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Dream-Basketball  作者: 黄無羅
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入学式の騒動


そんなわけで、現在僕と雅は学校への道を全速力で駆け抜けていた。


いまならウサインボルトに勝てるんじゃないかっていう自信がある。


僕の家から学校まではそれほど遠くなく、むしろ近い。徒歩で十五分といったところか。


それにしても‥‥‥‥。


雅足速すぎ。


だってもう見えないもん。速攻で置いていかれたもん。


寂しくなんかないもん。


とはいえ、さすが運動神経抜群天然美少女である。


多少残念なところもあるけどね。


そんなことを思いながら、僕は僕のペースで学校に向かっていた。


そして学校までもう少しというところだろうか、角を曲がったところにバスケットコートがあった。

地面がゴムのようになっていて、色は体育館の床のような淡いオレンジ色をしていた。ゴールは一つだけ。

いわゆるストリートバスケだ。


「へー、こんなとこにあったんだなー。知らなかったわ。」


と、そのまま通り過ぎようとしたときだった。

僕はおもわず足をとめてしまった。


よく見ると、その奥に隠れるようにしてもう一つゴールがあった。どうやら一つではなかったらしい。


だが、僕が足をとめた理由はそこではなかった。


そのゴールで一人の人がバスケをしていたのだ。


身長は遠くてあまりわからないが、僕より少し高いくらいだろうか。ガタイもしっかりしていた。


やはり、理由はそこでもない。


その人のプレイだ。


「すげえ‥‥‥‥。」


レッグスルーからのビハインドバック、ロールからのギャロップステップ。


どの技を見ても、あまりに滑らかで、美しさすら感じてしまった。


僕はおもわず、学校に向かっていることなど忘れて、すっかり魅入ってしまっていた。


あの人と、


あの技と、


勝負してみたい。


そんな衝動に駆られていた。




何分くらいたっただろうか。


「あ‥‥‥‥見てる場合じゃなかったー! 」


いまは遅刻の身分だった‥‥‥‥。


そう言いながら僕は、再び学校に向かって走り出したのだった。



県立慶京学園。


僕の新しく通う学校の名前だ。


駅のすぐ近くに位置し、商店街も近くに構えており、賑わいを見せている。


偏差値は中の上、少し努力すれば誰でも入れる学校である。


家も近く、校舎もキレイということから、僕はこの学校を選んだ。


まあ初めはスポーツ推薦などの話もきていたのだけれど、その話はまた後ほど。



それで入学式はどーなったのかというと、


もちろんめっちゃくっちゃ怒られた。

( 何故か雅は怒られなかったらしい。要領のいいやつなのである。)


汗だくの状態で体育館の扉を堂々と開け、そのままズカズカ自分の席らしきところについた。

そして入学式が終わると同時にみんなの注目を一斉に浴びながら、そのまま職員室に連行され、こっぴどく叱られたというわけだ。


うーん。


まあいっか。退学させられるわけでもなし。


単純な僕なのであった。


ちなみにクラスはというと、僕は六組、雅は一組で、違うクラスだった。


「大輔ぇぇぇえええ!!! 行かないでぇぇぇえええ!!! 」


と、クラスの前の廊下で号泣しながら泣きつかれたときは、なんだか複雑な気分だった。


てか泣くなよ。

変な噂たっちゃうじゃん!


まあそんな雅は置いておき、僕はクラスに入り、すぐにHRやらなんやらが始まった。


担任の先生は優しそうなおじいちゃんで、とりあえずハズレではなさそうだ。


それで、恒例の自己紹介。


「中学ではサッカーをやっていました。」


「遠くから来たので、仲良くしてください。」


など、各自がクラスに馴染むために自分という存在をアピールしていく。


うんうん。ここはやっぱり型どおりに普通に行こう普通に。


そして僕の番となり、机から立ち上がると、そのまま教卓に向かった。( ちなみに僕の出席番号は四番なので、そんな待っている暇もなかったが。)


立ち上がる時に一瞬辺りがざわついた気がしたが‥‥‥‥。


まあ気のせいだよね。


僕って有名人じゃないし。


「あいつってあれだよな、体育館に遅刻したきた‥‥‥‥。」


「そうそう、しかもさっき女の子に泣きつかれてたよ? 」


‥‥‥‥。


超有名人でしたー。


ていうか雅ふざけんな。


「えーと‥‥‥‥西宮中学から着ました、井上大輔です。よろしくお願い申し上げます。」


周りのヒソヒソ話を無視しながら自己紹介を無事に終え、なんとか席に着くことができた。


だが相変わらずクラスの視線は僕を見ていた。


みんな前向こうよ‥‥‥‥。


次の人見てあげようよ‥‥‥‥。


こうして自己紹介の間中、ずっとたくさんの視線を感じながら過ごした僕であった。










慶京学園は部活動と勉強、どちらかというと勉強に力を入れている。


定期試験の他にも、英語の単語試験や、模試など様々な試験を独自に行っている。


その分、疎かにしているわけではないが、部活動のほうはあまり盛んではない。


全国に出た部活など、創設以来一度もないらしい。


というわけで、あまり盛んではない。


だからと言って生徒にやる気がないわけもなく、むしろ少ない時間を惜しむかのように積極的に取り組んでいるのである。


で、なぜ僕がいきなりこんな説明したのかというと、今日から部活動の仮入部期間が始まるのだ。


仮入部期間とは、まだ部活を決めかねていたり、決めているが雰囲気を知りたいと言った一年生たちが、各自好きな部活を体験できるというものだ。


もちろん僕は決まっている。


やることはただ一つ。


バスケットボール。


だけど‥‥‥‥。


「あれー? バスケ部の部室って‥‥‥‥なくね? 」


と、学校中を駆け回っている僕だったが、


その通り、部活が見当たらない。


慶京学園では、教室や職員室などがある本校舎と、部活の部室などがまとまっている部室棟が隣接している。


放課後、HRが終わると同時に六組の扉を勢いよく開け、


「大輔! かーえーろー! 」


という叫びを無視して( というより気づかれないように逃げた )バスケ部の部室を部室棟で探していた僕だったが、何故かバスケ部の部室はなかった。


そして本校舎のほうまで隅々さがしたが、見つからなかった。こうしていまにいたるというわけだ。


「おかしいなぁ‥‥‥‥。確かにパンフレットには入学式の紙には男バスケ部って書いてあったのに‥‥‥‥。」


まだ行ってないとこあったかなぁ‥‥‥‥。


あ。


「もしかしたら今部活やってるかも! 」


そう思い、僕は校舎棟から繋がる体育館へと向かって行った。


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