第三章
広間にファンファーレが鳴り響いた。
「キャー!カイン様―!」「カイン様バンザーイ!」「次期国王バンザーイ!」
「うわぁ……凄いね?」
「みんなカイン様のために集まってくれたのです。歓声にお応えになられてはどうですか?」
「そうだねバイス。なんか僕が王子だって実感が少しずつわいてきたよ」
「じいやは嬉しいですぞー!」
「なんかじいやキャラ変わってるね♪」
「メイもなんだかうれしそうだね?」
「そりゃあもう♪ カイン様の晴れ舞台ですもの♪」
カインのために集まったのは百や二百ではない。数万人があつまっているのだ。
「あ、そうだ。スピーチしなきゃ」
「カイン様。原稿です」
「ありがとバイス」
カインがマイクの前に立つと徐々に歓声が静かになっていった。
「えー……今日は独立達成、そして僕の十歳の誕生日も兼ねての十年祭です。今、僕たちはルワーノ国と戦争状態にあります。ですが、今のところ国境の小競り合いで済んでいます。それも、父であるカダディールや、革命の立役者である四騎士のおかげだと思っています。これから先、二十年、三十年と平和が続くように尽力致します。僕はこの国が大好きです。早く戦争のない世界になることを願います。」
カインはそういうとにっこりと笑って
「みんなー! 今日は楽しんでね!ありがとうー!」
「ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」
会場が歓声と拍手に包まれたその時であった。爆音と共に悪夢は起こったのである。
「フハハハハハ!われはルワーノ国王キングルド! 貧弱なシャインテラスの諸君に挨拶に参った!」
ある者は最初の爆発で。ある者は剣で。ある者は馬の下敷きに。それまで幸せな雰囲気に包まれていた会場は一瞬にして殺戮の現場へと変化した。
「あ……ああ……そんな……」
カインは言葉にならない言葉をもらしてその場を見ることしか出来なかった。
「これは見せしめだ! シャインテラス国民をなぎ払え!」
逃げ惑う民を待ち伏せしていたのか次々と悲鳴があがる。
「カイン様! こちらへ!」
バイスがカインを逃がそうと腕を引っ張る。しかしカインはその場を動くことが出来ない。
「カイン様! しっかりしてください! じいやとメイが逃げ道を確保してくれています!」
「でも……でも……みんなが……」
「今は逃げることをお考えください!もうすぐカダディール様が駆けつけてくれるはずです!」
次々と国民が殺される光景にカインは絶望した。
「くっ! 失礼します! カイン様!」
バイスは無理矢理カインを抱き上げその場を去ろうとした。次の瞬間、巨躯の男が立ちふさがった。
「フン。物々しい警護だな。ひょっとしてそいつがシャインテラスの王子か?」
バイスは躊躇なくその男に護身用のナイフで切りかかった。しかし、簡単にはじかれる。
「ほぅ。なかなかいい腕をしてるな貴様。となるとそいつが王子で間違いないな」
「そこをどけ! キングルド! 王子に手は出させない!」
「邪魔だ!この俺に勝とうなぞ百年早いわぁ!」
次の瞬間バイスはキングルドの一撃に吹き飛ばされた。
「他愛のない。俺こそ最強。すべての者は俺に屈するのだ」
バイスは全身から血を流しぐったりしている。
「あ……あ……」
おびえるカインに目を向け、キングルドは剣を振り上げた。
「あのカダディールの息子に生まれたことをうらむんだな」
「あ……うわぁぁぁぁぁぁあぁぁああぁぁ」
そこでカインの記憶は途切れた。