2.0x10^6kW
発電所には野外運動場があり、発電少女たちはグラウンドで運動をしたり、芝生で日向ぼっこをしたりします。半国有の施設なだけあって、運動器具や広さは結構充実しており、脱走防止用の高電圧電気鉄線も完備しています。今日もたくさんの発電少女が各々勝手に体を動かす中、一人の発電少女が鉄(注:正しくはアルミニウム合金)棒で逆上がりをしようと頑張っているようです。
「ふんっ」
見ている限り二十回目の挑戦もむなしく終わりました。足は伸びているのですが、やはり腰がしっかりと上がらないことにはできないのが逆上がりです。この程度なら発電効率に影響は無いので止めなくても大丈夫でしょう。
「ふいぃー。できない」
「手伝うの」
見かねたもう一人の発電少女が鉄棒の元へと来ました。逆上がりを手伝ってあげるつもりのようで、逆上がりをしたい発電少女のお尻をぐいぐいと押しています。
「いい。一人でやる」
「さっきからできてないの。二人でした方が早くすむ」
「これは私が一人でする」
「どうしてなの?二人でしたらすぐできるのに」
「とにかく手を離して」
手伝いに来た発電少女は仕方なく手を離しました。鉄棒の側に座って逆上がりへの挑戦を見守るつもりのようです。
「ふんっ。あふぅ」
「……」
「ふんっ。いへぇ」
「……」
「ふんっ。うひぃ」
「もっと手を体の近くにつけた方がいいの」
「ふー、ふー。なに?」
「だからね」
座っていた発電少女が立ち上がり、その隣の鉄棒を掴みました。そのまま少し助走をつけて一気に、ふんっ、と見事な逆上がりをしました。鉄棒の上で腕を突っ張り、足をぷらぷらしています。
「こうやる。上手くいくの」
「顔をぶつけそうで怖い」
「そんなことはないの。こうやって、ふんっ」
「……やってみる」
逆上がりのできない発電少女が再挑戦します。しっかり脇をしめてふんっ、と一息に足を振り上げます。しかし腕の力を途中で緩めてしまい、体を鉄棒の上に運ぶ前に勢いを無くしてしまいました。
「できない」
「もう一度。しっかり鉄棒を握って、思いっきりやるのがコツなの」
「手が擦れそう」
「そんなことはないの。ほら、しっかり持ってても、ふんっ。手は痛くないの」
「わかった。ふんっ」
おお、いい線いってます!が、ダメでした。やはり勢いが少し足りません。逆上がりのできない発電少女はうむむ、と唸っています。
「できないよ」
「えっと。手は思いきり握って、思いきり走ってみるの。大丈夫、棒にはぶつからない。今からやって見せるの」
「ううん、やらないで。分かったから」
おや、発電少女の目付きが変わりましたね。さっきまでアドバイスをもらう度に不安そうな顔をしていたのに、今は覚悟を決めた真剣そのものといったところでしょうか。発電少女はアドバイス通り脇をしめ、しっかりと握り、そして思いっきり走りました。
「ふんっ」
ぐるんっ、と一回転。ついに発電少女がやりとげました。無事に逆上がりを達成しました。信念が結果に変わった瞬間です。
「やった。できた!」
「おめでとうなの」
逆上がりができるようになった発電少女は大の字で芝生に倒れこみ、達成感のあまりえへへへ、と笑いが止まらないようです。アドバイスをしていた鉄棒の上の発電少女も嬉しそうです。
ん、おやおや。
「……あれ。なんで棒の上にいるの」
「うん?普通にやったの、普通に」
「私もやる。ふんっ、あれ?」
再び一回転する発電少女。どうやら鉄棒の上に止まることができないようです。
「できないの?」
「今からやる!またコツを教えて?」
「ふふふ。いいの。まずはね……」
発電少女たちは再び鉄棒をし始めました。原因は分かりませんが、その後彼女たちが鉄棒をしている間は発電効率が少しだけ上昇したことが確認されたため、私どもとしてはこれからも鉄棒に勤しんでいただきたいですね。
こうして今日も、発電少女たちの何気ない生活のおかげで、地球は明るく輝いているのでした……