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巨人たちの肖像   作者: 山本 友樹(yamaki)
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最終章Ⅲ(最終回) 明日を選んだ少年

青い巨人と黒い巨人の戦いは壮絶なものだった。




ズシンと響き渡る地面は2人の重量を感じさせた。




2人が殴り合う度に地面が揺れ、まるで地震のようにも思えた。




揉み合い、マウントし、2人の巨人の力は互角だった。




だが、2人の巨人の戦い方にはある「差」があった。




黒い巨人はまるで相手の攻撃をカウンターするかのような余裕のある戦い方であるのに対し、青い巨人はまるで何かに急かされる、必死さが見えた。




青い巨人の拳が黒い巨人の右頬に命中する。




黒い巨人は数100m吹き飛び、頭上から降り注いだ黒い巨体は大きなビルへと降り注ぎ、ビル一つを亡きものにした。




青い巨人は肩で息をし、今にも倒れそうなほどだった。




今思うとここから勝負は動き始めたのかもしれない。




黒い巨人は痺れを切らしたのか、青い巨人へと猛突進していった。




青い巨人はそれを素早く回避し、黒い巨人にキックを食わらし、反撃の体制を整える。




逆に体制を崩した黒い巨人はビル群に突っ込んでいき、倒れ込む。




その隙を逃さぬ様に、上空に飛んだ青い巨人は腕から剣を形成する。




すかさずその剣を黒い巨人に投げつけた。




ブスり!と黒い巨人に剣は刺さる。




黒い巨人は手足をジタバタさせ、もがくがその甲斐もなく、爆散していった。




これが今回の戦闘の一部始終であった。青い巨人は今までにない圧倒的な力を見せつけて勝ったのだ。覚醒したかのようなその見事な動作はあまりにも必至に今の出来事を対処するような・・・・・・・。まるで死に急ぐような・・・・・・。







夕暮れの時刻だった。青と黒の戦いも数時間が経ち、人々の顔にも少しずつではあるが穏やかな表情が戻りつつあった。空はまだオレンジ色であった。




そんな時刻に病院前の公園のベンチに1人の少年が座った。




その少年はかなり苦しそうな顔をしていたがなんだが少しだけ穏やかな表情をしていた。




「僕はもう死ぬのか・・・・。」




悲しげなことを述べる少年。彼は心臓を右手で押さえていた。ズキズキと痛む。痛むなんてものではなかった。まるで体が止まりそうなのだ。




「はぁ・・・・はぁ・・・・」




少年の息は漏れ、今にも倒れそうであった。




少年は思い耽っていた。いやこの場合は走馬灯というものなのだろうか。




少年はかなり辛いことがあった。両親は死に、引き取られた施設ではモルモット同然に扱われた。そして同級生にから凄絶ないじめを受けた。




思い返すと嫌な事も多かった。




だが、自分を頼ってくれる男と彼女がいた。それだけで十分であった。




その印からか記憶を無くした少年の彼女は笑顔で公園を駆け巡っているのが


見えた。少年には気づいていなかった。




少年の目はもうほとんど何も見えなかった。数分前まではぼんやりとオレンジ色に見えていた風景も真っ暗に変わっていく。




「あれ・・・・?おかしいな。まだ夕方のはずなんだけど。」




少年の声は途切れ途切れであった。なんとか喋っている。そうとしか思えなかった。




少年は「不幸な人生」だと心のどこかで思っていた。だが今になって気づいた。




<今を生きている事が幸せなのだと・・・・。>




それに気づいた少年はゆっくりと瞳を閉じ、それが開くことは二度となかった。




だが、彼は最後に声にならない声でこう言っていた。




ありがとう。




少年の名は結城淳。この街を守り続けた英雄であった。そしてその英雄は静かに眠った。






「淳!どこだ!淳!」




隆は淳を探していた。いつもなら淳は戦闘を終えると俺のところに来ていたからだ。




俺はふと病院前の公園に出向いた。もしかしたら美智子ちゃんのところに行っているかもしれない。そう思えたからだ。




予感は的中した。公園のベンチにいたのだ。




そのベンチには幸せそうな顔をして眠っている淳の姿があった。








巨人たちの肖像 終。

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