第5話☆沼川海湖2
美智子は、何があったのか、もっと近くで見たいと思い店の外へ出た。
すると、またパトカーがサイレンを鳴らしてスターバックスコーヒーの店の前に停車する。
2台目に停車したパトカーは白のセダン。警官が乗る白黒のパトカーとは色が違う。助手席の屋根の上に赤提灯がありくるくると回っている。いわゆる覆面パトカーというやつだ。
その覆面パトカーからビジネススーツに身を包んだ中年のオヤジと若い男が降りた。
これはただ事ではないと思った美智子は、覆面パトカーから降りた二人の男のあとをついていく事にした。
肩を並べて歩く男の若い方が携帯電話を耳につけて何かを話している。
美智子は、さり気なく近づいて、その会話内容を聞こうとして耳をそばだてた。
「現場は、スターバックスコーヒー新宿新南口店の南にある路地を入った所です。――はい。――そうですね。――分かりました。また終わり次第連絡します」
若い男は携帯電話を折りたたむとズボンの後ろポケットに入れて、中年の男と路地に入って行く。
美智子も二人に続いて路地に入った。しかし、路地にいた警官に行き先を遮られる。
「ここから中に入らないで。外に出て」
「あの、何かあったのですか?」
「ダメ。ダメ。早く外に出て」
美智子は、警官に肩を掴まれ半ば強引に回れ右をさせられて、来た道を逆に歩かされて路地の外へ押し出されてしまった。
警官は、すぐに美智子の目の前で封鎖のマークが入った黄色いテープを引いて、美智子の行く手を完全に遮断してしまう。
「ちょっとくらい教えてくれてもいいのに」
ビジネススーツの二人の男は、先にいた警官に胸から出した手帳を広げて見せている。二人の男は刑事のようだ。
「え! うそ? 事件!?」
二人の刑事が立ち止まった所に、地面に尻をつけて座り壁にもたれている男が見える。
二人の刑事は白い手袋をして、地面に座っている男の服にある全てのポケットの中を調べて、財布などを取り出し中味を確認する。
無線機を腰につけた警官が二人の刑事の横に立ち、確認した内容を連絡した。
「発見された男は、脈は無く、心肺が停止していると思われます。所持していた免許証によると、害者の名前は真鍋幸彦。35歳。名刺によると○○貿易の社員のようです」
心肺停止というのは死を意味する。それは美智子もよく知っているのだが、もっと凄いのは心肺停止状態の真鍋幸彦が美智子の知り合いと同じ名前であり年齢だという事だった。
「真鍋ちゃんって、あの真鍋ちゃんなの!?」
美智子の知り合いの真鍋ちゃんなのか。遠くから見ただけでは分からないが、美智子がちゃん付けで呼んでいるところをみると、美智子は気づかずに心肺停止状態の彼を、知り合いの真鍋ちゃんだと決め付けているようだ。