表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

第3話:身勝手な私

私が人を食べ始めたのはごく最近の事。食べたのはまだ二人だけ。食べるのは痴漢だけだった。痴漢からなんて逃げることも出来たけど、でも食べたくて仕方なかったし、痴漢なら食べても心は痛まないと思った。私の心は完全に麻痺していた。



いつからだろう。人を食べたいと思うようになったのは。




私の初恋の人は、実は新くんだった。それまで告白されることは何度もあったけど、誰一人として好意を寄せることは無かった。そんな中で、人生で初めて“食べたい”と思った人。それが新くん。最初は“優しい人”としか認識していなかったけど、いつしか“肉”と認識するようになっていた。


でも、食べることは出来なかった。“肉”であると同時に“愛しい人”でもあったから。



「好きな人っていうのは希さんのことだよ。」



そんな新くんに、私は告白された。死性愛(タナトフィリア)であると。私のことが好きだと。

私が新くんを食べようとしているにも関わらずに。



とても嬉しかった。だってこんなにも汚れた私に“好き”だと言ってくれたのだから。

気がつくと、ナイフを置いて私は涙を流していた。


彼は不思議そうな顔をしていたが、そんなことには気が向かなかった。



ただ“彼なら自分を救ってくれるかもしれない”。そんな気がしたのだ。

いつのまにか“彼に対する食欲”も無くなり、私の中にあるのは“愛しい”という感情だけになっていた。


人を(あや)めて食べていた自分が彼と釣り合うとは思わない。けれども、彼と共に幸せになれたら、と思う自分もいた。



私は本当に身勝手(みがって)な人間だ。自分の食欲の為に他人(ひと)を食べていたくせに、愛しい人と幸せになりたいと願っている。本当に身勝手。でも願うだけなら自由だから。




「私は……新くんが好きだよ……」




身勝手な私は、身勝手な返事を彼に返した。


彼を不幸にするだけかも知れないのに。




私は本当に身勝手。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ