第1話 青春の始まり?
文章量少なめです。
「本当に辞めるんだな、篠部。」
「…はい。」
高校に入学してから1ヶ月半、俺は卓球部を退部した。
ーこれから何すればいいんだろうね。
俺はそのまま職員室をあとにし、鞄を取りに教室へ戻ろうとした。廊下の窓からグラウンドを見ると、野球部が声を張り上げてランニングをしている。
(夢中になれるってきっといい事なんだろうなァ)
なんとなくそう思った。これが俺みたいな何も考えずに生きてきた奴の本心かは分からないけどね。
そんな事を考えながら教室の戸を開けると、そこには神々しいとも言える黄色い夕日をバックに立っている1人の女子生徒の姿があった。逆光で顔は見えない。
「待ってたよ、篠部十色君。」
その声はまさか!?
「なんだ泉さんか…。」
「なんだとはなんだ!わざわざ待ってあげたのに!
…たまたまだけど。」
(そうですか)
彼女は白雪泉。成績優秀で文化部だけど運動もそこそこできる。背は少し低めのポニーテールで顔は個人的にはいい方だと思う。あとは…
「ねえ、性善説と性悪説について私なりに考えたんだけど聞きたい?」
なんかいっぱい考えてるみたい。
「今は時間が無いんだ、暇な時聞くよ。」
俺の雑な返事に泉さんは明るく答える。
「じゃあ明日から私が考えてること沢山聞かせてあげるね!」
(ほーん)
さて、帰るか。
「ねえ、十色君。」
泉さんはまっすぐ俺の目を見ていた。
「君はもう少し考えた方がいいよ。他人のことも、自分のことも。もちろん今日のことも。」
突然だった。
「もう少し考えろ」それは思考を放棄して生きてきた俺がずっと言われてきた言葉だった。言われ慣れてるはずだった。
でもなぜか響いた。自分について語っていないからよく分からないかもしれないけど泉さんが言ったその言葉が響くのは軽い異常だった。
なんとなくこの先の、自分の何かが変わる気がした。
「うぅん。」
俺は微妙な返事をして学校を出た。
期待してもいいのだろうか。これから自分が変わっていくかもしれないことに。