第24話☆推理2
美智子は1度口を閉じるが、宣戦布告という意味を含めて箕浦と視線を交わしてからまた口を開いた。
「小説家の私の考えですが、犯人はその織姫の実の母親だったんじゃないのかな。私が見た顔写真は、血の繋がりがあるって説明をしたら誰もが頷いたと思うくらい、似た女性ばかりだったもの。きっと織姫も、母親である犯人に似ていて、真鍋ちゃんはそれで織姫を好きになって、やっと本当の愛を見つけたんだと思う。でもその幸せは続かなくて、離婚か養子に出したかなんかで織姫と犯人は苗字の違う実の親子で、犯人は実の娘に手を出した真鍋ちゃんが許せなくて、女としての嫉妬もあって、真鍋ちゃんを殺してしまったんじゃないのかな」
小川はそっと美智子の背中を押した。
「沼川先生。体が冷えるといけないので、家に入りましょうか」
「うん。でも最後にもう1つだけ」
美智子は小川を見て頷いてから箕浦を見た。
「もし織姫が、真鍋ちゃんとの間にできた娘だとしたら。実の父と娘が親子だと知らずに肉体関係をもってしまっていたら。それを知った母親は、何を考えて何を思ったのかな」
箕浦は真顔になる。そして真剣な表情になって言った。
「申し訳ありませんが、それ以上の話はしないで頂けますか? 例え小説の中だけの話だとしても」
しばらく三人の沈黙が続き、美智子は口を閉じて箕浦と小川を交互に見ていたが、また夜空を見上げて話し始めた。
「そうですね。守秘義務がありますもんね。でも1つだけ小説家の私でも考えつかない事があるんです。なぜ二人目が殺されたのか……」
箕浦は、美智子の背中を押して歩かせる。
「もう考えるのはよしましょう。我々も署に戻ってやらなければならない事がありますので。おやすみなさい。沼川先生」
門を通った美智子を見届けてから、箕浦と小川は白いセダンに乗り込んだ。
箕浦はシートベルトをしてから小川に言う。
「すまんが、車を門につけてくれ」
「はい」
小川はにやつきながら返事をして、発進させた車を美智子の自宅の門に横付けする。
箕浦は、助手席のガラス窓を下げてから言った。
「事情聴取が取れていないので、私の刑事としての経験上の作り話なんですが」
箕浦は、ここで初めて美智子という人格を受け入れ、ライバルに挑むような視線を美智子に送りながら言葉を続ける。
「二人目の被害者は、何らかの方法で織姫の個人情報を知り、犯人がエステティック会社の社長だと知り、黙っててやるから金を出せと要求をしたので殺された。というシナリオはどうですか?」
美智子は万遍の笑顔になる。
「刑事さん。それ最高のシナリオです。題名は、推理小説「私が愛した彦星」これでいいですか?」
箕浦は、拳から親指を立ててGOODと美智子に伝える。
運転席では、小川がさよならの意味で手を振っている。
美智子が手を振ると、白いセダンはエンジン音をあげて走り去った。
美智子は玄関前で立ち止まって、また夜空を見上げる。
「明日は七夕か。晴れるといいな」
そういうと家の中へ入って行った。
終