第十七話
序盤は、登場人物たちの大学生活や交友関係が丁寧に描かれる。主人公の大学生は
恋に、勉強にと充実した学生生活を送っているようだ。
そんな中、主人公に彼女を取られた大学の先輩が、教授の手伝いで件の資料室を訪れたことから、物語は加速する。主人公に恨みをもった先輩が、死霊室の死霊と出会った。
その死霊は、女子大生らしい服装をしていたが、腕はやせ細ったっており、顔は青白い。女優の迫真の演技によって、不気味な雰囲気を醸し出していた。
そして先輩は、まんまと死霊の口車に乗せられ、主人公を亡き者にしようとするのだ。
(ふーん。思ったより面白いわね。大学を舞台とした人間関係がちゃんと描かれてる。私もミオもあかねもついこの間まで大学生だったから、なんだか懐かしい。二人は楽しんでいるかしら……)
気になって隣を見ると、あかねは無表情でポップコーンを食べていた。反対側に座るミオは目をキラキラさせている……まあ、二人ともいつも通りだ。氷香は映画に集中を戻した。
その後も死霊はあの手この手で次々と登場人物たちを誘惑していった。そしてその誘惑に負けた人間は気付かない間に死霊に操られてしまう。この人は大丈夫そうだと思っていた人物までも、死霊の手に堕ちていく。
そうして主人公たちは、自分の仲間が死霊に操らつられているのではないかと疑心暗鬼に陥る。その人間模様もこの映画の魅力の一つのようだ。
——そんな、まさか君も操られていたのか。
——あら、今頃気が付いてももう遅いわよ!あいからず鈍感ね。
——なんてこった、肩こった……
信頼していたヒロインの女性が既に操られているとわかったときの主人公の絶望的な表情は、まさに迫真の演技であった。
映画は最高潮を向かていた。しかしその高まりと反比例するように、氷香の頭は次第に重く、霞みがかったようにぼんやりとしてきた。
(どうしてだろう?なんだか、ぼんや……りする……)
遠くで鈴の音が鳴ったような気がした。
——くくく、今回は若い新鮮な魂が大量に手に入ったである。やはり映画はいつの時代も人を惹きつけるのだ。吾輩、大満足であーる。
暗闇の中、歓喜する男の声が聞こえた気がしたが、氷香の意識はそこで途切れた……
「氷香!起きて、氷香!」
「う……う~ん」
「氷香!」
誰かに揺さぶられる感覚でゆっくりと目を開けた。どうやら眠ってしまっていたらしい。視界に映し出されたのは、十歳ほどの黒髪の小さな女の子。心配そうにこちらののぞき込んでいた。
先日、葉一と氷香がホテル『月影亭』の怪奇現象の調査に行った際に知り合い、友達となった付喪神の少女、ツクシだ。
月影亭では、いつも寝巻を着て、枕を抱いていたが、今日は年頃の女の子が着るような洋服を着ていた。
「ツクシ……ちゃん?」




