私には何もない
漢字で書いていない箇所は登場人物の年齢に倣いそのように書いています。
後日、脱字報告お待ちしております。
私には何もありません。
誰か、
私を…
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日記1ページ目
今日は私の7歳の誕生日です。私はプレゼントをもらいました。父と母はお仕事です。使用人の人たちは私を悲しげに見つめていました。なんでなのでしょう。プレゼントの中には文字を書くペンと文字を書く紙がありました。早速お勉強をしようと思います。
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日記365ぺージ目
今日はお茶会がありました。ご令嬢方にたくさんお話しを聞かせてもらいました。皆さま素敵なアクセサリーをつけていました。ご両親からいただいたプレゼントらしいです。私はそのようなアクセサリーをプレゼントされたことがありませんでしたので、驚かれました。ねだったらどうかと聞かれたので、珍しく帰ってきたお父様にねだってみました。そのようなものを欲しがるなんて、あの女の子供らしいと言われてしまいました。あの女とは誰のことでしょうか。もしかしてお母様のことでしょうか。お母様はお喋りなさるのですね。
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日記730ページ目
今日は侍女に街に行っみてはどうかと聞かれたので行ってみました。いつも家で家庭教師の授業を受けているだけだったのでそのようなこと思いつきませんでした。外は雪が降っていて寒かったのでもふもふのコートを着せてもらいました。街はとても賑やかで、屋台で食べ物を売っていました。建物の中は雑貨や、本、カフェ、お洋服を売っている所、本当に様々な物が売っていました。屋台の食べ物を買って、街をぶらぶらと歩いていました。ふと周りを見渡すと、父と思われる男性の方が男の子に肩車というものをしていました。近くの女性の方が笑顔でそばに寄り添っていました。あれは家族ですかと侍女に聞いてみたところそうらしいです。他の家族の方も笑顔で子供と手を繋いで歩いていました。たまに怒っている方も見ましたが、子供が地面に寝そべっていたので注意したのでしょう。私はなんだか不思議な気持ちになりました。
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日記737ページ目
今日はお父様とお母様とお兄様が屋敷に来て大食堂で食事をしました。私はなんだか街にいた親子を思い出して胸に温かいものが広がっていました。静かな空間にお父様の声が響きました。明日からお父様の愛人とその方のお子様がいらっしゃるそうです。その話を聞いた瞬間お母様のお料理が床に落ちました。高い音が響き何が起こったのか一瞬わかりませんでしたが、目の前に座っていたお母様が食器を床に落としたのだとわかりました。そこからはよく覚えていません。お母様が物凄く怒っていて大声で何かを怒鳴っていました。そして泣き叫び出しました。テーブルの上の物が次々と床に落ちていきました。私が知っているお母様のお顔は肖像画のお顔だけだったのでそのようなお顔を初めて見ました。お母様は私の方を見て叫び始めました。そして私の前に来て肩を掴み、また何か叫び始めました。
私はいつのまにか部屋の中にいました。侍女が私の切れた顔の手当をしてからお風呂に入れてくれました。胸がどきどきしています。どうしてでしょう。とてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとても
……私は何か勘違いをしていたのでしょうか。何か間違っていたのでしょうか。何か良くないことでもしたのでしょうか。これだけはわかりました。あの日、街で見た親子は普通ではないのだと。知らなきゃよかったです。
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日記738ページ目
今日はお父様の愛人とそのご子息が屋敷にいらっしゃいました。あのように愛人を見つめるお父様のお顔を初めて見ました。いつも無表情か怒ったお顔しか見たことがありませんでしたので。ご子息はリリスという名前らしいです。お父様の愛人のお名前はキャロル様です。お兄様は学園の寮に帰ってしまったので、私がリリス様にお屋敷を案内しました。リリス様は一言もお話しせず、私に着いてきました。全てのお部屋とお庭を説明し終わり、自分の部屋に帰る時にリリス様に話しかけられました。
「貴方は、私のことが憎くないのですか?」
私は聞かれた意味が分からず首を傾げました。
「何故ですか?」
そこで晩餐の時間になりました。侍女に呼ばれたため、そこでお話は終わりました。晩餐はお父様とキャロル様とリリス様と私でとりました。いつもは私1人だけなのでなんだか不思議な気分です。なぜか手の震えが止まりませんでした。晩餐も殆ど食べることができませんでした。部屋に戻りベットに入ると昨日の記憶が蘇ってしまい眠れそうにありませんでした。明日からもお勉強があるのにどうしましょう。
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日記768ページ目
リリス様と少しずつ仲良くなってきました。リリス様は私の誕生日の少し後でもうすぐ誕生日らしいです。リリス様は他国出身で様々な言語を習得しています。キャロル様は元々お父様の恋人で政略結婚により別れ、他国の貴族に嫁いだとのことです。リリス様のお父様はとても太っていて、太りすぎて亡くなってしまい、未亡人になったキャロル様をお父様が一年前に引き取り、しばらく面倒を見ていた事がわかりました。リリス様から聞くお父様はとてもキャロル様を愛しています。リリス様のことは目に入れないようにしているとリリス様から聞きました。
キャロル様は穏やかな方で、私やリリス様とすれ違うと笑顔で挨拶してくれます。その様子をお父様はよく思っていないようで、軽蔑した目で私を見ます。なぜかズキリとする胸を私は必死で隠し、笑顔で挨拶をします。また、何か間違っていたのでしょうか。
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「貴方はお父上に嫌われているのですか?」
何回目かになるお昼の休憩時間にリリス様から聞かれました。お勉強の合間にとる休憩時間が最近の唯一の楽しみです。何故ならリリス様から沢山のお話が聞けるからです。唯一食事が喉に通るからです。あの日から毎日一緒に晩餐をとっているのですが、まともに食べられないのに気付いて、誘ってくれたのでしょうか。
「そうなのですか。だからあのような目で私を見るのですね。気づくのが遅かったですね。わたくし。」
嫌われているのなら全て辻褄が合う。お父様の態度も。お母様がいないのも。お兄様が私をいないものとして扱うのも。使用人が侍女以外何も話してくれなかったのも。
そうか。
そうなのね。
最初から間違っていたのね。
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日記1825ページ目
今日は私の婚約者が決まったと晩餐で伝えられました。その方に嫁いで早くこの屋敷から出て行って欲しいのがひしひしと伝わってきました。来年の春から学園への入学が決まっている12歳の誕生日でした。
その日の夜にリリス様が部屋に訪ねてきました。
「私の事、どう思っていますか」
突然そんな事を聞かれたので驚きました。
「リリス様は面白くて、笑顔が素敵で、いつも私を色々なところに連れて行ってくれる優しい方です。」
いつもの笑顔で私はリリス様の顔を見つめました。
「ありがとうございます。」
そう言ってリリス様は部屋から出ていきました。
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日記◯◯◯◯日目
今日は、学園の入学式です。新入生代表の挨拶はリリス様が行いました。周りの女の子たちが黄色い歓声をあげている理由がよくわかります。リリス様はとても精悍な顔立ちをしていて、物腰が柔らかいです。なんだかもやもやします。学園は全寮制なのでお昼の休憩時間もありません。毎日のように顔を合わせていたのにとても遠い存在に感じます。私と違いリリス様の将来は明るいでしょう。もちろんその未来に私はいないはずです。わかっています。
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日記◯◯◯◯日目
学園に入学して数ヶ月が経ちました。友人もでき、学園生活は順風満帆です。たまに見かけるリリス様は常に王太子様の側にいました。王太子様のお側にはとても高貴な方々がいます。その中には私の婚約者もいるらしいですが、お顔がわからないので誰か分かりません。最近平民の特待生がその方々に囲まれて楽しそうにお話ししています。リリス様がその方に笑顔を向ける度に私は胸のあたりがもやもやします。これがどのような感情かはわかっています。それでも気づかないふりをします。最初から知らない方が幸せな事があるのは数ある経験から知っているつもりです。
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日記◯◯◯◯日目
学園入学から一年経ちました。リリス様は見かける度に成長しています。会ったばかりの頃は私と同じくらいの差しかなかったのに。あまり素敵にならないで欲しいです。とても我儘な思いですが、心の中くらいは自由でも許して欲しいです。あまりこの思いを膨らませてはいけません。私には婚約者がいて将来結婚し、子供を成す役目があります。それしか私は価値がないのですから。
それでも、今だけは許して欲しい。リリス様に忘れて欲しくなくて試験でも十位以内に入り、一位のリリス様の視界に名前が入るように勉強を頑張っています。見つめることを許して欲しい。貴方が、あの子と一緒にいるところを見る度に胸が痛みます。
貴方だけが私を心から笑顔にしてくれたから。
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日記◯◯◯◯日目
学園の高等部に入りました。私は今年,16歳になります。最近、特待生の女の子が私を見つめている気がします。何かしてしまったのでしょうか。もしかしてリリス様を見つめている事がバレてしまったのでしょうか。放課後に一人で寮に帰っていると、その子が私の目の前に立ちました。
「私は皆んなから愛されているわ。」
知っています。異性も同性もの方も貴方の事を好いています。屈託のない笑顔。いつも明るくポジティブな性格。頭が良く分け隔てない優しさ。
「貴方は何か努力をしているの?」
その言葉が一瞬理解できませんでした。頭を殴られた気分です。その通りだからです。私は何も努力していませんでした。何故なら努力をする必要がないからです。私の価値は、婚約者に嫁ぎ、子を産む事だけだからです。そうお父様に言われ続けました。そう思い続けていました。
「私は貴方の婚約者が好きよ。」
その言葉を聞いてホッとしてしまう自分がいました。リリス様を見つめている事がバレていないのだと。この子はリリス様が好きなわけではないのだと。そんな醜い心が自分の中にあることにも驚きました。
「私がどんなに努力してもどんなに説得しても彼の御両親は首を縦に振らないわ。それどころか、平民は貴族と結婚出来ないと仰るの。私は心底貴方が羨ましい。」
そう言って涙目になり私を睨みました。当たり前です。何も努力していない私が、彼女の好きな人と結婚できるのだから。
私はここでも誰かの邪魔になる存在なのね。
私には何もない。
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日記◯◯◯◯日目
高等部ニ学年になり、前から計画していた事を話す事にしました。
今日は、お父様とキャロル様がいる場で話し合いの場を設けてもらいました。
「私の婚約者と婚約を解消したいです。私にはあの の方に相応しくありません。婚約を解消したのちに私は修道院にはいろ」
―バチンッ
頬が熱い。体が痛い。何が起きたのでしょうか。
「起きろ」
上からお父様の声がし、顔を上げました。
「私がどんな思いで、お前を育ててきたのかわかっているのか!!!お前の顔を見る度に苛立って仕方がなかっと言うのに!!!やはりお前が生まれる前にお前の母親を早く追い出せばよかった。お前の母親のせいで俺はキャロルと別れることになったんだ!!!お前に婚約者を用意したのも、キャロルが言わなかったらお前をどっかのジジイ共に嫁がせるつもりだったんだぞ!!!おまえの」
「やめて!お願い!ルイス様…この子は何も悪くないわ。」
「こいつがお前の恩を仇にしたのだぞ!もう二度とその顔を見せるな!卒業までは養ってやる。婚約も解消してやる。だがそれからは二度と帰ってくるな。――――お願いだから早く消えてくれ。」
「ルイス様!」
何が起きたのでしょうか。私はまた、何か間違ったのですね。とりあえず婚約は解消したくれるのね。良かったわ。私の価値は無くなったけど。あと一年学園にいて、そのあとどうしようかしら。まずは、鼻血を止めないと、馬車で、寮に帰って、友人に怪我をなんて話せば、まずは、立たないと、
「早く出てけ!!」
「ゔっ」
お腹が痛い。―けられた…?そんなに嫌われるようなことしたかしら。私、どうして…こんなに…
「ルイス様!!!やめて下さい!!!」
それからは使用人が駆けつけ、私を馬車に乗せ、寮に帰らせてくれました。唯一街に誘ってくれた侍女が応急処置をして、涙を流していました。
「どうしたの!?その怪我!」
同じ部屋の友人が夜遅くに帰ってきた私を出迎えてくれた。
「えっと、転んでしまって…」
そうしていつもの笑顔を浮かべると、友人はホッとして、私の寝る準備を手伝ってくれました。
***
これ以降、この日記帳に文字が書かれる事はなかった。
***
次の日の学園の放課後。突然手を引かれ、誰もいない教室に引っ張られた。
「どうしたのですか?その怪我。」
目の前の光景が信じられず、唖然としてしまう。前よりも低くなった声、高くなった目線、硬く大きくなった手。じっと見つめられ、息ができない。
「貴方は私の事など忘れてしまいましたか?いつも見つめられていた気がしたのですが。」
その言葉を聞き、恥ずかしさで逃げてしまいたくなった。
「待って下さい。何故逃げるのですか?それよりお腹の方も違和感があります。まさか怪我をしていますか?」
「だ、大丈夫ですよ。派手に転けてしまっただけです。」
「本当ですか?」
背に手を回され、顎を掴まれ,上を向かされる。この目で見られると、私は、なんでも素直に言ってしまう。今までそれで何度も本心を暴かれた。行きたいところ。やりたい事。思っている事。
「やめてください。こんな事している所、見られてしまったら大変です。」
「そうですか。…私の事どう思ってますか?」
口をつぐんでしまう。きっと顔が真っ赤になっているだろう。
「私には遠い存在だわ」
そう言って手を振り切って逃げてしまった。今までどんなに辛い事があっても泣かなかったのに、昨日だって、泣かなかったのに、今は少しでも気を抜いたら泣いてしまいそうだ。
―好きですよ。ずっと…ずっと前から。
***
お母様がいなくなってからずっと心の中にポッカリと穴が空いている気がしていた。虚しいのかもしれない。悲しいのかもしれない。どんな言葉を当てはめても、しっくり来なかったのだ。それが今日、わかってしまった。もしかしたらずっと前からわかっていたのに、無意識に気付かないふりをしていたのかもしれない。
私…彼の方に。
リリス様に、
愛されたい。
好かれたい。
嫌いにならないで欲しい。
どうか何の価値もない私に失望しないで欲しい。
こんな醜い心をしている私を見ないで欲しい。
だから話しかけなかったのだ。
だから、諦めようとしていたのだ。ずっと。
貴方の声が話し方が好き。
貴方がお茶に誘ってくれて嬉しかった。
貴方が私に笑顔を見せてくれて、笑顔にしてくれて、泣きそうだった。
外に連れてってくれて、手を繋いでくれて、
私をあの場所から連れ出してくれて、嬉しかった。
他の誰でもない貴方だったから。
何の価値もない、何も持っていない、
私にこんな事を思われたって迷惑だってわかってる。気持ち悪いかもしれない。
他の子に笑顔を,振り撒かないで欲しい。これ以上好きにさせないで欲しい。
なんて、なんて、我儘なのかしら。
こんなこと思っているから私は、誰からも好かれないのね。
***
ついに卒業の日がやってきた。
卒業生代表の挨拶は勿論リリスだ。
あの日、リリスから逃げてから私は、これからの生活を考えていた。何かしようと思っていたが、何も知らない私は、何をしたらいいのかわからなかった。
しかし、特待生の子と仲良くなった。婚約解消の経緯を歪曲し、伝えた日からだ。平民の生きる術や金銭感覚について教えてもらった。
卒業の雰囲気で皆が浮き足立っている中、私は、一人寮で片付けをしていた。ふわっと風が舞い窓の前に人影が現れた。
「私と結婚しませんか?アイラ。」
一瞬誰のことかわからなかった。
そうだ。そうだった。
私の名前はアイラだ。誰からも呼ばれなかったから、自分の名前を忘れてしまったのだ。
「リリア様。貴方は首席で卒業したのですから、どこでも働けるはずです。わざわざ私のような人間と結婚するメリットがありません。」
胸が破裂してしまいそうだ。自分は夢を見ているのではないのだろうか。
6年間、まともに話さなかったのに。
「私が何のために勉強をしていたか知っていますか?貴方が行きたいところに行かせてあげたいと思ったからです。」
「何故です?そのような事をしても、貴方がする必要はないと思います。」
何故私は否定しているのだろう。
期待をするのが怖い。もし違ったら。もし勘違いだったら。
「鈍いですね。」
微笑んでいるような声だった。
「そんなところも好きですよ。私は貴方が私の事を好きなのを知っています。それもずっと前から。」
…聞き間違いだろうか。
聞き間違いに違いない。
だって、そんな都合がいい事があっていいのだろうか。
リリスがアイラに近づき、囁くような声で話した。
「初めて会った時、貴方は頬に怪我をしていた。その理由を私は知っていました。だからあのような事を聞いたのです。」
「貴方は私と話すことがすぐに好きになりました。特に勉強の合間の休憩時間に飲む異国の紅茶を気に入ってました。」
「貴方は常に笑顔を浮かべていたけれど、私は貴方を心から笑わせたいと思っていました。母上に許可をいただき貴方を街に連れ出しました。最初は、怖がっていましたが貴方はすぐに街に出ることが好きになった。」
「しばらくすると、貴方は私といる時に、自然と笑みが溢れるようになっていました。」
「それが、とてもとても、可愛いと思ったんです。ずっと見ていたいくらいに。」
「日々を過ごしていく内にどんどん綺麗になる貴方を独占したくてたまらなかった。婚約者ができた時は本当に悔しかった。」
「貴方の婚約者よりも優秀である事を見せつけるために勉強を頑張ったのです。どこでも生きていけるように毎日努力を惜しみませんでした。」
「貴方に会いたくても触れたくても我慢しました。一度会ってしまえば決心が揺らぐと思いました。本能のままに貴方を押し倒して傷つけてしまうのではないかと。」
「それでも怪我をしている貴方を放っておけなくて、あの日は怖い思いをさせました。すみません。」
「どうですか?これでわかってくれました?私は貴方が好きです。愛しています。」
そして俯いていた私の顔を顎を掴んで上げた。
「……ずっと、その顔が見たかったです。」
あらら出る涙のせいで酷い顔になっているはずだ。
これまで泣いたことなどなかった。
ましてや、好きな人の前でなんて。
「ないている顔がみたかったなんて変態さんですね。」
恨めしげに告げるとリリスはニヤリと笑った。
「そうですよ。私は貴方が思っているよりも変態なんです。」
恥ずかしくなり、胸に顔を押し付けた。
「私には何もありません。特別なこともできないです。どこにいても嫌われてしまいます。貴方の事になると特に後ろ向きに考えてしまいます。努力もあまりしてきませんでした。心も醜いです。貴方が周りの女の子たちに笑顔を振り撒いていると嫉妬してしまいます。もし私が間違った道を選んでしまったら…」
そこで話すのをやめた。どうしても聞くのが怖い。
「知っていますよ。私は貴方がどんなに醜くても、嫉妬深くても、好きですよ。もしも、間違った道に進んでしまったら私が貴方を正しい道に引き戻します。それなら安心でしょう?」
「一緒に考えて、一緒に選んでいきましょう。私たちは家族になるんですから。貴方は私のことが好きではないんですか?アイラ?」
優しい声色に溢れる涙が止まらない。
「好きです!…ずっと前から」
「貴方がいないと生きていけない。愛しています。一生、私を、私だけを愛して下さい、結婚してください…」
胸にうずくめていた顎に手をかけられ、上を向かされる。
リリスの髪が日光に反射してキラキラしている。
近づいてくる顔と香りに酔ってしまいそうだ…
―――
「もう一回…」
「もちろん…」
***
日記1ページ目
私は今、遠い遠い国に住んでいます。自然が豊かで人々は温かいです。技術も発達していて、生活に不便はありません。5年前、この地にやってきました。日記を書いているのは、昔描いていた日記を子供達が発見したからです。文字は私の母国語なので,わからなかったようです。今の私はとてもとても幸せです。
リリス様は貿易を中心に世界で色々な場所で活躍なさっていて会えない日々が続き、寂しいです。
私の家は庭付きで広くて、羊も飼っています。リリス様は学生の頃から起業し、資金を集めている事を知り、驚きのあまり腰を抜かしてしまいました。
本当に私で良かったのかと今でも疑っています。私も勉強を頑張っていたこともあり、翻訳の仕事をしています。決して、無職ではありません!!
そして、何と私を気にかけてくれていた侍女が一緒に来てくれました!親子ほど歳の差があるのでとても頼りになる存在です。今は私の子供達の面倒を見てくれています。
私の子供は、今四歳と二歳です。来年もう一人増えます。二人ともリリス様に似ていて、とても可愛いです!毎日元気に過ごしてくれて嬉しいです。
特待生の子も、無事結婚できました。今でも文通仲間なので嬉しいです。笑顔が絶えない家庭になって毎日とっても楽しいです。リリス様と出会えて良かった。
そろそろリリス様が帰って来ます。お夕飯の支度をしないといけないのでここら辺で終わりにします。
また明日。おやすみなさい。
後日談や特待生の子のお話も書けたら←ここ重要
書こうと思います。




