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勇者候補、育てます。~私、魔王だけどいいのかしら?  作者: 九條葉月


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メイド


『チュートリアル・3。「攻撃して敵を倒せ」をクリアしました』


 気を失いかけていた私はそんな声で現実世界へと戻された。気絶すら許されないらしい。というか頭頂部に衝撃があったような? もしかして空手チョップしました? しませんでしたメイドさん?


『経験値を獲得しました』


「あ、はい?」


 経験値ということは、敵を倒したということで。


 おそるおそる、左手を見る。


 ひぃいっ、まだオオカミの死体が残ってるぅ……。私の腕に噛みついているぅ……。ゲームなら倒したあと死体は消えるのにぃ……。


『続いて「解体」してみましょう』


「……うぃっす」


 もう問いかけても答えてくれないことは察していたので、大人しく頷くしかない私だった。涙目で。


解体(デスト)のスキルを使ってみましょう』


「で、ですと?」


 私がそう繰り返すと――左手の重みが、消えた。噛みついたままだったオオカミの口部分が消滅したのだ。さらに言うならオオカミであったもの全てが。


 後に残されていたのは……毛皮と、爪。牙。そして赤い色をした宝石だ。

 えーっと、ゲームで言うところの『素材』なのかな? 敵を倒すとゲットできるやつ。


『チュートリアル・4。「解体してみよう」をクリアしました。――おめでとうございます! チュートリアルをクリアしました! ようこそ「夢幻のアレクサンドリア」の世界へ!』


「あ、はい」


 文字起こしすれば『!』が付いているのだろうけど、相変わらず無表情なままのメイドさんだった。この感じ、やはりどこかで見たことがあるような……。


 ……あ、そうだ。


 夢幻のアレクサンドリア。チュートリアル。そして無表情な黒髪のエルフメイドという情報が遅まきながら一つに繋がった。


 いわゆる、スマホゲーム。あるいはガチャゲー。


 ――夢幻のアレクサンドリア。


 久しぶりの国産MMO(多人数同時参加型)RPGとして開始前から大注目を集めたゲームであり、基本的には従来型のシナリオ型ガチャゲーでありながら自由度の高いMMOとしても楽しめる大人気作だった。


 プレイヤーは異世界『アレクサンドリア』で勇者学校の先生となり、多種多様なキャラクターを勇者として育成して『魔王グルグラスト13世』を倒すというストーリーだ。


 まぁつまり、勇者学校の生徒がガチャキャラであり、ガチャ課金こそが運営の主な収入源なんだよね。


 原作ゲーム(アレクサンドリア)における大まかな流れとしては、



 1.メインシナリオやイベントで新キャラをお披露目。

 2.ストーリー終了後に一旦お別れ。

 3.ガチャを引いて再会、持ちキャラに。



 という感じとなっている。


 シナリオで共闘した後だからキャラに愛着が湧いちゃってねぇ。私も推しを引くためにいくら課金したことか……。


 で、引いたキャラを鍛えてベストメンバーを編成。最終的には魔王討伐を目指すと。


 ただしそれはあくまで基本の流れであり、勇者学校の先生にならずに冒険者をしてもいいし、商人を目指してもいいし、鍛冶師などのクリエイトジョブを極めてもいいという自由度の高さが売りだ。


 あと、魔王を討伐したあともゲームを続け、そういう道を楽しむ人も結構いたし。


 ……まぁその場合にキャラガチャをひくと『商人や鍛冶師を先生と呼び慕う勇者学校の生徒たち』という訳の分からない状態になっちゃうんだけどね。そこはご愛敬というものでしょう。


 そして、この黒髪メイドさんはそんな『夢幻のアレクサンドリア』に登場する、いわゆる配布キャラだ。誰もが最初に育てる子で、チュートリアルの指南役。設定的には主人公が幼い頃から仕えているエルフのメイドさんだ。


 チュートリアルが終わったなら黒髪赤目のメイドさん――ティナとも普通に会話ができるようになるはずだ。AI搭載による自由度の高い会話も『夢幻のアレクサンドリア』の売りだったのだから。


「えーっと、ティナよね?」


 現実世界(?)では初対面ではあるけれど、ゲーム世界だとかなりの長い時間を一緒に過ごしたのでついついタメ口になってしまう私だった。


『――はい。ティナでございます』


 なんだか、ティナの声質が変わったような気がした。先ほどまでの操り人形から、自分の意思を持った人間へと……。気のせいかな?



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