1―序
誤字修正しました
大事なひとを――…
それは恋人であったり友人であったり家族であったり…様々な形があれど。
亡くした経験のあるひとは多くいるだろう
俺も、そのうちのひとり。
名を、白芭 亨汰。
どこかのゲーム風に言えば一般人A。
普通に言うのなら、所謂ニートである。
顔は普通(だと思いたい)だが、性格は暗いし、高校生の頃からゲームばかりやって、気付けば廃人と呼ばれていた。
一日のうち10時間はなにかしらゲームをして過ごしていたように思う。
怠惰な日々を過ごしていた当然の結果であるニート生活を続けて早四年が過ぎようとしている。
大学を出たはいいものの、就職がみつからずに親のすねをかじる最悪な生活。
正直言って、自分ですら嫌気がさす。
こんな俺にも大事なひとがいた。
唯一無二の支えだった幼なじみ。
名を荏西 優祈、性別は女。
生まれたときから一緒にいた俺ら。
互いを異性として認識するのには少々時間はかかったように思うが、それでも互いをとても大切におもっていた。
恋人のように毎日飽きもせず一緒にいて、もちろん常に行動を共にした。
中学二年まで、一緒にお風呂に入っていたくらいである。
当然、やましいことはひとつも起こっていない。
お互いの家族も仲がよかったので、晩御飯を向こうの家で食べてくる…なんていうこともしょっちゅうだった。
危険なこともたくさん一緒にやった。それがいけなかったんだ、といまさら気付いても遅い。
毎日楽しくて仕方がなかった。
中学生までは。
そんな俺らにある事件がおきた。
…いまとなっては思い出したくもない。
自分が"殺した"ようなものなのだ。
お互いの家族はいがみ合い、衝突を避けるために俺ら一家は引っ越して疎遠となった。
空虚な日々を過ごしてきた。
その空虚を埋めるためにあらゆるゲームに手をだした。
家庭ゲーム、オンラインゲーム、アーケード。
ジャンルは飽き性であるため浅く広くやった。
それこそギャルゲーとよばれるものたちまで。
そして、廃人と呼ばれるまでに至った。
それでも、空虚は満たされなかった。
確かに、ゲーム関連の友人はたくさんいた。
ネットを通じてたくさんのひとと知り合って、なかにはオフまで話がいったようなひともいた。
付き合おうか、と言えるような仲にまでいった異性もいた。
だが、それらは所詮代わりでしかなかった。
彼女には…幼なじみには満たなかったのだ。
それを自覚してからというもの、自分のゲーム廃人度は以前にも増して進み、コンビニなどの外出ですら億劫になった。
そんな状態のまま進学してやる気もなく日々を過ごしていれば、就活をしようが面接にいこうが、会社が好印象をおぼえるはずもない。
採用されなくて当然だ。
もう、いいかな。
こんな世界にしがみついていなくとも。諦めてしまえば早いではないか。
心の何処かに、幼なじみはまだ生きているのではないかと淡い期待を抱いている。
そんなことは有り得ない。
わかっていても諦められずこうして今まで怠惰ではあるが過ごしてきた。
でも。
もう、いいのではないだろうか?
ここ最近、そんなことを考えるようになった矢先にやってきた。
この世とオサラバする"きっかけ"が。