第18話☆再会1
7月6日。
残りの容疑者は、内山陽子、近藤房江、瀬田香織、野口里子の4人。
箕浦と小川は、昨日4人の容疑者から23時ごろの行動内容を聞いたのだが、4人とも家族と自宅にいたというアリバイがあり、誰一人として崩れない4人の完璧なアリバイに頭を悩ませていた。
午前の新宿駅前は薄曇りではあるが晴れている。
箕浦は捜査の行き詰まりを感じ、小川と共に真鍋が殺害されたスターバックスコーヒー新宿新南口店の横にある路地に来ていた。
真鍋が殺害された現場には供養のための蝋燭と線香と生花が置かれている。
「犯人は高い確立で犯行現場に戻る」
箕浦は置かれている花を見ながらポツリと呟いた。
「ここで張り込んでいる担当者によると、瀬田香織以外は全員ここに来て手を合わせているそうです。瀬田香織が来ないのは、まだテスト期間中というのと、援助交際紛いの浅い付き合いだからだと思いますが」
箕浦は意見を言った小川を睨んだ。
「最近の女子高生はな、親にも学校にも内緒で妊娠をして卒業するんだ。何の根拠も無しに浅い付き合いと決め付けるな。分かったな」
「……はい」
箕浦に一喝されて小川は反省しながら返事をした。
箕浦は眉間にシワを寄せて若手刑事の小川の判断に苛立ちを覚えていたが、後ろから声を掛けられて、苛立ちを忘れてしまうほど驚く事になる。
その声の主は野本美智子。沼川海湖というペンネームでファンジー小説を書いているプロ小説家の美智子だった。
美智子は、左右に垂れ下がったお下げと、肩から提げているショルダーバックという、出会った時とほぼ同じ姿をしている。
「あ、小川和也さんだ。お久し振りです」
「先日はどうも」
小川は笑顔で会釈をする。
箕浦は美智子と目が合わないように横を向いた。
美智子は、箕浦の態度をなんとも思わないのか、それとも仕返しなのか分からないが、年上の箕浦に遠慮なく指をさす。
「えっと確か……、そうそう箕浦次郎さん。次男って分かりやすい名前ですよね」
「長男だ。控えめに細く長く生きればいいという意味で、親が次郎と名付けてくれたんだ」
箕浦は抗議のつもりで言ったのだが、美智子にそれは伝わらない。
「へえ。次郎さん思いのご両親なんですね」
美智子のペースについていけず、箕浦は嫌悪の表情を表して鼻筋にシワを寄せてた。
「なんでお前がここにいるんだ?」
「バイトが無い時は、いつもそこのスタバで小説を書いているんですよ。それに、犯人は高確率で犯行現場に戻るっていうし。事件の時、私もここにいたから、もしかすると犯人の顔を見ているかもと思って。もう一度犯人の顔を見たら思い出すかなぁー。って」
箕浦の顔色が変わる。箕浦は自分の意思で美智子と視線を合わせた。