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第11話 課外研修②

迷走

女子のような甲高い悲鳴とミニドーナツ、あまり偶然だとは考えられない。でも選択肢は一つだろう。ミニドーナツに信頼を寄せすぎている感じもするが…

「ありゃ?なんだ君たちか。」

そう言って角から出てきたのは法理(ほうり)さんだった。

「なんで音葉(おとは)がここにいるんだ?(いずみ)と2人か?」

「泉となつもいるよ。目的は普通に肝試しさ。喬椰(きょうや)こそ意外だな、君が来るとは思わなかったよ。」

白雪(しらゆき)さんは分かるがなつさんもいるとは。でもどこに…あ。2人は法理さんの背後でうずくまり、顔をあげようとしない。あの悲鳴を上げるほどだ、きっとトラウマになるものを見たに違いない。

「おーい2人とも、お友達が増えたから大丈夫だよ。さっさと戻ろう。」

「はぁ…はぁ…鏡に白いワンピースの女が…」

白雪さんは今にも泣き出しそうだ。というかもう涙を流している。

「えーっと、この先は行けるのか?」

「いや、封鎖されてるよ。あとは開かない部屋と立ち鏡しかないよ。行くかい?」

「…戻るよ。」

白雪さんとなつさんの心配をよそに康晃(やすあき)隊長が決断を下した。ここに来るだけでも大分神経をすり減らしたからな、霊的体験をせずにすむのはありがたい。


本日最後の難関である。部屋に戻るには先生の監視を掻い潜らなければならない。はずだったがホールで会議中だったので難なく戻ることができた。あとやることといえば…

「寝る前に恋バナをしようか。全員話すまで寝るんじゃねえぞ。」

「じゃあ康晃からだぞ、いいな?」

勿論(もちろん)!じゃあいくぞ、まずは……」

こうして1日目が終わりましたとさ。


2日目の朝、俺たちは大食堂で朝食を摂ろうとしていた。俺は康晃と喬椰に挟まれ、喬椰の向かいには法理さんが1人で座っている。白雪さんとなつさんが来ないので手をつけずに待っていると、

「あの、音葉さんですよね?隣いいですか?」

お盆を持ってやってきたのは前髪で目が完全に隠れている少女だった。ちゃんと会うのは2ヶ月半ぶりだろうか。ところで彼女の目を見た人はいるのか?

「勿論良いよ。えーっと君は確か…5組の田中…えと…」

「4組の諸留未瑚(もろどめみこ)です。」

「あ、そうそう未瑚だ。うん、覚えてるよ。」

法理さんは気まずそうな笑みを浮かべている。何も覚えてないじゃないか。こういう場面では素直に聞いた方がいいと思うよ。

「あの、皆さん昨晩は楽しそうでしたね。」

なぜ知っている。昨日のことは広められると困るぞ。せっかく先生を出し抜けたのにそれが無に帰ってしまうからな。

「部屋の外から話し声が聞こえたのでドアスコープから覗いてたんです。そしたらあなたたちを含む8人組がいて……」

未瑚さんの話を聞いた瞬間、俺たちは心臓が締め付けられると同時に石化してしまった。視線を左に向けると喬椰が目を見開いて冷や汗をかいている。間違いなくあいつが1番恐怖を感じているだろう。ありえない、遭遇してはいけない現象に、あろうことか、俺たちは遭遇していたのだ。未瑚さんが嘘をつくとは思えない。きっとそうだ、見間違いだ。

「8人ですよね?ここにいる皆さんと泉ちゃん、それに一番ケ瀬(いちばんがせ)さんでしたっけ?あと大きい男子ともう1人いましたよ。あれは誰なんですか?」

大きい男子は翔陽(しょうよう)だとしてもう1人は…だめだ信じたくない。

「未瑚さん、この話は一旦やめようか。」

気になってるところ申し訳ないが周りにつられての肝試しなんてするものじゃない、という教訓とともに俺は話を終わらせた。


「なあ喬椰……あ」

帰りのバスの中、喬椰は穏やかな顔で眠っている。寝るなら窓側を譲って欲しかったよ。ところで、肝を冷やした朝食のあと何をしたかといえばただの森林探索であるが、動植物の知識も無ければ特に面白いことも起きなかったのでここでは語らないことにする。あ、そうだ、傷つけると赤くなるキノコがあったな。それが結構あったものだから康晃と蹴りまくって遊んだよ。多分毒キノコだと思う。水分多めのカレー作って、恐怖体験をして、森歩いてキノコ蹴って…これだけ聞くと課外研修とは到底思えないな。だが今思えば過去の1年生がこれを行事の目玉としていたのはこういうことができるからだとも考えられる。結局高校生活は、青春は遊びが大部分を占めるようになるのか…と勝手に浅いことを考えているうちに熟睡してしまった。


「だめだ、全然眠れない。」

課外研修がヌルッと終わってしまった日の夜だった。あろうことか俺はバスで熟睡したうえに家に着いてからも昼寝をしてしまったのだ。おかげで今は昔の少女漫画の人物並に目が開いている。いや、あれは開いているというよりは目が少し大きいだけだな。…偏見か。

着信音が鳴った。誰だよこんな時間に、今天井とのにらめっこで忙しいんだぞ。

「よう十色、起きてるって信じてた。」

そう言って電話の主、康晃はひとつ欠伸(あくび)をした。

「なんだよ夜遅くに、ちょうど眠れないところだったからいいけど。」

「眠れないならベストタイミングだな。お前、秋休み予定とか無いよな?」

無いことを前提にした聞き方をしないでくれ、確かにいつも通り何も無いけど実は、意外にも傷つくものなんだよな。

「無いけど…またどっか行くのか?」

「うーん、まだ決まってない!でもとりあえず空けといてな!おやすみ!」

一方的に切られてしまった。康晃はいつもあんな調子だ。でも俺が暇人になっていないのはあいつのおかげだからな、毎回振り回されてるように見えるが俺はそれをありがたいと思ってるよ。さて、今日という日はこのへんにして寝るか。


眠れないんだった……。








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