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第7話☆沼川海湖4

 美智子が小川の顔に見とれていると、中年の箕浦は顎で救急車を示して言った。

「彼の知り合いの方ですか?」

「知り合いっていうか、つい最近まで短期のバイトでよく顔を合わせていたんです」

 美智子の返事に、箕浦と小川は目配りをする。

 次に口を開いたのは小川だった。

「彼について知りたい事があるので、恐れ入りますが署までご同行願えますか?」

「私がご同行ですか?」

 刑事が連れて歩くのは容疑者。と推理小説では当たり前の展開である。

 それをよく知っている美智子は、私が容疑者なの!? と焦ってしまい、口から間違った丁寧語が出てしまう。

 小川はそんな美智子の様子を見て品の良い笑顔で言う。

「大丈夫ですよ。彼について、少しお話を聞かせて頂くだけですから。なんでしたらお茶も出しますので」

 二人の刑事の誘導はかなり上手く、美智子は知らず知らずのうちに歩かされ覆面パトカーの前まで来ていた。

「あの……、あの……」

 美智子は小川しか見ていない。

「何か都合でも悪いのかな?」

 そう言われて、美智子が右を見ると中年の箕浦の顔がある。美智子としては、中年オヤジより小川がいいと思い、しかし相手は警察の人間、箕浦に悪く思われるのもイヤなので、ニッコリと愛想笑いをしてから、すぐに小川の顔を見た。

「私、お茶より、アイスコーヒーが飲みたいです」

「アイスコーヒーも署にあるのでいいですよ」

 小川は笑いを堪えながら言う。その反対側にいる箕浦は、遠慮の無い美智子の態度に顔を引きつらせている。

「無料ですよね?」

 美智子の問いに、小川はついに笑い出した。

「署の飲み物は無料ですよ。あははは」

 貧乏とは、人をここまで貪欲に、そして恥らう事さえもなくしてしまうのだろうか。

 今年55歳になるベテラン刑事の箕浦は、今までいろんな事件を担当し、事件の陰で繰り広げられた人間模様を見てきた。それと同時に犯人やそれに関係する人々の様々な性格も見て感じてきた。

 犯人を含めたそれらの人々はある程度似通った性質を持っている。というのが箕浦の持論だった。

 だが、今箕浦が腕を掴んでいる美智子は、その誰にも該当しない性質を持っていた。

 この娘はどう扱えばいいんだ? この娘が犯人だとして、どう誘導尋問すれば素直に証言するのか? 箕浦は覆面パトカーに乗り込みながら悩み考える。

 小川と後部座席に座った美智子は身を乗り出す。

「わぁ!! 覆面パトカーの中っていろんな機械があるんですね」

 子供のようにはしゃいで機械に指をさして質問する美智子。

「あれあれ。あれは何ですか?」

「これはね、無線機の一部です」

 小川は笑いながら答える。

 箕浦は美智子を見て頭を抱える。こいつは刑事の管轄じゃねえ。保育士の管轄だ。と。

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