第2話 金曜日の教室にて
バレンタインだね。
「あっ、忘れ物忘れ物〜。」
学校の玄関にいた俺はロッカーに忘れていた数学の課題を取りに階段をかけのぼる。今週末はために溜めた課題を消化すると決めているのだ。
タンッ、タンッ、タンッ。閑散とした校舎内に足音が響き渡る。
(しばらく運動してないからきついな…。)
そう思いながら教室へ歩いて行くと、小さな声が聞こえた。
「これは……に……という事かも……」
少し老けた感じの男の声だった。どうやら誰かがラジオを聴いているようだ。まあそんな事はどうでもいい。
(どうでもいいよね?)
教室に入ると、驚いたことにそこには誰もいなかった_。
「あ、十色君。」
いた。
ラジオを聴いていた2人の女子生徒が座っていた席は、教室を後ろから入ってすぐ右の列にあった。机を挟み、向かい合って座っている。1人はこの間俺に忠告?をしてきた白雪泉。もう1人はこのクラスの委員長で軽音楽部期待の新星と呼ばれている(らしい)少女、法理音葉だった。
「珍しいね、十色がこんな時間に学校にいるの。忘れ物でもしたの?」
音葉さんが変にニヤニヤしながら問いかけた。
「ああ、そうだよ。よく分かったね。」
俺はロッカーを漁りながら答えた。
「十色も一緒にラジオ聴こうよ!どうせ暇でしょ?」
「うーん。いいよ〜、どうせ暇だし。」
(あ…)
無意識に承諾してしまった…。
こうして、ラジオを聴く会(仮)が始まった。内容はどうやらリスナーの恋愛に対するアドバイスのようだ。
途中、音葉さんが話しかけてきた。
「ねえ、泉のどこが変わったか気づいた?」
「変化?」
どこが変わったんだ……あ。気づくのに1分かかった。
「メガネか!」
「正解〜!」
そのとき真剣にラジオを聴いていた泉さんがこっちを見た。
「どう?変かな?」
確かにメガネが黒縁から赤縁になっている。
「あ、いや、うん、問題ないよ。」
ちょっとぼんやりしてた。
この会話をした数分後にラジオが終わった。
「何なの!あの専門家気取りの上から目線のアドバイスは〜!?」
突然泉さんが大きめの声を出した。ラジオのアドバイスが不満だったようだ。
「少ししかリスナーの話を聞いてないのに『お互いに配慮が足りてないですねー』とか『私だったら普通に直接言いますけどねー』とか!なんかムカツク〜!」
「い、泉さん?」
「まず他人の恋愛に軽い気持ちで口出しするのは私的には〜ゴニョゴニョ……。」
泉さんが必死に語る中、音葉さんはまだニヤついていた。
「こうなるとなかなか止まらないんだよねー。」
「そうなんだぁ。」
そのとき俺はちょっと考えた。
(これが泉さんがいっぱい考えてることの正体?他にもっと考えてることがある?)
判断材料が少ないけどそんな気がする。そして初めて気になった。
(他人は何を考えているのだろう?)
「泉ーそろそろ帰ろうよぉー。」
音葉さんはもうバッグを背負っていた。
「え?あぁそうだね。帰ろうか。」
泉さんは慌てて準備を進め、音葉さんと教室を出ようとする。
去り際に音葉さんが言った。
「お互いにテスト勉強頑張ろうね!十色!」
「うん?」
「じゃあね!」
「十色君バイバーイ。」
教室から音が消えた。数秒後、俺はハッとした。
定期テストまであと10日。
俺はノー勉だった。




