12-モードチェンジ
目を覚ましたらやっぱり自室だった。
なんてオチはないらしい。
‥‥2番煎じネタはだめか、これは失礼。
ちゃんと異世界の俺の部屋のベッドっぽい。
「あー‥なんつーか体の節々がいてぇ。」
目を開けずに身動ぎをすると、人の気配。
「大丈夫だって、セルフィ。」
目を開け、姿を確認する。
「申し訳ございませんリョウタさま‥‥。」
やっぱり瞳いっぱいに涙を溜めるその姿は可愛いというか。
いや、萌え、だ。
「よっこらせ」という声と共に上半身を起こす
まあ、痛いっちゃ痛いがここは我慢だろう。
セルフィに泣かれても困るし。
今にも零れ落ちそうな涙を拭ってやり、問いかける。
「そういえば、セルフィ?」
「なんでしょうリョウタさま。」
涙声も萌えー。
「気失う前に声が聞こえたんだ、なんだとおもう?」
考えるそぶりも見せず、俺の右手薬指にはめてある指輪を指さして言う。
「ジェネシス、ですわ。」
いやいや、まてまて。
ここは異世界じゃねーんだから
‥いや、異世界だった。
「あー‥ ジェネシスの声ってこと?」
「はい、間違いないかと思われますわ。」
うーん。
なんつーか、チート設定にありがちな感じだよな。
装備品が喋るっつーのは。
「これは、喋りかければいつでも応えるもんなのか?」
腕を組み少し考える。
「わたくし自身が身に着けたことはありませんし、
ましてやジェネシスを賜られたお方にお仕えしたこともございません。
ですから知らないというのが正直なところなのですが‥」
恐らく、と続ける。
「その指輪自体に"宿っている"という話は聞きますし、
応じるとは思います。お試しになってみてはいかがでしょう?」
「ふむ‥。」
指輪を目の前にもってきて観察
"宿ってる"、ねえ‥‥
「ジェネシスというのは、指輪の名前ではなく
その宿っているものの名前だと読んだことがあります。」
メイドなのにそんなこと調べんのか?
「あぁ、リョウタさまがお困りになられないように色々調べたんです。」
なるほど、伝えずとも意思疎通ができる優秀なメイドであるらしい。
さすがネコミミ。いやセルフィ。
んじゃ、いっちょ語り合ってみるか。
あーっと、なんて喋りかけりゃいいんだ?
"我に用か、主よ。"
そうそう。んー、ほら、起きたら喋りかけろって言ってたろ?
"そうだ。"
返事短っ
つーかあの喋り方なんとかなんねーのかな
ぶっちゃけすげー喋りづれーんだけど‥
"‥‥"
ん‥なんか言いたそうなオーラがひしひしと。
思ったこと全部伝わんのか、これ
"ああ、そうだ。
そうか‥主はこの次元の者ではないのであったな。"
そーなんだよなー
これ、俺がやってたゲームでさ。
気づいたらゲーム内に迷い込んでたんだよ
"そうであったか。
‥とりあえず、主の性格に合わせてモードを変えることにする"
モードチェンジなんてあんのか、すげぇ。
喋る人形の性格が変えられるボタンみたいな感じか?
いや違うか。
"リョウタはたとえ話が好きだよな"
いやおいおい、変わりすぎだろ
"リョウタを真似ているだけだ"
‥‥。
うっわ、俺ってこんなイヤなキャラだったのか‥
なんかすげー自己嫌悪。
"‥。"
うん、ごめんって。
「ん、喋れるらしいぞ。」
「そうでございますか。
それではお話になられている間に朝食の準備をしてまいりますわね。」
セルフィがニコリとして去って行った。
....バタン。
閉まる扉
二人って言って正しいのかこれ。
二人っきりになった。