第11話☆容疑者:近藤房江40歳
次に取調室に来た近藤房江40歳は、各地にチェーン店を置く某エステティック会社の社長である。
同じ会社で夫と共に働く房江は二児の母でもあり、仕事と家庭を両立させていた。
房江は40歳のという年齢ではあるが、大きな瞳と緩いウェーブの肩まである髪といった、内山陽子と似た風貌をしている。
箕浦は、分刻みというスケジュールの忙しい身の上の房江がどうやって真鍋と浮気をし、もし犯人ならば、どうやって真鍋を殺害したのか、房江の個人情報を得た時点で大きな疑問を持っていた。
「あの、失礼を承知で率直に伺いますが、昨日の2時半ごろ、どこにいましたか?」
取調室にいる房江は、入室した時から終始俯いていたが、箕浦の声を聞いてゆっくりと顔をあげた。
房江はエステティック経営会社の社長だけあって、40歳の今でも肌が綺麗で美人である。年を言わなければ30の前半に見える。
房江は箕浦の質問に答えようとして、昨日の事を思い出そうとしているのか、視線を泳がせながら答えた。
「昨日の2時半ごろは、新宿駅にいました」
「新宿駅のどこに?」
「すいません。40になると思い出すのも一苦労で、スケジュールを調整してやっとの思いで作った余暇だったので、新宿駅周辺の店で買い物に奔走していたのは分かるんですが、時間ごとにどこにいたのかまでは、はっきりと覚えてなくて……」
箕浦は、どうのような返事が返ってきても動じる事なく次の質問をする。
「買い物をしたのなら、レシートを受け取っていますよね? そこに清算日時があるはずなんですが」
「すいません。会社の経費で落としているので、領収書は全て手書きで、時間までは書いてないんです」
「なら、後日担当の刑事が店に直接伺いますので、昨日行った店を全て教えて下さい。あと近藤さんのDNAを採取したいので、ご協力をお願いします」
箕浦は言ってから小川を見た。小川は無言で頷いて、房江にDNA採取キッドを手渡した。