表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/19

小説 コーポ長谷川 ①|ボロいいアパートで起きた珍事件 

夕暮れ時、キッチンのすりガラス越しに外灯の明かりが差し込む頃、101号室の前をさまざまな靴音が通り過ぎていく。

 

疲れているのがにじむが、どこかしゃんとした靴音。気だるさを引きずるような足取りの靴音。

 

私は愛犬を撫でながら、それらの音に耳を澄ます。そして、無意識のうちに靴音の主の姿を思い描いている。

 

築三十年を超える2DKのこのアパートに住んで二年になるが、隣人の顔すら知らない。

 

私の部屋は共用廊下の一番奥にあり、通り過ぎた足音はそのまま階段をカンカンカンと上がっていく金属音に変わる。

 

靴音のラッシュアワーが過ぎると、今度は上の階の部屋の足音が、せわしなく行き来を始める。

 

薄い壁を隔てた隣の部屋からは、ギターの音と、お世辞にも上手いとは言えない歌声が漏れ聞こえてくる。


「コツッコツッコツッ」

 


夜9時をまわった頃、鋭いヒール音が通り過ぎようとしている。キッチンのすりガラスを横切るシルエットは小柄な女性のように見える。テレビをなんとなく眺めながら、そのヒール音が遠ざかるのを感じていると――突然、音がぴたりと止まった。


 

「ピンポーン」



 女性の一人暮らし。オートロックシステムがない部屋の夜間のチャイムはちょっとした恐怖だ。恐る恐るドアの覗き穴から確認すると、見知らぬ女がそこに立っていた。



———見知らぬはずのその顔に、ぞくりと背筋が凍った。



           【2】へつづく






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ