議事録 【編集済】/11/【編集済】 35#7
【これは一般公開用の資料です】
【語句注釈等はございません】
【参加者の名前は意図的に伏せてあります】
【音声は加工されています】
【記録は議長のものを採用しています】
では、これより定例報告会及び要議事項の審議を始めます。
まず各班の報告から。【1】班から順に報告を始めてください。
「はい。【1】班が担当する発電少女のうち、今期間中に短絡が確認された個体はゼロ。崩壊、死亡、【編集済】も同様に確認されておりません。発電量は提出した記録に相違ありません。その他、要議事項はありません」
「【2】班。同じく短絡、崩壊、【編集済】は確認されませんでした。記録に齟齬はなく、要議事項もありません」
「【3】班が報告します。期間中、短絡を起こした個体が二人確認されましたがその後の異常はありません。崩壊、死亡および【編集済】は確認されませんでした。発電量記録は正確ですが、要義事項として、こちらの発電少女間で流行している鼻風邪への対策として養護教諭一人の派遣と適切な風邪薬を要求します」
簡易的に決を採りましょう。【3】班の要求を許可してもよろしいでしょうか。はい、ありがとうございます。要求を承認しました。のちほど発電少女たちの病状を詳細に報告してください。では次……
【操作:早送り】
【操作:早送り終了】
……承認しました。支部に企画書を提出しておきますので、次回の発電所見学に間に合うように調整しておいてください。次。【E】班が報告したのち、要議事項について検討を始めたいと思います。
「はい。では、【E】班が報告します。今期間中に短絡を起こした個体はのべ二十三人で、うち二十二人は停電時訓練によるものです。崩壊の兆候がみられる個体が二人、うち一人が【編集済】、現在の要注意個体です。要議事項はこれら二人の今後の扱い方と、行われた停電時訓練において不適切な行動をした職員の処分について、それから発電少女からの要求物品に審議を要すると判断されるものがありましたので、それについてです」
なるほど。ではこれで各班の報告を終了し、要議事項の審議に移ります。えっと、現在手元にある要議事項は【E】班の三件のみですが、まず最初の二つから片をつけてしまいましょうか。崩壊の兆候がみられる二人に対しては、規定通り見学に回す……というわけにはいかないようなことでも?
「はい。現在崩壊の兆候が見られる個体のうち、【編集済】は先ほども申し上げましたとおり要注意個体の片割れです。今【編集済】を引き離してしまうともう一方の崩壊を誘発してしまう可能性があります。さらにもう一人の要注意個体ですが……」
「ああ、いつだったか【他の発電所】から移送されてきたあの」
「はい。彼女もまた、大きな影響を受けかねません。崩壊の兆候が見られる個体のうち、要注意個体でない方は見学に回してもさほど問題性は無いと思われるのが救いですが、最悪の場合、今回の操作で四人の電源個体を失うことになりかねません」
「このままだと状況は酷くなる一方ですよ」
「ですから失った電源の補填分が必要であると考えております」
つまるところ空いた穴を埋めるだけの個体を確保してほしい、ということですね。
「試算したところ、失われるのが四人程度ならどうにか年度末まで供給分の電力は賄えます。しかし、緊急の電力供給要請や事故に対応するには不安が残ります。最低でも二人は欲しいところです」
電源個体を二人、ですか。さすがに我々の一存では決めきれそうにないですねぇ。きっと上も移送で対応しろと言ってくるでしょうし。
「ですが移送にはそれなりにリスクが伴いますよ」
「そちらに以前移送した個体はもう要注意個体になっているようですしね」
「申し訳ありません」
まあ、今ここで揉めていても仕方がありません。【E】班には発電少女用に市販の暖房器具を支給しますので、電源個体の補充について上からの返答があるまでの間は空調の使用を半分に控えることを命じます。他の班の皆さんも各自節電に努め、非常用電源の定期点検を忘れずに行ってください。
「停電時訓練のあとに停電のリスクが高まるだなんて、本末転倒というやつですかな?」
「起きてしまったことは仕方がありません。逆に考えれば停電時訓練の延長のようなものですし、カリカリせずにいきましょうよ」
「本当に申し訳ございません。それで、職員の処分についてですが……」
何か提案があるのですか?どうぞ、遠慮せずに言ってください。ここはそういう場なのですから。
「はい。彼の行動によって我々だけにとどまらない損害が発生したのは確かなのですが、彼がまだ今年度に入ったばかりの新人であり発電少女の扱いに不馴れであること、かつ故意にそうしたわけではないこと等を鑑みて、減給処分程度に抑えるのが妥当ではないかと」
「それでは少し甘すぎるのでは?」
「いや、軽い処分には一理あります。停電時訓練で混乱した大量の発電少女の中に居れば、多少なりとも霧中効果の影響を受けるはずです」
「しかし彼らは十分に防護用の装備を整えていたはず……」
皆さん少し落ち着いてください。【E】班、せっかくの新人職員を擁護したいのは分かります。ですが、私も失念していて申し訳ないのですけれども、そもそもその彼はいったいどのようなことをしたのですか。処分の話はそれの如何にもよります。
「はい。停電時訓練に参加した他の職員、それと彼自身の証言するところによれば、発電少女たちの部屋に入った際、霧中効果に混乱した彼は何人か発電少女を蹴り飛ばしてしまったようで、蹴り飛ばされたとおぼしき発電少女たちに怪我などは見られませんでしたが、何せ彼のそばには当時要注意個体がいましたので……」
なるほど。今回、崩壊の兆候が見られるようになったのは彼の責任ではないか、ということですか。
「……そうです」
「新人とはいえこれはさすがに許されないでしょう」
「なおのこと厳重処分が必要なのでは?」
「【6】班としては、重度の取り扱い違反として協力職員への降格処分が適当であると提案します」
「【A】班、提案に賛成です」
「そんな……」
静粛に!皆さんの負担になっているのは分かりますがあまり感情的になるのはよくありません。もちろん【E】班にも言えることです。先程確認したようにこちらも新人を守りたいのは理解しており、しかし他の班の主張するように厳正な処分が適当であるのもまた事実です。
私は議長として該当職員に対し、向こう二ヶ月の減給処分及び厨房への無期限転属処分を提案します。彼の取り扱い違反は重大であるが、それは同時に彼が発電少女の扱い慣れをしていなかった事の証明でもあります。すなわち彼を発電少女の匂いに慣らすことによって今後の損失発生を抑えることができると判断し、これらの処分が適当であると考えます。
いかがですかな。多数決を採ります。賛成の班代表は挙手をお願いします。
……はい。速やかな判断に感謝いたします。では、件の彼には追って処分を通知します。よろしいですか、【E】班。
「ありがとうございます」
はい。では次の要議事項を確認しましょうか。【E】班から、発電少女からの要求物品に関する審議ですね。彼女らの要求は一体何なのですか。
「はい。我々が担当する発電少女たちが要求してきたものは愛玩動物です」
……愛玩、動物、ですか。
「……【E】班。それは、ペットが欲しい、ということでしょうか」
「例えば犬とか、あるいは猫とか?」
「はい。そうだと思われます」
「これは……なんというか。初めてのケース、ですよね」
【E】班、詳細を説明してください。
「はい。昨夜、複数の発電少女からモニタールームにコンタクトがありまして。一職員の立場ですぐに承諾できるはずもありませんから断ったところ駄々をこね、短絡を起こされても困ると判断した彼の提案により要議事項にあげるだけあげてみよう、となった次第です。彼女らの要求はただ漠然と生き物が飼いたい、です」
犬や猫である必要はないということですね。
「そうであると認識しています」
「それは良かった。あんまり手間がかかるようなものだと彼女らに世話ができるとは到底思えませんし、なにより発電能力にどんな影響があるか分かったものではないですから。それに丁度私どもの研究室が自動で水質を改善する装置の実験をしたがっていますし、【5】班としては金魚を推薦します」
「手間という面で言えば【8】班としてはやはり、適当な昆虫を推薦します。水質など気にしなくてもよいですし、例えばダンゴムシなんかどうでしょう。葉っぱと霧吹きさえあればまず死ぬことはありません」
「いや、ここは彼女らが他の生物に対してどのように振る舞うのかを見るチャンスでしょう。あえて手間のかかる動物にした方がよいのでは?それなりに大きさのある方が彼女らの意向に添っている気がします。ペットとしてはやはり犬、猫が適当でしょう」
それなら私個人としては、猫が良いと思いますよ。短毛の種を選べばアレルギーなども気にする必要はありません。そうだ、いざというときは厨房に転属する彼に任せてしまいましょう。彼も発電少女に馴れることができるので一石二鳥です。
「アレルギーは短毛種でも発生するでしょう」
「確かに」
「だからやはり金魚がよろしいのでは……」
「ただ手間のかからないペットを与えるだけでは生産性に欠けます。やはりこの機会に何かしら実験を行うべきです」
「ではやはり猫が」
「犬はうるさいですし」
「猫だってイヤな臭いがするでしょう」
「そりゃ犬も同じです」
「昆虫でいいでしょうに」
「彼女らは一度セミを捕獲して解体しかけていたことがあります。昆虫を与えても解体されるだけです」
「それなら猫も金魚も同じでは?」
「なら解体できるようにすればよいと」
「それなら確か……」
【操作:早送り】
【操作:早送り終了】
……では、三つめの要議事項に関して。与えるペットは猫。ただし本物の猫と、本部の研究班が開発した人工知能を試験搭載した人工猫を共に与えて様々比較実験をする。何かのトラブルには厨房の職員、特に今回転属になる彼に任せるということでよろしいでしょうか。
……はい、異議無しですね。では決定いたしました。【E】班には後日、暖房器具と同時に短毛種の猫を一匹と、それを模した人工猫を支給します。猫の品質に関しては本部直々のものですから期待してもよいかと。
「ありがとうございます」
はい。というわけで、最後に今回の反省と、本部からの連絡事項を述べて終了にしたいと思います。今回は……
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【編集及び責任:発電少女発電協会 広報部】




