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巨人たちの肖像   作者: 山本 友樹(yamaki)
22/42

第22話 僕がやりました。

UBを倒した巨人はすぐに変身を解除しようとしなかった。なにか不穏な空気を感じていたからだ。


その予感は的中することになる。


突如、地面が揺れ、俺は足場を崩しそうになる。


そうするとコンクリートが割れ、なにかが現れる。


「UBだ・・・・」


コンクリートに舗装された道がエグれかえる。とんがった頭に口からはでかい牙がはみ出ている。大きな尻尾が機嫌を悪そうに上下に振られていた。


大きな奇声を上げながら二足歩行するUB。歩く度に足跡が道路に残っていく。


巨人は大きく飛び上がりUBに飛び蹴りを食らわせる。


キックを食らったUBの巨体が地面に倒れ込み、また大きな衝撃が地面を揺さぶる。


すかさず巨人はUBの尻尾を掴み、上に持ち上げる。そうするとUBも少しばかり宙に上がる。そして下に叩きつける。


UBは声にならない声を上げ、苦しみ続ける。


UBもたまったものではなかったのだろう。


巨人に蹴りをいれて、体制を崩させる。


掴んでいた尻尾を放してしまい、よろける巨人。


すかさずUBは角からレーザー光線を放ち、火花を散らした。


巨人に命中したレーザー光線は巨人の体を焦がす。


膝をつき、焦がされた胸に手を当てる。深呼吸をするように胸を動かし、何とか平常心を取り戻す。


UBに立ち向かおうとし、立ち上がる。


が、そのUBもその場から離れようとし、穴を掘っていた。


「逃げるつもりなのか?」


俺の予想は当たりだった。


巨人は立ち上がるもまたふらつき、よろめいて膝をついてしまった。


UBが穴の中へ去っていくのを見ているしかなかった。


巨人は苦しそうに息を切らしていた。


ただ逃げていく敵を見ることしか出来なかったのだ。





数時間が経った。


火の手はまだ消えていない所もある。被害者の数は増えていく一方だった。


俺は悔しかった。何もできない自分に。そして職業柄この事実を淡々と伝えなくてはいけないというやるせなさに。今もこうしてそんな思いを持ちながらも淡々とシャッターを切り続けている自分に。


数10分ほど前、風香に出会い、彼女の無事を確認できた。


こんな時でも彼女は麗しかった。


こうやって誰かが生きているという事を確認すると暗闇の中で1本の光が差し込む気がした。それほどまでに嬉しいものであったのだ。


だが、目を向けなければいけないのは今という現実だった。


淳の通う中学校は今回は建物への被害はなかったものの、剣道部員3人の犠牲者をだしていた。


「剣道部員・・・・。」


俺はやるせない思いでいっぱいであった。


目の前にあるその中学校の校門。


とりあえずカメラで1枚撮る。校門と校舎はいつもと同じく何も変わっていなかった。


「ここは何とか壊れなかったのか。」


校庭は檻のようなものには焼けた跡があった。火を吹くUBによる火炎攻撃の被害なんだろう。


だが、火が直撃したのは校庭。犠牲者である剣道部員二人は校庭から少し離れた東校舎であった。そこに炎が命中したとは思えない。


「まあここからは警察の領分か・・・・」


俺は思考を止める。ただの新人記者があーだこーだ言ったところで何にもならんだろうし、何より自分の今やるべきことは真実を報道することであると思ったからだ。


敷地内を歩く。被害があったのは校庭だけなので特に変わったことはない。いつも通りの学校だ。






「おーい!淳!」


校舎内を歩いていると偶然目の前を通りかかった淳がいたので声をかける。


いきなり声をかけたからだろうか?淳の体がビクッと上下に揺れた。


「びっくりさせてしまったか?悪い悪い」


俺はへへへと笑い、淳の方へかけより、声をかける。


「い・・・・いえ・・・・僕は・・・・」


言葉の歯切れが悪かった。


「具合でも悪いか?」


心配して俺は声をかけるが、


「だ・・・・大丈夫ですよ。少し疲れてるだけです。」


淳は両手を前に突き出し、遠慮する様子を見せる。


「そ、そうか・・・・。」


少しだけ作り笑いを互いにして見せる。確かに今の状況は悪いが無理矢理でもなんでも少しでも笑える状況はまだマシな方であろう。


「またこの学校から被害者が出ちまったらしいな。」


この言葉を俺が発した時、何故か淳がまた大きくドキッと体を上下させた気がした。


「まあお前のせいとは言わないさ。こういうのは・・・・なんだ・・・・運なんてのが付き纏ってるからな。」


励ましの言葉が中々うまく思いつかない俺は頭をかいた。


確実に淳の顔が真っ青になっていくのを感じた。


呼吸がいきなり早くなり、過呼吸と言って差し支えないほど早くなっていく。そしてフラフラと倒れそうになる淳を抱き抱える。


「おい!本当に大丈夫かよ!」


俺は淳の体を揺らしながら話しかける。


「殺したのは僕なんです・・・・」


淳は意識が朦朧とする中、声がとぎれとぎれになる中、聞こえたのはそのような言葉だった。


「なんだと・・・・?」

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