コーポ長谷川

22歳のゆいは、大好きだった彼・一樹と、彼の実家の火事をきっかけに同棲を始めた。
初めての共同生活。苦しくても、どこか幸せで、「私もようやく、誰かと人生を築けるかもしれない」と思っていた——。

けれどその暮らしは、たった1年で崩れ去る。
一樹の裏切り。突然の別れ。そして彼の“新しい女”がゆいのもとに現れたとき、何かが決定的に壊れた。

引っ越し、再出発。もう一度、自分の“日常”を取り戻そうとするゆい。
だがその日々のそばには、いつも何者かの気配がつきまとっていた。
新聞受けに差し込まれた謎の現金封筒。不気味なメール。深夜の足音。——そして、過去の自分を揺さぶる夢。

逃げずに向き合うしかない。
誰かのせいにして終わらせたくない。
たとえ心がすり減っても、それでも“わたしの日常”は、わたしが守る。

静かなアパート「コーポ長谷川」を舞台に、
過去と今、痛みと再生が交差する物語。

心がふっと温まる日常の一コマと、
背中がすっと冷たくなる静かな違和感。
その両方をたしかに感じながら、ゆいは一歩ずつ、自分の場所を探していく。