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ボート

作者: ぽん

頓知のやうな私たち

『貴方が山を愛すなら

私は湖を愛します。』


こんな手紙が送られてきた。

何とも皮肉なこと。

男は湖に身を投げたと言うのに、彼女は山に姿を消した。


これは冬の日の上りかけた朝のこと。

男の遺品を整理する妻がこの手紙を受け取った。


「皮肉なこと。」

この日は男と妻が十年前誓いを立てた日であった。


1隻のボートが朝靄の中湖の上を漂う。

漕手の居ないボートは風の消えた湖でどこ行くわけでもなくただゆらゆらと漂っている。


湖の向こうに聳え立つ大きな山。

ボートでしか行けぬ寂しい山。


『山のような貴方の隣には、湖のやうな広く深い私が必要です。』

妻が男に贈った言葉。

最期、貴方は私に返した言葉を覚えていてくれたでしょうか。


『貴女は山でも湖でもなく、そして私も山でも湖でもない。

けれど貴女にとつて私は山であり湖であり、そして私にとつても貴女は山であり湖なのである。

頓知のやうな私たちは、風を切るあの一隻のボートで繋がっておりませう。』

皮肉にもこの答えに最初に辿り着いたのは賢い彼女だったのでしょう。

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