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第1話:死にかけのスタートライン

シーン1:クローヴィスの酒場

迷宮都市クローヴィス。薄暗い酒場「鉄錆の杯」は、トレジャーハンターたちの喧騒で溢れている。木のテーブルには傷だらけの剣や血痕のついた地図が無造作に置かれ、酒と汗の匂いが混じる。壁にはギルドの依頼板が貼られ、「黒の領域:報酬5000ゴールド」「魔狼の討伐:3000ゴールド」と書かれた紙が風で揺れる。

レオン(20歳)は、酒場の隅でぐったりとテーブルに突っ伏している。青白い顔に、まるで今にも死にそうな目。手に持った木のスプーンすら重そうで、スープを口に運ぶたび肩で息をする。

「はぁ…なんで俺、こんな体でハンターなんかなったんだっけ…」

レオンが呟くと、隣にドカッと座る巨漢の男、バルド(28歳)が大笑い。

「ハッ! お前、昨日も同じこと言ってたぞ! さっさとスープ飲んで迷宮行くぞ、新人!」

バルドは傷だらけの鎧をガチャガチャ鳴らし、ジョッキを豪快に煽る。レオンは顔を上げ、ため息。

「新人じゃない。3ヶ月目だ。…まあ、成果ゼロだけどな。」

そこへ、静かな足音で近づく女性、セシル(21歳)。黒髪に紫の瞳、黒いローブの裾が揺れる。彼女はレオンの前に立ち、冷ややかな目で言う。

「成果ゼロ以前に、生きてるのが奇跡。あなた、昨日もトラップに引っかかって気絶してたわよね?」

「うっ…あれは、計算通りだったんだよ! だろ、バルド?」

レオンが助けを求めるが、バルドは「ハハ、計算で死にかける奴ぁ初めて見た!」とゲラゲラ笑う。

レオンのスキル「死際の剣聖」は、HPがほぼゼロの瀕死状態でしか発動しない。普段は短剣すら持てず、走れば倒れ、階段で息切れする虚弱体質。だが、瀕死になると短剣を握り、まるで別人のように敵を切り刻む。問題は、瀕死になるまでが地獄ってことだ。

「まあ、今日こそ一発当ててやるさ!」

レオンが立ち上がると、フラッとよろける。セシルが素早く腕を支え、呆れた声で。

「無理しないで。あなたが死ぬと、私たちの評価まで下がるのよ。」

「優しいんだか厳しいんだか…」レオンは苦笑い。

そこへ、ギルドの依頼板を覗いていた軽やかな影が割り込む。イリス(19歳)、猫のような動きの盗賊だ。金髪のポニーテールが揺れ、ニヤリと笑う。

「へえ、瀕死キッド、今日も死にに行くんだ? いい依頼見つけたよ。『黒の領域』の偵察。報酬は安いけど、楽勝っぽいよ?」

「やめろ、その呼び名!」レオンが抗議するが、イリスはクスクス笑って紙を渡す。

「黒の領域…24時間以内に脱出しないと消滅する迷宮か。やべえな…」バルドが唸る。

「でも、報酬に『不死の宝玉』の情報が含まれてるわ。レオン、あなたの呪い…スキルに効くかも。」セシルが真剣な目で言う。

レオンの目が光る。「マジか! じゃあ、行くしかねえ!」

こうして、4人のパーティが「黒の領域」に挑むことになった。


シーン2:黒の領域・入り口

グランド・ラビリンスの入り口は、クローヴィスの外れにある巨大な石門。苔むした門には古代文字が刻まれ、冷たい風が吹き抜ける。レオンたちは松明を手に、薄暗い通路に足を踏み入れる。

「24時間以内に脱出ね。時計を合わせて。」セシルが呪術で光る砂時計を浮かべる。

「ったく、こんなとこで死にたくねえぞ。」バルドが斧を肩に担ぐ。

「死にそうなのはレオンだけでいいよね、瀕死キッド?」イリスがチラリとレオンを見て笑う。

「だからその呼び名やめろって!」

通路を進むと、早速トラップが。床の石版がカチリと音を立て、矢が飛んでくる。イリスは軽やかに跳んで回避、バルドは盾で弾き、セシルは呪術のバリアで防ぐ。レオンは…

「うわっ!」

遅れて反応し、矢が肩をかすめる。血が滲み、レオンがフラつく。

「ほら、言ったでしょ! 気をつけなさい!」セシルが駆け寄る。

「いや…これ、ちょうどいいかも…」レオンがニヤリ。HPが減り、スキル発動の予感。だが、まだ瀕死じゃない。


シーン3:初戦闘

通路の奥で、ガサガサと音。現れたのは「鉄牙の狼」、鋼のような牙を持つ魔物だ。3匹の群れが唸り声を上げ、飛びかかる。

「来やがった!」バルドが斧を振り、1匹を叩き潰す。イリスは分身を出し、2匹目を翻弄。セシルは呪術で狼の動きを遅くするが、代償で顔が青ざめる。

「セシル、無理すんな!」レオンが叫ぶが、狼の1匹が彼に襲いかかる。

ガリッ! 爪がレオンの胸を切り裂き、血が噴き出す。HPが一気に減り、瀕死ラインに突入。

「よし…来たぜ…!」

レオンの目が鋭く光る。手に持った短剣が、まるで生きているように震える。体が軽くなり、時間がスローに感じる。「死際の剣聖」発動。

「喰らえ!」

レオンは一瞬で狼の背後に回り、短剣を喉元に突き刺す。血が舞い、狼が倒れる。残りの1匹が吠えるが、レオンはすでに次の動きへ。刃が弧を描き、正確に急所を貫く。戦闘は10秒で終了。

「…ハァ、ハァ…やったぜ。」レオンが膝をつく。血だらけで、今にも倒れそう。

「バカ! 回復するわよ!」セシルが呪術を準備するが、レオンが手を上げる。

「待て…回復したら…また弱っちくなる…」

「アンタ、ほんと頭おかしいよ!」イリスが笑い、バルドも「こいつ、すげえけどヤバいな…」と唸る。


シーン4:不死の宝玉の痕跡

一行は奥へ進み、壊れた祭壇を見つける。そこには古代文字と、宝玉の絵が刻まれた石板。セシルが解読する。

「『不死の宝玉は、冥神の試練を越えた者に与えられる』…レオン、あなたのスキル、関係あるかも。」

「試練? 俺の人生、試練だらけだぜ。」レオンが自嘲するが、目は真剣。

その時、祭壇の奥から不気味な笑い声。暗闇から現れたのは、仮面をつけたハンターらしき影。

「その宝玉、俺がいただく。瀕死の小僧、邪魔なら消すぞ。」

イリスがニヤリ。「おっと、ライバル登場? 面白くなってきた!」

レオンはフラフラながら短剣を握る。「へっ、来いよ。どうせ俺、死にかけだ!」

祭壇が揺れ、床が崩れ始める。影のハンターが笑いながら消え、一行は新たなトラップに飲み込まれる。

レオン: 「マジか…1話目からこんな展開かよ…!」

次回予告: 崩落する迷宮で、レオンたちは謎のハンターと対峙。瀕死のレオンは再び覚醒できるのか? 不死の宝玉の秘密とは?


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