うわ、ようしゃない
魔法使いも重機関銃には勝てない。エリカ覚えた。
「ところでティナ。なんでいきなりブチ切れたの? そりゃあいきなり攻撃魔法を撃ってくるのは不敬だけど、この前の冒険者なんて私に後ろから抱きついてきたのに」
『あの冒険者ごと撃ち抜かれるのをお望みでしたか?』
「いやお望みにはなりませんけどね?」
『それに、あそこで機関銃をぶっ放してはシンシア様やフレヤ様にも当たってしまうでしょう? エリカ様はどうでもいいですが、あの二人を怖がらせるのは本意ではありません』
「…………」
このメイドさんが一番不敬では? いや、怖いから口にはしないけど。
それはともかく、男たち(すでに故人)がやって来た方角に足を進める私たちだった。今さらだけど、たぶん結界が破壊されたから様子を見に来たんでしょうねあの男たち(故人)
結界が張ってあったり複数の魔法使いが詰めかけているのだからさぞかし立派な何かがあると思っていたのだけど……しばらく歩いても代わり映えのしない森があるだけだった。鬱蒼とした木々に、藪、雑草……。どこにでもある風景。どこにでもある森。
なのに、どこか懐かしさを感じてしまうのはなぜだろう……?
「おっ」
木々の隙間からなにか白っぽいものが見えてきた。たぶん人工物。少しワクワクしながらさらに近づくと、そこにあったのは遺跡だった。
ギリシアのパルテノン神殿みたいな? アレよりは小さめだけど、それでもいかにも貴重そうな遺跡が鎮座していた。たぶん大理石とかそういう系。
そんな神殿の入り口には、10人ほどの黒ずくめの男たちが隊列を組んでいた。
「来たぞ! 報告にあったエルフだ! なんとしても止めろ!」
男たちは迷うことなく攻撃魔法を放とうとして、
『――排除します』
ティナの機関銃の餌食となっていた。血飛沫が神殿の柱を穢し、外れた弾や貫通弾が神殿の壁を抉っていく。
「ちょ、ちょっとティナ……いかにも貴重そうな神殿なんだから銃器は……」
『問題ありません。重要なのは遺跡ではなく、人々の心に残った歴史なのです』
「良いこと言っているようだけど、遺跡も大切だと思うなぁ私」
ミンチより酷い状態になった死体。飛び散った血や肉片。前世の私だったら貧血になってもおかしくないはずなのだけど、今の私は平然としていた。直接手を下したわけじゃないからか。あるいはゲームの世界だと割り切っているからか。もしくは『魔王』としての本性か……。
(ま、いいか)
いいかと思えてしまう私は、ずいぶんと『元』の性格からかけ離れているのではないだろうか?
そんなことを悩む暇もなくティナは神殿の中に入ってしまう。
『エリカ様。早くついてきてください。あまり離れるとあなたの自動防御結界の範囲外になってしまいます』
「あ、はいはい。……防御は私のスキル頼りなのね?」
『エリカ様の結界は頭おかしいレベルですので』
「頭おかしいって」
『それとも、可愛いメイドが傷つくことをお望みですか?』
「わぁ自分で可愛いって言ったぁ。まぁ実際可愛いのだけどね」
『…………。……バカ言ってないで、早く行きますよ』
ぷいっと前を向いてしまうティナだけど、照れているのか耳は真っ赤に染まっていた。エルフは耳が長いので後ろからでもよく見えるのだ。かわいい。
『……なにか?』
「いえ、なにも」
心の中でニヤニヤしながらティナのあとについて行き、神殿の中を進む。
「あ、次の曲がり角に敵の待ち伏せ」
『はい』
マップに表示された情報を伝えると、ティナは壁に向かって発砲した。壁に当たった銃弾は跳弾となって隠れていた敵に命中する。ゴ〇ゴかシティー〇ンターかな?
そんな感じに敵を倒しつつ、マップに従って神殿の奥へと進んでいく。
…………。
……そういえば、マップって初めて来たところは表示されないんじゃなかったっけ? でもこの神殿の詳細な間取りは表示されているし……。
(もしかして、この神殿に来たことがある?)
いやでもこの世界に来てから神殿に来たことなんてないはずだし……。
『――いかにもな扉ですね』
ティナが立ち止まったので、私も足を止める。
目の前には身長の三倍はありそうなほど巨大な扉が。ティナの言うとおり、いかにもボスがいそうな部屋だ。
マップで部屋の中を確認。……ちょっと赤い点が密集しているので数えにくいけど、この扉の向こうでは20人以上が待ち伏せをしているみたいだ。
『20人ですか。面倒ですね』
ほんとーにめんどくさそーに顔をしかめたティナは扉に近づき、ほんの少しだけ開けた。扉と扉の間にギリギリ手首が入るくらいの隙間。待ち伏せしている敵もまだタイミングが早いと思っているのか攻撃してくる様子はない。
『では、さようならです』
扉の向こうにいる人間たちに別れの挨拶を告げてから。ティナは空間収納からそれを取り出した。
映画やアニメでよく見る、暗い色をした楕円形。
手榴弾?
手榴弾ってヤツだよね?
そんな明らかな危険物のピンを抜き、部屋の中へと投げ込むティナ。一つだけではなく二つ三つと次々に。
爆音。
閃光。
阿鼻叫喚。
扉の隙間から爆炎が流れ出してくる。
うちのメイドさん、とてもこわい。
私がガクガク震えていると、ティナは扉の隙間に銃口を差し込み、狙いも付けないまま滅茶苦茶に乱射し始めた。
手榴弾による奇襲と、機関銃による殲滅。
敵による反撃はなかったし、何とも鮮やかなお手並みだったのだけど……あの、こういうときって私が鮮やかな操糸を魅せるものじゃないの? 気のせい?




