表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

活動方針と哀しい現実

会話文が多く、物足りないないかもしれませんが、ご了承ください。マシンガントークはヲタクの固有スキルです。

 

「ヤスシ様、御嬢様がお呼びです。扉をお開け下さい。」


 部屋に入って2時間、遂に俺の番が来た。俺は、ドアを開け、給仕の人の誘導に従って廊下を進む。姫様との会話次第では、俺の異世界生活計画を大きく変更する必要があるだろう。


 暫く進むと、他の部屋より少し大きい扉の前に着いた。

 

「失礼いたします。御嬢様、ヤスシ様をお連れしました。」

「今、開けるわ。ちょっと待って。」

 

「いらっしゃいませ、ヤスシ様。とうぞ、空いている席にお座り下さい。」


 お姫様に導かれ、俺は部屋に入った。部屋には、大きな1つの机とそれを囲むように本が詰まった棚が置いてある。読書家であることを自負している俺は棚の本に興味が湧く、はずだったが、部屋にはそれ以上に俺の注意を引く者が居た。


「おう、安司。遅えぞ、待ちくたびれたぜ。」

「さあ、ぼーっとしてないで、たったと座りなさい。話が始まりません。」


 そう、忍と遼が居たのである。


(あれっ?ステータスカードの話は個別にするんじゃ無かったっけ?)

「ヤスシ様、取り敢えず席へどうぞ。ご説明致します。」

「は、はい。」



「さて、お集まり頂いたのは、シノブ、リョウ、ヤスシ様の3人にお話が有るからです。」

「クレア、安司が来たからって畏まる必要ないぜ。」

「そうです。安司にそんな価値はありません。」

「よし、ちょっと表に出ろや、遼。あっ、王女様、別に砕けたしゃべり方でいいですよ。その方が気が楽だし、様付けも無しで。」

「ありがと、助かったわ、ヤスシ。あのしゃべり方は、肩が凝るのよね。私も王女様ではなく、クレアでいいわ。」


 姫様は意外にも気さくな人らしい。遼が会話に参加しているところを見ると、普通に話せる人種のようだ。


「それで、さっき言った話のことだけど、まずは謝るわ、ごめんなさい。」

「えっ、クレア、それはどういう?」

「ヤスシ、どうやら異世界召喚された10人のうち、救世主は7人。つまり、ここに居る3人は巻き込まれた一般人らしいぜ。」

「なん、だと!?皇崎だけでなく、手下2人も救世主だなんて!?」

「突っ込むとこそのなんですね。」

「お前ら、自分が救世主になれる人間だと思うか?」

「「全然。」」


「話を戻すわ、コウキとの約束の通り、あなた達を戦場に送り出すことはしない。衣食住も此方で用意するわ。あなた達のステータスと職業じゃ、今すぐにお金は稼げないはずだし。」

「・・・2人とも、数値の平均と職業は?」

「ん?平均は12ほど、職業は肉屋だぜ。」

「僕は、11で、職業は薬屋。安司はどうです?」

「平均は10以下、職業は・・・無職。」

「「働け、ニート。」」

「ニ、ニートじゃないもん!!」

「にーとというものはわからないけど、3人とも自分で生活できる状態ではないわ。空いている部屋がこの城には有るし、給仕の者もいる。3人共ここで暮らすのはどうかしら。」


 どうしよう、折角、異世界に来たのだ。出来るならいろんな所を見て周りたい。忍と遼とも相談したいことがあるし。


「クレア、此方としても有難い話だけど、俺達で話し合いたいことも有るからその返事は待ってほしいぜ。」

「遠慮しなくていいのよ?悪いのは巻き込んだ私達なんだし。」

「遠慮してる訳じゃない。それに、俺達を養うにもお金が掛かるだろ?。出来るだけ費用は抑えたいんじゃないのか?」

「それは、ここから出て行くことも考えているってこと? 確かに、費用を抑えられるのは嬉しいけど。」

「いろんな物、いろんな場所を見てみたいし、どうせ、向こうの世界に居た時みたいに一緒に行動すると思う。忍の言うとおり今後のことは3人で相談してみるよ。」

「ヤスシ達はここに来る前から仲良しなのね。分かったわ。でも、本当に遠慮はしないでね。」


 クレアの話は本当に有難いものだ。夢に見た異世界。このチャンスを逃せる訳は無い。今話せるのはこれくらいだろう。俺達は部屋から出る為に腰を上げた。




「あっあの、実は3人に聞きたいことが有るの。」

「聞きたいこと? 俺らが答えられる範囲でいいなら答えるけど。」

「え、えっと。コウキが好む女性の容姿って分かるかしら?」


 流石は勇者、既に王女という名の砦を落としたか


「お前ら、分かるか?」

「知らね、興味も無いぜ。」

「知らぬ、興味も無いです。」

「ぶれねぇなぁ、おい。」

 俗世を捨てた我等にとって、男の好みについてなど、興味を持つ意味も無かった。


「すまんな、クレア。力に成れそうにない。」

「いいえ、大丈夫よ。いきなりでごめんなさい。」

「助言出来ることと言えば、あいつに対しても、今みたいに素の自分を見せる方がいいと思うぞ。猫被りな奴が嫌いなのもコウキの周りには居るからな。」

「猫被りだなんて酷いわ。あの時は、初対面の救世主様達に悪い印象を与えないようにしていただけよ。まぁ、あんな色のドレスよりも情熱的な赤の方が好きだけど。」

「色恋のことは、分からないけど、好きになってもらうなら、ありのままの自分を好きになってもらう方がクレアも嬉しいだろ?大丈夫さ、クレアは美人だし。」

「家族や家来には、もう少しおしとやかになれと言われているから、自信が無いわ。あと、色恋が分からないって。ヤスシは恋をしたことが無いの?」

「無いな。出来る気もしないし。」


 後ろの2人も賛同するかのように頷いている。お前らはやはり、俺の味方だ。裏切り者には死を。


「案外いいものよ。私は、これが初めてだけと。」

「ハイハイ、ご馳走さま。まぁ、頑張りなよ、応援してる。」

「ふふ、ありがと、ヤスシ。」

 非リアの応援に効果が有るとは思えないけどね。




「それじゃ今日はここまでね。明日は、他国の代表や国民に対して、救世主御披露目会が有るの。貴方達がどうするかについての返事は、そのパーティーが終わってから聞かせて頂戴。」

「分かった。返事はその時までには用意するぜ。」

「疲れてるだろうからゆっくり休んで。悪いけど、明日は忙しくなると思うわ。それじゃ、お休みなさい3人共。」

「ああ、お休み、クレア。」

「お休み、いい夢見ろよ!!」

「忍、声を抑えなさい、もう夜遅いんだ。お休みなさい、クレア、また明日。」


 クレアと別れ、自分の部屋に入る。異世界生活1日目、元の世界じゃ明日が来るのが嫌だったが、俺は、いつもとは違う明日がとても楽しみだった。




 ◆◆◆◆




 お休みなさいと言ったな、あれは嘘だ。


「第一回、俺らの、俺らによる、俺らのための異世界活動方針会議」

「いえ~~~い」

「どんどんぱふぱふ~~~」


 そう、我等は俺の部屋に集まり、自分自身の未来を決める大事な会議を催していた。


「さて、俺の腕時計に狂いが無く、この異世界に通用するなら、既に時間は深夜を示しております。テンションが可笑しくなっていても仕方の無いことです。」

「テンション可笑しいのは、いつものことだぜ。」

「それより会議を進めたまえ。安司、君のことだ。既に考えはあるんだろ。」

「遼もいつもの口調に戻ったな。」

「まぁ、この口調は、他人から見たら痛いだけだしな。本人も理解してるんだ。触れないでやろうぜ。」

「痛くなんか無い!!否!!断じて否!!」

「五月蝿いぞ、厨二漏れ。」

「厨二病、乙。」

「うがあぁぁ!!」

 身内には優しいが、容赦はしないのが俺らである。


「さて、2人共ご存知の通り、俺は、最近、異世界ものの小説にはまっている。」

「毎日、五月蝿く語り出すものな。」

「耳が可笑しくなるほど聞かされたよ。」

「オ、オホン。えーっと、物語は数多くあり、内容も違う。それで、そんな物語にはテンプレというものがある。」

「お約束、というヤツのことだな。」

「うむ、それで?僕たちは、そのテンプレによるとどんな立ち位置なんだい?」

「異世界召喚に巻きこれた人間は、主人公役の人物より強くなる傾向があり、その方法は、だいたい2パターンある。その1、異世界召喚される際、巻きこれた者に対して神様が恩恵を与える。その2、主人公役と離ればなれになり、死亡率100%の場所で鍛える。」

「神様の眷属とやらからもらえたものって言語理解とアイテムボックスか?」

「しかし、給仕の人に聞いたところ、言語理解は兎も角、アイテムボックスは珍しいスキルではないようだよ。容量も籠2つ分位らしい。つまり、その1は無い。」

「ということは、その2なんだぜ。」

「そう、死に物狂いでモンスターを倒す!!はずだったんだけどな~~~~~」

「ん?何か問題が有るか?」

「天野の約束が阻害するんだよ、その2の場面、巻き込まれた者も救世主と戦闘に参加し、そこで何かしら起こって離ればなれになるんだ。しかし、俺達は約束により戦闘に参加しにくい。必要が無い上、強制される事もないからな。」

「どうやら、異世界大好き安司君は、既に使い物にならないようだ。」

「どうしますか?同志フルートン。」

「シベリア送りだ。」

「うぐぐぐ。でも、どうしようも無いくらい、村人A,B,C状態なんだよなぁ。ステータスにも怪しい点は無かったし。」

「異世界に行っても俺らは俺らってことなんだぜ。」

「まぁ、何処にでも居る一般人(ヲタク)だしな、僕たちは。」

「こうなるなら、内政チートものもよく読めば良かったなぁ」


「そうだ、結局、僕たちは今後どうするんだい?ここにお世話になるのか、出ていくのか。」

「チート有るなら出ていくの1択なんだけど、こんなステータスじゃ金なくて餓死するだけだから無理だろうな。」

「異世界に来て、ニートorパラサイトとか、哀しすぎるぜ。」


 異世界に来ても現実は、現実。俺達は、唯の一般人、それは変わらないようだ。異世界チート、異世界無双はやはり夢だったのだ。俺は、あまりにも平凡、むしろ低めの自分のステータスを念じてみる。




 佐藤 安司《さとう やすし》


 種族:人間

 性別:男

 職業:無し

 年齢:17


<レベル>1

 魔力:5

 攻撃:8

 防御:9

 俊敏:6


【固有スキル】・言語理解 ・アイテムボックス


【スキル】無し


【称号】巻き込まれし者


【所持金】無し



 ※メッセージが届いています。









 ん?


 ※メッセージが届いています。


 んんんん!!??

「おいっお前ら!!自分のステータス見ろ!!」

「なんだよ、見ても何も変わらないぜ。」

「そうだ、見ても余計に気を落とすに決まっている。」

「いいから見ろって!!!」

「「・・・・はぁ」」




「「・・・ん?『メッセージが届いています』?」」

 どうやら2人にも届いているようだ。


 ステータスに表示された前見た時には無い文。楽しい異世界生活を諦めていた俺らの心に希望の火を灯す。3人とも導かれるように内容を確認しようとし、それと同時に、安司の部屋を強烈な光が襲った。




次回は3人のチートが解放されます。察している人もいると思いますが・・・・


今日は、忍君についてです。


杉本すぎもと しのぶ

ヲタク3人の交渉役。よくカラオケやお店の予約をしてくれる。顔面偏差値は平均的、身長は170越えでアウトドアが大好き。そのせいか、適度に筋肉が付き、肌は小麦色である。趣味は、ラノベやアニメ、動画鑑賞、FPSなサバゲー。ゲームは、それしかしないという訳でなく、最近は、ピチューンが多発するシューティングゲームに熱中している。語尾に「ぜ」と付くのは口癖で無くわざと。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ