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巨人たちの肖像   作者: 山本 友樹(yamaki)
33/42

第33話 嘘と真実

風香と別れ、俺と淳はsignalへと着く。




「ここでいいな?」




signalの前の森林は静かであった。




「送ってくださってありがとうございます。」




淳はバイクから降りて、ヘルメットを取る。




「ありがとうございます。」




淳はそう言って去っていく。




「おう、みんなによろしくたのむわ。」




俺はバイクに乗り、また新聞社へバイクを走らせる。




記憶云々の話は実は嘘であった。ただの俺の作り話であり、前例もないただのしょうもない嘘であった。




だがそのしょうもない嘘が淳を救うと信じて言ったことであった。




そしてバイクを走らせながら俺は思う。




「俺もあいつをUBと戦う兵器としか思ってないのかな・・・・。」




バイクは人の気も知らずにガソリンの轟音を響かせるだけであった。






バイクを走らせている男がいた。


口に加えたタバコがバイクの排気口と同じほど煙を巻き上げながら。




「この銘柄じゃあなきゃ俺はやってらんねえよなぁ!」




ご機嫌にタバコを吸いながらバイクを運転する男は(みのる)であった。




会議の時間は先ほど過ぎたが、構うことは無かった。自分の好きな銘柄が切れたのだ。買いに行って吸わねば仕事にならないのだから。




「この銘柄珍しいからといって近くのコンビニで扱わねえのは勿体ねえよなぁ。扱えば固定客になってやろうってのによ。」




タバコを見ながらそんなことを思う。




舞い上がっていた2つの煙の内、車の方の煙が止まる。




「ガス欠かよ・・・・」




emptyと表示されたガソリンに頭をくしゃくしゃしてしまう。




とりあえずガソリンスタンドまでは距離はあるがバイクを押して行くほか無かった。




少しばかりバイクを押していると実の目にあるものが写った。





長く、腰よりも長い髪を携え、手には近くの花屋の文字が入ったビニールに花がいっぱいに入っている。すらっとした体型にそれを際立たせるスカート。実が知っている女性の姿、顔。その人は細い路地を今にも通ろうとしていた。




「嘘だろ・・・・。」




実は驚愕する。




「死んだはずじゃねえのかよ・・・・。」




そう彼女は死んだはずなのだ。UBによって。5年前に。ロシアで。




「風香さん!」




実はガス欠のバイクをほっぽりだし、その女性の元へと駆け寄る。




生きているならこんな嬉しい事はない。生きているのなら・・・・。




「あなたは!実!」




風香と呼ばれた女性は細い路地を少し入ったところで声のする方に振り返り、応答する。




「生きていたんですね!こりゃたまげたもんだぜ!」




久しぶりの再会に普段見せない程の気分が高揚してしまう。




「私もあなたに会えて嬉しいわ。」




ニコリと笑顔を返す風香。




「俺たち新しい組織作ってUBと戦ってるんですよ!ぜひ風香さんも!」




実は風香の手を握り、連れていこうとするが




「ごめんなさい。今は私にもやる事があるの。」




やんわりと返されてしまった。その瞬間、




「うっ!ああ!うっ!ああ!ああ!」




風香が頭を抱えてうめき出したのだ。




「大丈夫ですか!」




実は崩れ落ちる風香をなんとか抱える。




ふぅふぅ・・・・。と治まったのか、先ほどの呻き声が無かったように我に返る風香。この間20秒とて時間は無かった。




「ごめんなさい。たまにある事なの。」




風香はまた笑ってみせた。心配させたくないのだろうか。




「なら良いんですけど・・・・。」




実もなんとも言えない表情を返してしまう。




「それよりその場所はどこなの?私、今は行けないけどあとでなら行くわ。」




少しだけ風香の語調が変わったような気がした。多分気のせいだと思うが。




「あぁ場所でしたらその山のsignalという研究所が・・・・」




ここで実は1つ違和感に気づいた。




「風香さん・・・・目が真っ赤ですよ・・・・?」




真っ赤というのも充血とかそういうものではない。まるで目の中にルビーを入れたように真っ赤。クリアなのである。




「そうかしら?まぁ、そうねえ。」




みのるはその言葉を放たれた瞬間ゾクッと悪寒が走った。訳は分からない。ただ目の前にいる風香を危険と察知したような、そんな感覚であった。




風香の目が揺らぐ。




そうするとそれに呼応するように風香の影も揺れた。




右へ左へ・・・・。影は揺れると同時に大きくなっていく。身長と影の比率などどうでもいい。ゆらりゆらりと大きくなっていく影は1つの別の形を作っていった。




「UB・・・・!」




その影は影から分離し、実の言葉ではそうとしか言い表せない異形の化け物となった。




ティラノサウルスのように巨体で牙を剥き、今にも人を食わんとしている、そんな状態であった。




「風香さん・・・・あなたは一体・・・・!」




巨体は1つの人間を飲み込んでいく。足掻く人間の無力さを表しながら。




巨体の中で血液と肉体が躍る。









ティラノサウルスのような巨体は仕事を終えた様に影へと収納されていく。そこに1本の珍しいタバコの銘柄の箱を残して。

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