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第16話☆容疑者:林泉30歳

 林泉(はやしいずみ)は胸が大きい女性だった。

 夕暮れの取調室。泉はごく普通に椅子に座っているだけなのに、泉の胸は机の上に載っているように見えて、箕浦も小川も、調書の記録担当者も、泉本人に気付かれないように机の上にある巨乳にチラリチラリと視線を送っていた。

 泉は30歳。公務員の夫を持つ二児の母である。やはり泉の瞳も大きく、髪も緩いウェーブで肩まである。

「昨日は幸ちゃんとホテルにいました。幸ちゃんとは午前で別れて、家で昼食を摂ってから、午後はプールで泳いでいました。細かい時間までは覚えてないわ」

 泉は艶のある声でおっとりとした口調で話す。夫がいる身でありながら浮気をしている恥と後悔は微塵も無い様子だ。

 箕浦は聞きにくそうに質問をする。

「ホテルにいたというのは、やはり?」

「ええ、いろいろしていました。何をしていたのかは、私より年上のあなたのほうが分かるわよね?」

「まあ、そうですね……」

 泉に聞き返され、箕浦は頷くに頷けず鼻の天辺に脂汗をかき始める。箕浦は即小川に目配りをする。それは「仕事でこういう女は相手にしたくない」という箕浦なりのSOS信号だった。

 小川も「僕も無理です。セクハラと思われたら面倒な事になるので」と目配りで返事をする。

 結局「役に立たん奴だ」と箕浦からの視線攻撃を受け、小川が心にダメージを受けたところで、箕浦が苦しみながらエロ好き専業主婦の泉に質問をする事になった。

「昨日ホテルで会っていた時の真鍋幸彦との会話内容をできるだけ正確に教えて下さい」

 泉は、かなりゆっくりな瞬きを1回だけしてから箕浦を見た。

「ホテルで会っていた時の会話って、男の人が一番知っている事じゃない。それを聞きたいって、これも刑事さんのお仕事なの?」

「申し訳ありませんが、事件に関する事なので」

 中年といえど箕浦も男。理性を失わないように心の中で「自分は刑事だ。しっかりしろ。仕事だ。終わったらDNAの採取だぞ」と念仏のように唱えるしかない。

 泉はゆっくりと体を上下させて座り直した。その時に胸もそれなりに揺れ動いたのはいうまでもない。

「ホテルの部屋に入った時に、幸ちゃん、これを最後に別れようって言ったの。ほかの女性とも別れるって言っていたわ。だから私、幸ちゃんとは最後だと思って、昨日は大声が出てしまうくらい、いろんな事をしたのよ。その時、私が言った言葉は○×△□○×△□……」

 その後、箕浦たちはエロ好き主婦のホテルでの情事を聞かされる事になり、しかし泉の話を止める者は誰一人としてなく、真面目な箕浦も、ハンサムな小川も、調書の記録担当者も、それぞれ黙々と自分に与えられた刑事としての立場を貫いたのである。

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