あ゛?
「おっと、そうだった」
フレヤちゃんも自動回復と自動魔力回復を習得してーっと。まぁこれでいざというときも死ににくくなるでしょう。一安心ね。
……あ、そうだ。
習得できるスキル一覧を眺めていた私はふと疑問が湧いてきた。
「二人とも、身体強化は使えるのかしら?」
いわゆる身体強化魔法。これを使うからこそ女の子の細腕でも鎧を着て動いたり剣を振ったりすることができるのだ。たぶんこの世界の戦闘職なら全員が習得しているはず。
まぁ、フルプレートを着込んだ上に大剣を振るうことができるフレヤちゃんはこの世界でも特異な存在だろうけどね。
「はい、もちろんです」
「あれがなければまともに動けませんよ」
「そうよねぇ……。スキルじゃなくて、魔法を発動する系?」
「そうなりますね」
「スキルを持っている人は魔力消費がないので、長時間発動できるみたいですけどね」
「へー」
ちなみに原作ゲームだと攻撃魔法と補助魔法は別枠というか異なる仕様だった。
たとえば回復魔法や身体強化といった補助魔法は誰でも習得できるし、そのうえでスキルを持っていると呪文詠唱の省略やスキルレベルアップによる効果の増大が狙えた。
対して攻撃魔法はスキルを持っていないと発動できないし、スキルを持っていても呪文の省略はできない。最高レアキャラは大体攻撃魔法のスキルを持っていたし、その他のキャラとの間で差別化ができていた。
まぁ、その分使いこなすにはSPをたくさん使わなきゃいけないので、無課金勢にはキツかったのだけどね。
とにかく。身体強化の魔法を覚えているとはいえスキルの方も習得しないといちいち呪文詠唱をしなければならないし、効果アップも狙えない。
というわけで私はシンシアちゃんとフレヤちゃんそれぞれに身体強化のスキルを習得してもらったのだった。
「じゃあ、ギルドの訓練場にでも行って、さっそく試してみましょうか」
「はい。……あ、でもわざわざギルドまで行かなくても公爵家の騎士団の訓練場がありますよ?」
「そうなの? 騎士団や訓練場まであるなんてさすが公爵家ねぇ」
「えへへ……。ではご案内しますね」
シンシアちゃんが立ち上がるよりも少し早く、すでに腰を上げていたティナがドアへと移動。先に扉を開けて私たちが部屋の外に出るのを待ってくれていた。軽く頭を下げた状態で。何ともそつのないメイドさんだ。
そんなティナを見ていて、私はふと思い出した。視線をフレヤちゃんへ移す。
「……ところで、フレヤちゃんはメイド服を着ないの?」
「へ!?」
「……あ゛?」
『あ゛?』
驚愕するフレヤちゃんと、ドスのきいた声を出すシンシアちゃんとティナだった。今私の推しがヤ〇ザみたいな声を――気のせい、よね?
これは失言だったのでは? と察しつつも、吐いた言葉は飲み込めないので突き進むしかない。
「ほ、ほら、フレヤちゃんと言えばメイド服じゃない?」
「そ、そ、そうなのですか!?」
予想外の提案だったのか慌てふためくフレヤちゃんと、
「……確かに。王都の勇者学校に行く際は気心知れたフレヤちゃんにメイドという身分を与えて同行してもらうという案はありますけど。……ありますけど?」
なぜだかニッコリとした微笑みを私に向けてくるシンシアちゃんだった。こっわ。
『まさか私だけでは飽き足らず、他の女性までメイドにしようとするとは……しかも没落貴族の娘を……倒錯的……廃エロ婦……』
ティナからの私評価が急降下してない? 気のせい?
私がガクブルしている間、フレヤちゃんは真剣に検討してくれたようだ。
「……服装にこだわりはありませんし、お姉様相手でしたらメイドという身分でも……」
「お、落ち着いてくださいフレヤちゃん! 危険です!」
『そうですよ、メイドスキーな野獣に襲われてしまいますよ?』
ちょっとシンシアちゃんとティナとはあとでじっくり話し合うべきでは? 主に私に対する評価について。




