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ある日の事である。
突然村長邸に若く快活な青年がやってきた。
「ルークよく来てくれたわ。」
青年はきれいに整えられた薄緑色の短髪をかき上げ、
「レナートさん、お久しぶりです」
と言った。
マイクはどこで見覚えのある青年を陰からこっそり見ていると、それに気づいたルークは
「それでは、この子が……?」
と、レナートに目配せをした。
「えぇ、そう。マイク、こちらにいらっしゃい。」
そうレナートが手ぶりをつけマイクを呼び寄せる。
「この子はルーク、あなたの兄弟子よ。」
紹介されたルークが握手のために手を伸ばす。
「マイクです。」
「ルークだ。」
そう言って二人は固く握手するのであった。
それから二人はレナートのハーブ畑に行きハーブを摘みながらたくさんの事を話し合った。
話題は主にレナおばさんの事であった。
ルークはマイクが生まれる前からレナおばさんの弟子で、マイクの両親とも友人であったと言っていた。
「マイク、君の父親は立派な人だったよ。あの火事さえなければ……」
「僕のお父さんは火事で死んだの?」
「あ、これはまだ師匠は言ってなかったのか」
しまったという顔をしてルークは顔をしかめる。
「もっと詳しく聞きたい!」
マイクは身を乗り出す。
「いや、やめておこう。師匠が話していない事を僕が話す訳にはいかないだろう……こまったな、後でどやされるぞ……」
そういうと、ルークはそれ以降何を言っても上の空で何かを聞いてもはぐらかしたりからかったりするようになってしまった。
レナおばさんの元に戻った後、レナおばさんにその事について聞こうとすると
「時がきたら話すわ」
ときっぱりと拒絶されてしまったのであった。
マイクはその事がなぜだか無性に腹が立ち
自分に与えられた部屋に行くと
紙に思いのたけをぶちまけた。
ある程度書き気持ちが落ち着いてくると、次第に退屈になり言葉遊びを思いついた。
回文だ。
しだいに回文に縛りをつけて作ろうと思い立ち5文字×5文字の回文を作ることにしたのである。
そうして2時間もしたことであろうか
「できた!」
という声と共に回文を書き終えるマイク。
そうして出来上がった回文の紙を眺めているとその紙が輝きを放ち始めた。
マイクは頭の中から声が聞こえ始めたのをたしかに感じた。
その声はとても小さく神経を集中しても聞き取れないほどであった。
マイクがその声をよく聞き取ろうともっと神経をとがらせたときである
”バタン”という音とともに勢いよくレナおばさんがマイクの部屋に入ってきた。
「この光は……!もう……!?」
そういうとレナおばさんはマイクから紙を取り上げ両手を合わせぶつぶつと言葉をしゃべる。
光は徐々に失われていき元の紙に戻った。
「まぁ、マイクったら……こういう事はしちゃだめよ。」
そういいながらもどこか上機嫌なレナートはそっと紙をマイクに返し
「時が来たらその紙を必要だと思う人に渡しなさい」
そういって立ち去るのであった。
結局その後しばらくの間レナートおばさんはご機嫌であった。
食卓にはいつもより豪勢な食事が並び薬草の授業も免除された。
あまりのご機嫌さに皆がレナートに何があったのか聞くのだが、
「何もないわよ」
とはぐらかすのであった。
そしてその時は急にやってきた。
その日もまた雨が強く、雨音で外の音があまり聞こえなかった。
まだ続きの展開に悩んでます。
とりあえず2週間に一度は必ずあげたいのでここまでであげます。
来週か再来週加筆予定です。
2024/11/22 加筆しました。
23日(土)の更新はお休みです。