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日常生活は終わりです

よろしくお願いします。

 春休みが終わり、始業式が終わり、学校の桜が咲き誇る中、俺は、高校2年生となった。


 1学期の初日、校舎の至るところでは多くの生徒が久しぶりの再会を喜び、春休みをどのように過ごしたかを語り合っている。


 人々の楽しそうな喧騒を通り抜け、俺は自分の席に座る。


 また学校が始まる。授業で埋め尽くされた日程を消化することを毎日繰り返す。そんな日常生活が



「なに新学期早々1人で黄昏ているんだ、あいつ?」

「まぁ、大方、始まってしまった学校生活が面倒だと考えているだけでしょう。」



「ふぅ、人が物語のプロローグ的な何かを考えてるのに邪魔するなよ。」

「「考えても形には出来ないクセに(でしょうに)」」

「くっ」


 呆れたようにこっちを見る2人は、数少ない俺の友人である杉本すぎもと しのぶ古戸ふると りょうだ。


 忍はアウトドアが好きな活発なやつだ。役割は遊びの企画。遼はインテリメガネで多くの知識を持つ。役割は遊びの補足と指摘。そして、俺の名前は、佐藤さとう 安司やすし。身長が平均より低いこと以外に至って見所さんは居ないだろう。役割は遊びのまとめと否決だ。


「ところで、2人とも、例のアレはちゃんと持ってきてるのか?」

「そう言う安司こそ、忘れてないだろうな? オレのは段ボールの中に入れて封印してあったから出すのに苦労したんだぜ。」

「僕は、今も冷たい汗が背中を流れてますよ。永久に表に出さぬよう、厳重に封印した物を解き放ってしまったのですから。」

「本当にそうみたいだな、遼。もう既に何か病気的なものがにじみ出ているぞ。」

「ピヤッ!!?? そ、そんなことはありません。あれとは、高校に入る前に決別したのです!!」

「そうか? 1年生の時もお前の決意には、所々ほつれが見えてたぜ。まぁ、例のアレを見せ合うのは、放課後だろ。それよか、新しく始まった春アニメについてだけど。」


 同じことを繰り返すつまらない日々、こいつらとの会話は、そんな中での楽しみで、半ば俺の生きる気力となっていた。しかし、楽しい時間はいつかは終わるもの、俺達は学校生活にある問題を抱えていた。





「全く、今日も五月蝿いな、ヲタク共。目障りなんだよ。黙って、僕の視界から出て行ってくれないかな、社会のゴミ。」

「そうだ、直ぐ様そこから消えろ、キメェんだよ。」

「この犯罪者予備軍、誠さんの言う通りにした方が身のためだぞ。」




「「「すぅぅ、はあぁぁ~~~~」」」


 俺らが抱える悩みの種の登場である。せっかくなので紹介しよう。


 偉そうな奴&手下2名である。ハイ、終了。お疲れ様でした。








 えっ駄目ですか。そうですか・・・。

 えっと、偉そうなのが皇崎おうさき まこと、成績優秀、長身のイケメン、それでいてとある有名IT企業のご子息である。先ほど、自分の視界から消えろと言っていたが、絡んでくるのは、いつもあいつからだ。


 それと、手下の不良&下種(名前を覚えてない)、確か、IT企業の幹部の息子達で、いつも皇崎の近くに金魚の糞のように付きまとっている。





 先ほどのように、奴らは俺らがヲタクだと言うことを理由に絡んでくる。関わるつもりは無いのだがニタニタ笑いながら一方的に罵倒してくるのだ、面倒くさい。この光景を見ている周りの連中はどうしてるかというと、別に奴らを諌めようとはしない。俺の紹介はアレだが、これでもこいつらはこの学校のカーストの上位に存在しているのだ。


 まぁ俺らが疎まれるのは、奴らの性格だけが理由ではない。俺達が通うこの高校も関わってくるのだ。


 国立真皇高校。紛れも無い公立高校である。入学金も他の公立高校と変わり無いが、この学校にはとある理由により多くのお嬢様やご子息が通っている。


 有名大学の合格率、他の公立どころか、私立、予備校を抜いて1位。存在する部活は、全てが全国大会上位入賞。海外でプレーする事が望まれ、高校生にしてスポンサーが付くこともあると言う。


 しかも、卒業生や在校生の親の援助により、設備は私立顔負けである。


 そんな真皇高校は、文武両道を校風として掲げ、部活の運動部率、驚きの100%、生徒の部活参加率約99%。



 お分かり頂けただろうか?


 生徒の部活参加率約99%、残り約1%は俺、忍、遼の3名。


 生徒のヲタク率、推定1%以下


そりゃね。疎まれたり、ハブられたりする訳ですよ。


 え?何でこんな高校に入ったって? まぁ俺ら中学生の時から仲間だし、高校でバラバラってのも味気無いし、3人でキャンパスライフをエンジョイしたいと思ってたし、何より、一番家から近いし。


 どうして来ちゃったかな、ホント。



「おい、このグズ。この僕の言葉を無視するとはどういうことだ!!さっさとこの場から消えr」

「あら~、誠はまた弱いものいじめでもしてるの?」

「こら、鈴。安司達を弱いもの扱いすることは、失礼に値するぞ。」

「いいじゃん、将市。この雰囲気は、どう見ても弱いものいじめでしょ。」

「でも、そんな言い方は、俺も悪いと思うぞ、鈴。」

「私もそう思うわ、鈴ちゃん。」

「ちょっと、薫だけは、あたしの味方だって信じてたのに~~」

「間違いを正すのも味方の仕事よ。」


 なんだか今日は、自棄に有名人と会話をするな、新学期初日なのに。


 さて、新キャラの紹介をしよう。


 まず、俺らを雑魚キャラ扱い(激しく同意)した女子はひいらぎ りん

 生徒会会計。空手部主将でありながらその他の体術部掛け持ちのエースである。誰から見ても美少女と呼べるだけの美貌を持ち、髪はボーイッシュに短くしており、いったいその体のどこに力を秘めているのか分からない位に小柄で胸ば悲しくなるほどにペチャn(ギロッ)スポーティーで素晴らしいです、ハイ!!

 世界をまたにかける貿易商のお嬢様でもある。


 次に、柊を最初に諫めた男子は勝間かつま 将市しょういち

 生徒会書記。剣道部主将で他の部には所属はしていないが、噂では、竹刀だけでなく、ありとあらゆる武器の扱いに長けていると聞く。長身にかなりの美男子、常に冷静な印象があり、一見、細いような体は必要以上な位に引き締まっている。大勢の女子と一部の男子に大人気である。(ホモゥゥゥー)

 様々な企業の株を持つ大物株主のご子息。


 もう1人の美少女、名前は優谷ゆうや かおる

 生徒会副会長。サッカー部マネージャーで、彼女に怪我の治療をしてもらい惚れた部員は多いと聞く。勿論他の部でも、彼女の人気は高い。身長は平均的的だが、長く、真っ直ぐで綺麗な黒髪、おっとりとした性格、日本人にしては良いスタイル。彼女は学校のアイドルと言っても過言ではない。

 確か、未だ大きな力を持つ旧華族のご令嬢だったはず。


 そして、遂に真打ち、我らが生徒会会長にして、学校で一番のイケメン。心優しい性格と逞しい身体、誰にも譲らぬ正義感、サッカー部キャプテンでありながらも他の部活のアシスタントをこなす超人、その名も天野あまの 光希こうき

 こいつは、皮肉無しに称賛出来るというのが俺達3人の見解だ。

 例えを出すなら、下校中、とある不良高校の生徒が、うちの高校の生徒にかつあげをしているのを発見、助け出すと共に、不良を病院送りにする。その後、不良生徒の集団にお礼参りという名の襲撃を受けるが、書記と2人だけで返り討ちにし、不良のトップに、二度と自分たちの高校にてを出さないことを誓わせるという伝説を持つ。素晴らしい、戦闘中毒の血が騒ぐ。

 因みに彼は各国な進出し成功している大企業の社長の息子である。


 うちのクラスは、先ほどの3人と今、紹介した4人、加えて俺ら3人が含まれており、クラス分けを見た時は驚愕したものだ。


 生徒会4人は行動を共にする事が多く、皇崎に絡まれている俺らを助けてくれる。ありがたや、ありがたや。


「誠、安司達は他の生徒と変わらず、友人と集まり話をしているだけじゃないか。何をそんなに突っ掛かる必要があるんだ?」

「五月蝿いな、天野。馴れ馴れしく僕の名前を呼ぶんじゃない。柊、お前もだ。それに僕はただ単に部活動に参加せず、無駄な時間を過ごしている輩に注意をしようとしただけさ。」

「とてもそうには見えなかったがな。それにうちの高校は、部活の参加、不参加は個人の自由、放課後や空いた時間をどう使おうと彼らの自由だ。お前にとやかく言われる必要は無いと思うぞ。」

「チッ偉そうに。お前が僕に意見する事がどれだけおこがましいか、知らないみたいだな。僕は、こんなことに時間を費やすほど暇じゃないんだ。おい、行くぞ、お前ら。」

「「はい、誠さん」」



 まぁ見ての通り、皇崎と天野の関係は良くない、いや、皇崎が一方的に悪化させている。皇崎もサッカー部で、最近新キャプテンが決められた時、自分ではなく、天野が任されたという話を聞いたがそれも理由の1つかも知れないな。


 それはともかく


「4人ともありがとう。適当に無視してやり過ごそうとも考えたんだけど、助かった。」

「嫌ならどっかの部活に入ればいいじゃない。」

「そうですよ、そうすれば全て解決です。」

「う~ん、そうは言っても、俺は自主トレで事足りてるし、出来るだけ趣味に時間を使いたいからな。」

「俺も参加はしない。部活よりも山や海にキャンプ行く方が楽しいぜ。アウトドア部でも有れば良かったんだけどな。」

「僕は、運動は苦手ですし、太っている訳でも無いので、運動をしなくても体調を崩しはしません。よって部活には、参加しないでしょう。」

「あい変わらすだな、分かった。何か有れば、俺達を呼べよ。」

「うむ、人は助け合って生きていく生き物だからな。いつでも私達を頼ってくれ。」

「ありがと、これは、恩返しに竜宮城に招待するだけでは、恩を返し切れなくなるかもな。」

「そん時は、竜宮城だけでなく、天竺にでも連れていってくれよ。」




 ◆◆◆◆


 本日最後の授業が終わり、放課後となった。


 クラスメイトが部活に行く中、俺達は、教室の一ヶ所に集まっていた。


「遂にこの時間が来ちまったぜ。」

「やっぱり、出すのは止めませんか?」

「いや、ここまで来たんだ。もう後戻りは出来ないだろ?。」


 深刻な雰囲気を俺達が漂わせている理由は、それぞれのカバンに入っている一冊のノートである。そのノートには、誰にも見せることの出来ない、若さ故の過ち、すなわち、病的なほどにイタい黒歴史《中二病》が刻まれている。自分で作った設定、オリジナルのキャラクター、思い出すだけで恥ずかしい。


「掛け声で同時に出すぞ、せーのっ」


「おい、ヲタク、何だこのノート。僕に見せてみなよ。」


勢いそのままに机に叩きつけようとしたノートが背後から奪われる。咄嗟に振り向くとそこにはノート片手にニヤニヤと笑う皇崎が居た。


「うおぉい!?、皇崎、勝手に人のノートを取るな。返せ。」

「何だよ、見られたくないものでも書いてるのか?」

「いいから、返せって言ってんだよ!!」


 ヤバい、他の奴ならともかく、こいつに見られるのは、絶対に御免だ。なんとかして取り戻さないと。


「誠、安司が返せと言っているだろう。お前のやっている行動は盗みと何ら変わらないぞ。」

「ちっ、何だ天野、まだ居たのか。部活はどうしたんだい?」

「それは、こっちのセリフだ。俺は、4人とも同じクラスだからここで生徒会の仕事をしようとしていただけだ。先生の許可も取ってある。それよりも、直ぐに安司のノートを返すんだ。」

「僕に命令をするな!!クソッ!!前々からお前はムカつくと思ってたんだよ。いつも人を見下しやがって!!!」


 運良く教室に居た天野と皇崎と口論になり、皇崎の注意が逸れた!!今ならあのノートを奴の手からはたき落とせる!!


「痛っ!!」


鋭い一撃が奴の手首を捉える。痛みに耐えられなかったのかノートは地面へと放り出された。


「くそっふざけるなよ佐藤、お前までっ!!」


 俺は半ば飛び込みながらノートに手を伸ばす。後ろでは皇崎が拳を握りしめ、大きく振りかぶった気がした。




 落下しながら、伸ばした手がノートに触れる。俺の視界は、黒歴史のノートと見慣れた教室の床だけが写る。


 はずだった。


(なんだ?まるで魔方陣の一部のような?)


 体を地面に叩きつけ、痛みという信号を脳が受けとる。しかし、痛みはやって来ず、俺の意識は真っ白に塗りつぶされた。


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