何だターン制とは?
此方が1度攻撃したら相手の4人が動くまで攻撃するなと? 馬鹿馬鹿しいな。
「マスター、この度は召喚して頂き有難う御座います。もし良ければその……名前を…………」
培養槽から助手が出てくる。ふむ。名前がないと何かと不便だな。
「お前は今日からアオだ。もう1人はミドリ。さっそくミドリを培養槽に入れてプログラムをインストールしてみたまえ。」
ミドリが培養槽の中に入りアオがPCの操作を行う。この培養槽でインストールされるメインの事項は知性と基礎知識だ。
さて、勇者撃退の為に準備を始めるとするか。
3ヶ月後
この適性レベル60のダンジョン『エリオット博士の研究所』は5階建てだ。
エリオット博士が周辺の村から人攫いを行い、非人道的な研究を行っているので討伐して欲しいというクエストのようだ。
この3ヶ月の間、人攫いなど一度もしていないがおそらく勇者はやってくるだろう。それが『勇者システム』だからな。
3ヶ月前、『無限増殖スライム』を召喚し、PT申請したミドリに退治させる事で我々は日々経験値なるものを増やしている。勇者はレベル60付近で来るだろう。正面から戦っても勝てるとは思うが。
「来ました。勇者です。1階の入口付近。モニター映します」
アオの声で緊張が走る。いよいよやって来たか。勇者は4人組。残りの3人を装備から判断すると戦士、盗賊、魔法使いと言った所か。『万能眼』を使いレベルを鑑定する。
「レベル67か。無駄に鍛えてきたえているな」
――こい勇者。 勝負だ!!
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|☆| ☆⇔勇者
|〇| 〇⇔仲間
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|〇|
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| ■■■ アーッ |
――――― 〇――――――
|〇| ☆⇔勇者
|〇| 〇⇔仲間
| | ■⇔落とし穴
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『GOODBY 勇者』
「落ちたな。」
「落ちましたね。」
助手と勇者が落とし穴に落ちた事を確認する。
するとどうだろう。なぜか連れの仲間までも落とし穴に飛び込んでいくではないか。
「マスター、これが……勇者システム……?!」
「そうだ。勇者が落ちたら『なぜか』皆落ちなくてはならない。恐ろしいシステムだな。」
「可哀想な仲間達ですね。」
「そうだな。」
落とし穴の深さは約1km程。底には何もない。ただ掘っただけなので上がっても来られない。
不死身の勇者放置作戦である。万能眼で勇者達の様子を確認してみよう。
~~勇者たち~~
「皆大丈夫か!」
「いててて…まさか落とし穴とはやるじゃんよ。」
「酷いでヤンス。入口に落とし穴は卑怯でヤンス。」
「問題ない。落とし穴は脱出できる隠し扉がある。それが定石。」
(ただ穴を掘っただけなので隠し扉などないがな)
「盗賊。隠し扉を探してくれ!」
「了解でヤンス。スキル『周辺察知』…………隠し扉は……ないでヤンス。」
「「「え?」」」
「う、嘘だろ盗賊? このまま此処で餓死して協会で復活なんて嫌じゃん!」
「盗賊。無能。幸い狭いマップ。探してみるが吉。」
「と、とりあえず皆で手分けして探してみよう!」
(だから無駄だって。隠し扉などないからな。)
~~30分後~~
「やっぱりないな。まさかこんなダンジョンが……。許せない…エリオット!! 狂った研究者め!!」
「いやじゃん!! 此処で餓死するなんて嫌じゃん!!」
「問題ない。脱出魔法を使う。牢獄脱出」
ダンジョンの入口まで無事に脱出した勇者達は再度『エリオット博士のダンジョン』の攻略を行う。
「勇者?どうするの?」
「あれじゃん? ジャンプすればいいじゃん?」
「そうだな。戦士の言う通りだ。ここはジャンプで落とし穴を回避しよう」
「嫌な予感がするでヤンス。」
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|☆| ☆⇔勇者
|〇| 〇⇔仲間
|〇|
|〇|
「助走をつけて……」
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| ☆ トーォ! |
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|〇| ☆⇔勇者
|〇| 〇⇔仲間
|〇|
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(助手。ボタンを。)
(畏まりました。ポチッっと押すのですよ。)
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| ■■■ アーッ |
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|〇| ☆⇔勇者
|〇| 〇⇔仲間
|〇| ■落とし穴
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『GOODBY 勇者』
(こいつら馬鹿だな。)
(パターン馬鹿。間違いありません。)
「だから嫌だっていったでヤンスよ!!」
「もっと強く言うじゃんよ!! 『罠探知』のスキル使うじゃんよ!!」
「まあまあ。被害もないわけだし。魔法使い頼む。」
「盗賊。無能。牢獄脱出」
再びダンジョンの入口まで来た勇者一行である。
「これは専用アイテムがないと攻略できないじゃん?」
「村で情報を集めるでヤンス!!」
(村に行っても無駄なんだがな)
「そうだね。情報収集できなければ、まだこのダンジョンの適正レベルに達していないのかもしれない」
「ん。それが正解。最近は人攫いないらしい。ダメなら次のダンジョン行く。」
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「マスター、勇者一行が諦めました。」
「チッ……また来るつもりか。おそらく四天王ダンジョン攻略アイテム。『浮遊靴』を手に入れたらまた来るつもりだな。その時までにこのダンジョンを忘れてくれてるといいがな」
3ヶ月後。また勇者が来た。
感想をまだ頂いたことがないのでもしよろしければ。