17-つまり、メイド愛
バーモンドが去り、部屋に静寂が訪れた。
いや、もちろん気まずいせいもあるんだが。
それ以上に、俺は考え込んでいた
「なあ、セルフィ」
俺のいつにない真剣な声に怒ることも忘れたのか
「なんでしょう?」と言い、心配そうな視線を寄越す
「俺が単独で動くことと、部隊で動くこと。
どっちが良いと思う?意見を聞かせてほしいんだ」
右手を可愛らしい口元にやり、そうですね‥と小さく呟いた
「デメリットが勝るかと思いますわ。
リョウタ様がお一人で動かれるより、制限を強いられます
更には、一緒に行動なさる方が裏切れば‥。」
やはり、適格な路線を突いてくる
だけどな。
「それは、お前にも言えるんじゃないか セルフィ?」
「‥‥そうで‥ございますわね」
少し、傷ついた顔をした
できれば、悲しませたくはないが
ここで引っかけておく必要はあるのだ
もとから疑ってはいない。
だが、伏線は張っておくべきだろう。
疑われても、傷ついても、俺についてくるのかどうか。
俺を裏切らないかどうか。
まあ、前の世界でもそうだった
友達とかさ、信じた瞬間に裏切るだろ。
信じたいからこそ、試す
信じたいからこそ。
「そう、おっしゃるのも当然ですわ。
リョウタ様に科せられた重責と、この世界にきた孤独を考えましたら。
ですが、いまは、これしか申せません
わたくしを、信じてください
この世界の誰がリョウタ様を裏切っても、わたくしだけは‥
わたくしだけは、裏切りません。」
「‥そうか」
そう言った俺の声が心なしか嬉しそうに聞こえたのは
多分、いやきっと、気のせいだろう。
「先程のお話ですが、メリットがあるのも事実ですわ
それはおそらくリョウタ様もお考えの通り
リョウタ様がお出来にならないことを、
できるようにするまでの期間の補完ができます。
逆に言えばそれ以外の用はありませんわね
・・強いて言うのであらば、
いざというとき、・・言い方は悪いですが
リョウタ様の身代わりにという点も
無きにしもあらず、といったところでしょうか?
わたくしの立場から致しますれば、
身代わりというのは大歓迎ですわ
リョウタ様さえ助かればそれでいいのです。」
なんかいうか、その。
「セルフィって、俺のこと好きだよな。
・・・・って自分で言うとなんかナルシストくせぇ」
「ふふ、そんなことはありませんわ
事実でございますし。
ああ、そういえば
こんな時間ですが昼餉を召し上がられては如何でしょう?
冷めてしまいましたので作り直す間時間を頂きますが・・」
深く礼をし詫びるセルフィを止める
「いや、いいよ。
せっかく作ってくれたし、つーか遅れた俺が悪い
あ、セルフィもしかして昼まだだろ。
一緒に食おうぜ」
「え、いえ、そんな」
拒否も許諾もできずわたわたとするメイドをからかう
ほら、なんていうか
職権乱用ってヤツだ、ご主人特権的な。
困ってるメイドって可愛いだろう
主人の命令に逆らえないけどでも一緒に食事って・・みたいな!
ほら!
鉄板のあこがれシチュエーションだと思わないか!
しかも傷つけるようなこといって悲しませても
嫌われることない立場!
つまり(?)、愛だ メイド愛。
・・
・・・・・・・・。
俺、いてぇ。
とまあ、夕餉までセルフィいじりを楽しみつつ、
遅い昼餉を済ませたわけである。