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巨人たちの肖像   作者: 山本 友樹(yamaki)
31/42

第31話 励ましとすべきこと。

「おい!実はどこに行った!」




signalの会議室で拓也が1人叫ぶ。




「実さんは先ほどタバコを買いに行く。との事です。」




1人が返すと




「何!?あいつ会議をサボりたいからわざとこの時間にいきやがったな・・・・。」




そして実の好きな銘柄は近所のコンビニとかでは売ってなく、少し離れたタバコ屋まで行くしかなかった。多おそらくそれを買いに行ったのだ。




「あいつしばらく帰ってこないな・・・・」




なぜ今日に限って2人も欠席しそうになるのか・・・・。拓也は頭を抱えた。






「美智子・・・・」




この言葉をいう度、思い浮かべる度に美智子の笑った顔が思い浮かぶ。だが今の彼女が自分に向ける顔は拒絶であった。記憶を失った美智子は淳を否定し、拒絶した。




手に持っていたお湯呑みの温度はみるみるうちに下がっていく。




隆の新聞会社の一室に居させてもらって1時間は経っていた。その間に一口も口をつけていない。




ここ部屋からの眺めは街がよく見えた。復興していく姿も、人の行き交う姿も。




「少年、何をぼーっとしている?」




淳は自分の事だと思い、振り返る。




「やあ。」




振り返るとメガネをかけ、スーツ姿のヒゲの生えた頭が少し寂しいおじさんがいた。




「ど、どうも・・・・」




淳は恐縮そうに頭を下げる。




「さっきからお茶一滴も飲んでねえじゃねえか。」




お湯呑みを指さすおじさん。




「すいません、どうも落ち着いた気になれなくて・・・・。」




淳は申し訳無さそうに言葉を返す。




「まあ事情はよく分からんが、そのお茶は飲んどけ。冷めちまう前にな。うまいぞ、俺が保証する。」




おじさんの言われるがまま淳はお湯呑に口をつける。




「おいしい・・・・。」




味はほうじ茶であったが今まで飲んだことない位のレベルで美味しかった。




「そうだろう、うちの部下の愛内に入れさせりゃそんなもんよ。あいつの実家は茶菓子屋だしな。」




自分の事でも無いのにいきなり自信をつけたかのように自慢し始めるおじさん。大人しい性格である淳は少しおどおどしてしまう。




「おっと、まだ俺の紹介をしていなかったな。」




俺はこういうものだ。と胸ポケットから1枚の名刺を取り出す。




「俺の名前は佐々木和正だ。書いてある通りこの新聞社の編集長だ。」




佐々木と名乗ったおじさんはニカッと笑う。




「結城淳です。」




淳は自己紹介だけは笑顔でしてみせた。




「淳くんかー。そうかー。」




にこやかな笑顔は悪い人という印象はなかった。むしろその逆であった。




「なんで君はここにいるんだ?」




佐々木の言葉に淳は少し言葉に詰まる。




「聞いてはイカンかったかな?まあ隆が友達になるやつは大体いいやつだ。」




佐々木さんの言うことは淳はよくわからなかった。が、暖かさがあった。ぬくもりがあったのだ。




「隆からは辛いことがあった少年を少しの間雨宿りさせてやってくれ。って言われてる。普通ならしないけどあいつだから信用してる。立ち直れそうになるまで思う存分ここにいてくれ。」




「は、はぁ・・・・。」





「おじさんから一言だけ言わせて貰っていいか?」




え、ええ・・・・。淳は戸惑いながら返してしまう。




「嫌なことってのはな、時間が経てばどうにでもなる。君が今落ち込んでる気持ちはわかる。だけどな、人はなんとかそこからじっくり、じっくり考えて、多くの時間使って知恵絞ると何らかの解決策が出てくる。長く生きてるとそう思えてくるもんさ。そして動く。自分のやるべきと思ったことをな。それしか人間できやしないのさ。」




佐々木さんの言うことは淳の心に染み渡っていった。




そして淳は少し考える。




「あなたは、アンノウン・・・・じゃなかった、怪獣と巨人についてどう思いますか?」




淳はアンノウンビーストという言葉を使いそうになるが、一般的には全く浸透していない。もといバラしてはしけない言葉のため、慌てて訂正する。





そして自分の事、そう、巨人のことも少し聞いてしまう。これが淳なりの考えた結果であった。




「アンノウン・・・・なんだそれは?」




いえ・・・・。気にしないで下さい。とだけ淳は返す。




「まあ一言で言うなら巨人はただの人間な様な気がするんだ。」




編集長佐々木の言葉にえ?と淳は聞き返す。




「巨人はずっと悩みながら戦ってるというか、こう、抱えるものが多いというか・・・・。とりあえずそんな感じなんだ。」





「インタビューする人によってはな、神様だ!とか言ってるけどなんだが人間味を感じるというか・・・・。神様ならもっとちゃちゃっと倒しちまうような・・・・そんな気がするんだよなぁ。」




この言葉を最後に淳の頭をワシャワシャとなで繰り回し、




「まっ、そういうこった。」




佐々木はニコッと笑う。




「さ、俺から言えることはここまでだ。あとはお前のその頭で考えるこった。」




佐々木は淳の肩をポンと叩き、部屋から出て行った。




「僕にできること・・・・。」

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