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こちら、県立東和高校放送局です!  作者: 田鶴瑞穂


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えっ?私の進路ですか?・・・うーん、まだ決めてなかったなぁ・・・そうだ!オープンキャンパスに行ってみよう!

「栗須さんは大学はどうするの?何か考えてる?」

 神倉先輩にそう聞かれたけど、はっきり言って今の時点ではまだ何も考えていなかった。

「うーん・・・先輩のように深く考えたことはありません・・・。」

「でも、もう高2の夏休みよ。そろそろ決めていかないと、準備が間に合わないわよ。」

 先輩からそう言われると、にわかに焦る気持ちが湧いてきた。

「うーん・・・どう決めたらいいのか・・・判りません・・・私は先輩と違って、明確な目標がありませんから・・・。」

「さっき言ったように、なりたい職業とか、極めたい勉強とかから考えると段々絞れて来るわよ。」

 私がなりたい職業かぁ・・・。何だろう・・・・・・やりたい仕事・・・うーん、考えてみると一つしか浮かんでこないや・・・。

「・・・私がなりたい職業は・・・ア、アナウンサーは無謀でしょうか?」

 先輩は一瞬、えっ!?って表情をしたけど、すぐに何時もの微笑んだ顔に戻った。

「栗須さんがアナウンサーに・・・良いんじゃない!実績もあるし、貴女の実力なら無謀ってことはないでしょう。」

「で、でも大学に“アナウンサー学部”って無いですよね。アナウンサーになりたいってことで大学は決められないような・・・。」

「あるわよ。」

 先輩は事も無げに答えた。

「えっ!?あ、あるんですか?」

「ええ。大学によっては放送技術が学べる学校があるわ。そこでアナウンサーの勉強もできるわよ。」

「じゃあ、そこを目指せばいいんですね?」

 すると先輩の表情が引き締まった。普段は見せない厳しい表情だった。

「そう簡単に決めては駄目よ。栗須さんは一学期の評定平均は幾らだったの?」

「えっ!?評定平均ですか?」

 突然話が飛んだような・・・何で???

「えーと・・・ちょっと待ってください。今計算します・・・。」

 えーと・・・確か現代国語が5で、古典も5、日本史も5だったなぁ・・・。

「えーと・・・たぶん4.8ぐらいかと・・・。」

 先輩は納得したような顔をした。そして、すぐに先ほどと同じ厳しい表情に戻ると、私の目を見つめた。

「思った通りだわ。貴女の書くアナウンス原稿はいつも良く出来てるものね・・・。なら、放送関連の大学に行くのはお止めなさい。」

「えっ!?なんでですか?」

「勿体ないからよ。放送技術を学べる大学は何処も言うほど偏差値は高くない。貴女なら余裕で合格するでしょうね。でもね、貴女がそう言う大学に行っても学ぶことはほとんど無いと思うの。貴女の実力は本物よ。多分進学しても学ぶことはほとんど無いはず。それよりも、大学でしか学べない高度な知識を得る方が有意義だと思うの。実際、テレビ局に所属するアナウンサーは名門大学を出ている人がほとんどよ。アナウンス技術の無い人は、大学に通いながら専門学校で身につけているようね。」

「えっ!?そうなんですか?」

 うーん・・・先輩に実力を認められたのは嬉しいけど・・・高度な知識かぁ・・・。

「どんな知識が良いんでしょうか?」

 先輩はようやく表情を緩めた。

「何でもいいのよ。知見を広めることがアナウンサーと言う仕事にとってプラスになることはあってもマイナスになることはないわ。」

 うーん・・・困ったなぁ・・・抽象的過ぎて何をすればいいのか判んない・・・振り出しに戻ってしまったなぁ・・・。

「ふふっ・・・困っているようね。」

 困惑する気持ちが顔に出てたみたい。先輩に笑われてしまった・・・。

「それじゃぁ、一つアドバイスをしましょう。色んな大学のオープンキャンパスに行って来なさい。」

「オープンキャンパス???・・・ですか?」

「そう。オープンキャンパス。それぞれの大学が自らの特色を高校生に知ってもらうために、キャンパスを開放して行うイベントのことよ。学校説明会は勿論、キャンパスツアーとか、模擬講義とか色んなプログラムが行われるから、その大学の雰囲気や学べる内容がよく判ると思うわ。いろんな学校のオープンキャンパスに参加することで、貴女のやりたい事、学びたい事が見えてくるんじゃないかしら。夏休みの間はたくさんのオープンキャンパスが実施されるから丁度いいんじゃない?」

 オープンキャンパス・・・かぁ・・・私の“やりたい事”が見つかるかなぁ・・・。

「判りました。行ってきます!」

 ☆

 早速私は響子ちゃんと紙織ちゃんに連絡を取った。Lineするとすぐに反応があって、駅前のマクドに集合することになった。

「おっ!ドルフィンちゃーん!おまたせー!」

 まずはいつも通り元気いっぱいの響子ちゃんが現れた。

「おっはよー!お二人さーん!」

 続いて紙織ちゃんの登場だ。二人とも私服なのでちょっとした違和感があるな。

 早速マクドに入ってポテトとコーヒーを注文。響子ちゃんはナゲットとコーラ、紙織ちゃんはアイスティーを注文。商品を受け取って二階席に陣取った。

「さぁて、ドルフィン殿、今回の招集はなんでござるか?」

「急いで相談したいことがある・・・としか書いてなかったけど、なあに?県総文のこと?」

 私はコホンと軽く咳をしてから提案を始めた。

「実は、大学のオープンキャンパスに参加しようかと思って。今日はそれのお誘い。既に始まっている大学も多いから、急いで集まって貰ったの。」

「オープンキャンパス?そう言えば、終業式の日のホームルームで担任が積極的に参加するようにって言ってたなぁ。Nコンや全総文で忙しかったから、すっかり頭から抜け落ちてたよぉ。」

 ははは・・・響子ちゃんらしいけど、実は私もそうなんだよねぇ・・・。

「私はNコンが終わってから暇だったんだけど、一人で行くのはちょっと・・・って思って積極的に動いてなかったの。二人が行くのなら、当然私も行きたい。」

 うんうん、その気持ちはよく判るよ。一人で大学のキャンパスに行くのって何となく敷居が高いよね。

「それじゃぁ、早速申し込むとして、問題はどこの大学に行くか、だよねぇ。」

 うーん、と三人とも考え込んでしまった。

「明らかに受験しないだろう、って大学は行く必要は無いよね。」

 沈黙を破ったのは紙織ちゃんだった。

「うん。もう八月になってるし、受験しない大学のオーキャンまで行ってる暇は無いと思う。」

 私の発言を聞いて響子ちゃんが身を乗り出して訊ねた。

「ドルフィンちゃんも紙織ちゃんもどこの大学なら受験する可能性があるの?」

 響子ちゃんの質問に対して、紙織ちゃんは腕組みをしながら、まるで独り言のように呟いた。

「可能性かぁ・・・受験する大学の指標になるのは偏差値だよねぇ・・・。」

 それを聞いて響子ちゃんは、ぽんと手を打った。

「それだ!偏差値!ねぇねぇ、6月に松田塾の全国模試を受けたじゃん。二人はいくつだった?」

 あぁ、そうだ。2年生全員で受検したなぁ。結果は確か終業式の時に貰ったぞ。

「うーん・・・6月の全国模試の結果だったら、た、確か60ぐらいだったと思うけど・・・。」

 すると、響子ちゃんも紙織ちゃんも、えっ!?って言う表情をした。

「ドルフィンちゃん、そんなにあったの?」

「た、高ぁー!?」

「えっ!?そんなに高いかなぁ・・・。」

「な、何言ってるの!資料として貰った松田塾模試に対応する大学のランキングは見たの?」

「いやぁー、Nコンやら全総文やらで忙しくてさぁ・・・だから見てないよぉ。」

 あれっ?二人とも唖然と言うか、呆れたような顔をしてるぞ・・・。

 響子ちゃんと紙織ちゃんはほぼ同時に大きな溜息を吐き出して、やれやれと言うように両掌を上に向けた。

「あのねぇ、ドルフィンちゃん、60って、私立文系ならどこでも行けるレベルなんだよ。」

 呆れ顔の響子ちゃんは、スマホで松田塾のホームページを検索して大学ランキングを開いてくれた。

「ほら!見てみ!」

「えっと、どれどれ・・・・・・えっ!?あっ!ほんとだ・・・。」

 ランキングを見て絶句してしまった・・・ほんとだった・・・。

「流石に和瀬田や京王、常置あたりには届かないけど、それ以外だったら、ね。」

「理系だと少し低いかな・・・国公立だと中堅どころなら大丈夫ってとこね。」

 なんか二人とも私の進路で盛り上がっているけど、そういう自分達はどうなのさ!

「私のことはさて置いて、二人の偏差値はどうだったのさ?」

 すると、二人は互いの顔を見合わせてから徐に私の方に顔を向けた。

「私達はドルフィンちゃんほどは無いよ。」

「うん。」

「いや、だから、人には言わせておいて自分達は言わないのかい!」

 二人ともバツが悪そうに頭を掻いたり顔を掻いたりしてたけど、やがて覚悟したのか私の方に向き直った。

「えーとね、私は58だった。」

「私は56。」

 へー、意外だ。響子ちゃんはともかく、紙織ちゃんは私よりも高いと思ってた。

「そっか・・・でも、さっきのランキング表を見る限り、二人ともこれから成績を伸ばしていけば、十分私と同じ大学を狙えるでしょ。」

「えー・・・いけるかなぁ・・・。」

「何を弱気になってるのよ!三人でNコンにも行けたでしょ!“成せば成る”よ!」

 すると、二人とも“Nコン”と言う単語に反応した。

「うん!そうだ!頑張ったらNコンに行けたもんね!」

「そうそう。あの時は、ドルフィンちゃんに置いてかれないように頑張ったんだ。」

 あぁ、なるほど、神倉先輩がよく言ってる“成功体験は大事”とはこういうことなんだな。

「うんうん。その意気だよぉ。三人で大学受験も頑張ろう!」


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