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先輩からアドバイスを貰って、練習に次ぐ練習。そして・・・さぁ!いよいよ本番!大会当日だぁあ!

 原稿を書き直して、再度女神さまに見て頂いたところOKを貰えた。早速練習だ!女神さまのアドバイスでは、一人ぼっちでいくら練習しても、自分ではおかしな所が判らないから余り効果が無い、だから他の部員と一緒に練習し、互いに聞き合って良くないところを指摘しあいなさい、とのことだった。また、本番までに何度読んでも同じ時間で発表できるようになりなさい、そのために必ず一回一回時間をきっちり計りなさいとも言われた。

 紙織ちゃんと響子ちゃんに女神さまからのアドバイスを伝えたところ、三人で順繰りに読み、一回一回指摘をしあうことになった。

「じゃぁ、私から。」

 まず、紙織ちゃんからだ。私はストップウォッチを片手にキュー出しをする。

「3・・2・・1・・キュー。」

「『1番、鵜殿紙織、芥川龍之介作、『羅生門』・・・・・・・・・・・・』はいっ、終了。時間はどうだった?」

「うーんとね・・・一分三十一秒。文字数は神倉先輩からOKが出ているから、読むのが速すぎるってことだよね。」

 続いて、腕組みをしながら黙って聞いていた響子ちゃんが発言した。

「聞いていて情景を思い浮かべることができなかった・・・そんな気がする。」

「どういうこと?」

 よく判らないって顔をして紙織ちゃんが聞き返してきた。

「・・・何と言うか・・・読むことに必死過ぎて、他人ひとに情景を読み聞かせようとしていないと言うか・・・そんな感じ。」

「うーん・・・具体的にどうすればいいんだろう?」

 紙織ちゃんが頭を抱えてしまった・・・。ふと、私は思いついたことを二人に提案してみた。

「ねぇねぇ、youtubeで朗読のお手本が聴けるようだから、聞いてみようよ!」

「そうね。プロのアナウンサーさんの番組が見れるようだから見てみよう!」

 スマホを取り出して、三人でyoutubeの番組を聞いてみた。

 ☆

「想像以上にゆっくりした語りだったねぇ・・・。」

 ほへぇ、流石はプロ、凄く聞き易かった。目を瞑って聞いていると、目の前に物語の風景が広がっているようだった・・・。

「私は、保育園の頃に参加した“絵本の読み聞かせ会”を思い出したよ。子供たちに絵本を読んであげてるつもりで語れば良いのだね。」

 響子ちゃんは何か自分の中で納得してるし。

「アナウンスと朗読は、やはり似ているようで違うんだなぁ。アナウンスはここまで間を空けないよ。もう少しスラスラと読んでる印象があるなぁ。」

 朗読のノウハウは、私には参考にならないと思った。毎朝テレビのニュースを聞いて、勉強しよう!

 ☆

 一週間ほど練習して、私たちは一度神倉先輩に聞いてもらってアドバイスを貰うことにした。まずは、紙織ちゃんだ。ちなみに、紙織ちゃんと響子ちゃんのタイムは私が計ることになった。

「では、お願いします。『1番、鵜殿紙織、芥川龍之介作、“羅生門”・・・・・・・・・。』」

「はい!時間は・・・1分51秒!」

 朗読終了と同時にストップウオッチの時間を読み上げた。バッチしの時間だ。

「お願いします。『2番、三輪崎響子、藤岡陽子作、“金の角持つ子どもたち”・・・・・・。』」

「はい!時間は・・・1分54秒!」

「・・・・・・鵜殿さんは、文章の部分は良く読めているわね。情景をきちんと想像できる。でも、下人と老婆の台詞はイマイチね。まぁ、高校生の女の子が大人の男と老婆の声を出せる訳ないのだから、そこは仕方ないことなのだけれども、それでも二人の喋り方の勢いの違いとか、性別の違いとかを演出しなさい。下人は老婆から衣服をはぎ取って素早く逃げるだけの体力や腕力があるわけだから、当然力のこもったしゃべり方でしょ。一方、老婆は骨と皮ばかりに痩せている人で、文中にも“鴉の啼くような声が、喘あえぎ喘ぎ、下人の耳へ伝わって来た。”って書いてある訳だから、下人と比べて弱弱しい語り口で読むべきじゃぁないかしら。」

「なるほどです。工夫してみます!」

「さて・・・三輪崎さんの方は、“加地先生”の台詞しか入っていない箇所だから、鵜殿さんみたいに人物毎に言い回しを変えると言う演出は必要ないわよね。ただ、“加地先生”は信念を持って自分の考えを語っている訳だから、その信念が伝わるように熱く語るべきではなくって?」

「はいっ、そのように調整してみます!」

「では、最後は栗須さんね。タイムは鵜殿さんが計ってあげてね。」

「了解です!」

 いよいよ私の番だ。見知った人達の前でも緊張するなぁ。

「3番、栗須入鹿、“中間考査が無くなった!私たちの高校生活はどう変わった?”・・・・・・。」

「時間は、1分26秒です!」

 さて、神倉先輩の御意見は如何に・・・。

「ふむ、良く読めているわね・・・間合いも速度も問題なし・・・後は、回数を重ねていくことか・・・。」

 うん?なんか微妙な言い回しなんだけど・・・良かったのかな?悪かったのかな?

「先輩っ!!良かったですか?それとも悪かったですか?」

「ふむ、良かったか、悪かったか、で言えば良かったわよ。でも、ここから先は口では説明し難いのよ。・・・このまま練習は続けなさい。Nコンに出てみれば、自分なりに目指すものが見えてくると思うわ。」

「はいっ!有り難うございます!」

 元気よく返事はしたものの、釈然としないなぁ・・・。Nコンに出てみれば判るのかなぁ・・・?

 ☆

 一週間後、遂にその日がやって来た!Nコン県大会の日だ!てっきりどこかの高校を借りてやるのかと思っていたら、会館を借り切っての開催だった。さすが、Nコン!

「おはよう!ドルフィンちゃん!」

「あっ、おはよう、紙織ちゃん、響子ちゃん。」

「いよいよだねぇ。」

「うんっ!怖いような、楽しみなような・・・。ともかく、今日は頑張ろう!」

「「おーーーーっ!!」」

 開会式が行われる大ホール前で受付が行われていた。担当の先生らしき人が指示を飛ばしている。私たちは先輩たちが来るのを待った。学校毎に受付をしなければならないので、全員そろってから受付をしなければならないのだ。

「あら?早かったのね。待たしてしまってごめんね。」

 神倉先輩を始めとする2・3年生がやって来た。

「おっ、皆そろったか?」

 顧問の西町先生が私たちを見つけて声を掛けてきた。

「欠席者はいないか?」

「はい。全員そろっております。」

「そうか。では、受付をしてこよう。」

 西町先生は受付に近付き、カバンから分厚い紙の束を出して、担当の先生に渡している。あれは、私たちの原稿をコピーしたものだ。Nコンでは、審査員用、進行役の先生用、計時の先生用と、原稿をたくさん複製しなければならない。原稿にはエントリー番号も記入しなければならないのだが、番号を貰えたのが一昨日だった。なので、昨日の土曜日は、職員室のコピー機を使わせてもらって、皆で製本とホッチキス止めをやったのだ。そのとき、皆のエントリー番号を見たのだけど、連続している番号は一つも無かった。これは、同じ学校の発表が連続しないよう、わざとそうしているそうだ。

 朗読部門では、引用した書籍のコピーも提出しなければならない。元の作品を改変していないか、原稿と照らし合わせるためだ。ちなみに改変が行われている場合は失格となってしまう。エントリー代は部費から出してもらうので、先生任せだ。

「さてと、受付は完了だ。開会式開始5分前まで、声出しをしてきなさい。」

「「「はいっ!」」」

 さぁ!いよいよコンテスト本番だ!

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