全総文が無事終了!さすがにNコンと連続で疲れたぁ~。なんか燃え尽きる、ってこういうことなのかなぁ・・・。
「きゃぁーーーーー!栗須さん、池田さん!三人とも入賞ですよーーーーー!」
び、吃驚したぁ。突然、鷲頭さんがもの凄いテンションで喜び出したぞ。
「凄い、凄い!」
池田さんも両手をぶんぶん振りながら喜んでいる。
「栗須さんももっと喜んでくださいよー!」
「栗須さんたら、なんでそんなポーカーフェイスなんですかぁ。」
ど、どうなってるの?
「えっと、お二人とも凄いテンションですね・・・。」
申し訳なさそうにそう言うと、二人ともそれこそ意外だって言うような表情をした。
「落ち着いている栗須さんが変なんだって。」
「そうよ。全国大会で入賞したのよ。もっと喜んでよぉ。」
そっかぁ・・・そうだよねぇ・・・全総文も全国大会なんだから、そこで入賞したってことは全国トップレベルである証なんだよなぁ・・・。ちゃんと喜ばないってことは、入賞できなかった人達に対して失礼なことだよね・・・。
「す、すみませんっ!ちょっと実感が湧かなかっただけですから・・・私もすっごく嬉しいです!と、言うよりも、三人とも入賞できたことがもっと嬉しいですっ!同じ県の者が全員入賞したって、これって凄いことですよね!」
私の言葉を聞いて池田さんと鷲頭さんは互いに顔を見合わせた。そしてすぐに私の方に向き直ったかと思うと、二人とも顔を紅潮させながら叫んだ。
「そうよ!私達、すっごいことを成し遂げたんだわ!」
「そうそう!十二名しかいない入賞者の中に同じ県の人が入ること自体がレアだもんね!」
私は二人の更に上がったテンションに圧されつつも、顔をぶんぶん縦に振ってそれを肯定した。
「ふふん!どう?ドルフィンちゃん!私も大したもんでしょ!」
な、何?突然、響子ちゃんが私の鼻先に顔を近づけて自慢してきたぞ。どうなってるの?
「え、え、え、響子ちゃん、突然どうしたの?」
私の言葉を聞いて響子ちゃんは鼻白んだ。
「ひどーい!聞いてなかったんだぁ!私も優・秀・賞!取ったんだよ!」
えっ!?凄い!それは目出度い!
「ご、御免ね。三輪崎さん。栗須さんは悪くないの。」
「わ、私達がはしゃぎすぎて栗須さんが発表を聞けなかったんだよ。御免なさい。」
私より先に池田さんと鷲頭さんが響子ちゃんに謝ってくれた。
「え、あ、いや、お二人が謝る必要はありませんよ。・・・あぁ、そんなに頭を下げないでください。怒ってない、怒ってませんからぁ。」
響子ちゃんが焦っている。そりゃそうだ。二人の三年生に謝らしてるんだから。
「御免ね、響子ちゃん。私もはしゃぎ過ぎたよぉ。」
「あああ、ドルフィンちゃんまで。本当に怒ってないからぁ。もういいですからぁ。それ以上謝らないで!」
☆
アナウンス部門で優秀賞2、審査員特別賞1、朗読部門で優秀賞1、ビデオメッセージ部門で優秀賞1。私達は一つの全国大会で五つの入賞を果たすと言う快挙を成し遂げた。ビデオメッセージ部門で受賞したのは言うまでも無く高倉高校だ。やはり真帆ちゃんとこは強い。私が高校生の間に真帆ちゃん達に動画作品で勝てる可能性はほとんど無いんだろうなぁ・・・。
この後は表彰式だ。私達は舞台に上がった。アナウンス部門、朗読部門、オーディオメッセージ部門、ビデオメッセージ部門の順に並んだ。一人一人が歩み出て表彰を受ける。あぁ、去年の今頃には考えもしなかったなぁ・・・私なんかがこんなに多くの表彰を受けることができるようになるなんて・・・。昨秋の県総文。冬の県コンテスト。Nコン県大会。Nコン全国大会。そして、今回の全総文。これもみんな、神倉先輩や響子ちゃん、紙織ちゃん、真帆ちゃん、桑畑先生・・・多くの人達のお陰だ。皆が私をここまで導いてくれた・・・有り難う、皆!
「アナウンス部門、優秀賞、東和高校、栗須入鹿殿。以下同文です。おめでとう。」
岐阜県のお偉いさんから賞状を授与された。観客席から拍手が起こる。
「有り難うございます。」
お礼を言って後ろに下がる。うん、でも、何度貰ってもやっぱり嬉しいもんだなぁ。自分の努力が評価されたってことだもんね。
「アナウンス部門、優秀賞、御船高校、鷲頭浅茅殿。以下同文です。」
パチパチパチ・・・自然と拍手する手に力が入る。鷲頭さん、おめでとうございます。
「アナウンス部門、審査員特別賞、丹鶴高校、池田阿須賀殿。以下同文です。」
パチパチパチ・・・池田さん、おめでとうございます。あぁ、仲のいい人達が表彰されるのは自分のこと以上に嬉しいなぁ。
「朗読部門、優秀賞、東和高校、三輪崎響子殿。以下同文です。」
パチパチパチ・・・やったね!響子ちゃん。遂に全国大会の優秀賞だよ!一緒に受賞できて、こんな嬉しいことは無いよ。あぁ、拍手のし過ぎで手が痛くなってきた・・・でも、頑張れ私!自分もあんなに拍手してもらったんだ。私も皆さんにお返しをしなきゃ。
☆
「全総文・・・あっと言う間だったね・・・。」
名古屋へと向かう列車の中で、私は窓外の風景をぼへーと見ながら呟いた。
「うん・・・そうだね・・・。」
響子ちゃんがアンニュイな表情を浮かべながら答えてくれた。
「まだ、夏休みは四週間近く残ってるんだよねぇ・・・。」
「うん・・・そうだね・・・。」
「でも、なんか・・・もう今年の夏は終わった・・・って感じがする。」
「うん・・・そうだね・・・。」
「・・・響子ちゃん、さっきから“うん、そうだね”としか言ってないよ?」
「うん・・・そうだね・・・。」
「・・・・・・。響子ちゃん、疲れてる?」
「・・・・・・。」
うーん、響子ちゃん、眼が死んでる。でも、傍から見たら私もそうなのかもしれないなぁ。Nコンが終わった段階で魂が燃え尽きたように感じたのに、続けて全総文にも出場したんだもんなぁ・・・。疲れて当然かぁ・・・。帰ったら一旦放送のことは忘れてちょっと休もうかな。でも、休んだら・・・また頑張ろう。次の目標があるんだから・・・。そう、来年のNコンでは神倉先輩と同じ日本一を獲るんだ!・・・って、ははは・・・私なんかには大それた目標かな?
☆
名古屋駅で駅弁を買って、近鉄線のホームに向かった。
時間はもう午後七時に近かった。これから特急に乗って、地元で乗り換えて、っとなると家にたどり着くのは午後十時を過ぎるかも・・・お母さんに電話しとこうっと・・・。
真夏の八月とは言え、流石に夜七時を過ぎるとすでに陽は沈んでいる。西の空には僅かに残光が見えるけど、車窓から見える街の景色はすっかり夕闇の中に沈んでいた。皆さんも疲れているのか、無言でぼぉーと窓の外を見ている。もうほとんど風景は見えないのにね。
あっ!?突然思い出した。駅弁を食べなければ!折角買ったのに、ぼぉーとしてて未だ食べてなかった。
「響子ちゃん、私ご飯にするね。」
そう響子ちゃんに声を掛けた。すると、多治見駅からこっち、明後日の方向を見ながら“うん、そうだね”としか返事をしなかった響子ちゃんが初めて私の顔を見た。
「・・・そう!そうだよ!ドルフィンちゃん!折角買った駅弁、まだ食べてなかったよね!?」
「うん、そうだよ。だから食べようかと思って。」
「そう、そうだよ!食べよう!今回の旅で最後の名古屋飯!しっかりと味わって食べなきゃ。」
おっ?響子ちゃん、俄然元気が出て来たぞ。よし!食べよう!
「響子ちゃんは何を買ったの?」
「うん?私?ふっふっふ・・・じゃじゃーん!これでーす!」
響子ちゃんが袋から取り出したのは・・・。
「名古屋名物“ひつまぶし弁当”だぁー。」
うおっ!?まぶしっ!?う、うなぎだとぉー!
「ええー!高かったんじゃないの?」
「そりゃぁ、高校生にとってはちょっとね・・・でも、優秀賞を取った自分へのご褒美、ってとこかな。ドルフィンちゃんは何買ったの?」
響子ちゃんに聞かれて、私も袋から駅弁を取り出した。
「じゃじゃーん!私はこれでーす!“名古屋コーチンわっぱめし弁当”!」
「おおっ!?名古屋コーチンとな!?おぬし、やるな!」
「ふっふっふ・・・見本が凄く美味しそうだったのでな。・・・では早速頂こうではないか。」
時代劇の悪代官をイメージして私はできるだけ低い声を出して答えた。
私が買ったのは、丸い“わっぱ”と呼ばれる容器に名古屋コーチンの時雨煮を入れたお弁当だ。コーチン以外の具材も彩り豊かでとっても美味しそうだ。パクっと一口食べてみた。コーチンは甘辛く煮付けてあって絶妙な塩梅だ。ごはんの炊き具合は柔らかく、かといってべチャッともしていない。山菜や根菜がたっぷり乗っていて、シャクシャクとした歯応えが心地いい。
箸休めの桜漬けやあんず、蓮根煮もさわやかでグッドだ。
「響子ちゃん、どう?うなぎは美味しい?」
夢中で食べている響子ちゃんに声を掛けてみた。
「うーん、よくある安物のうなぎはゴムみたいな食感がするでしょ?でも、このうなぎはふんわり柔らかくて凄く美味しいよ。パッケージにひつまぶしの食べ方が載っていてね、三段階に分けて食べろって書いてあるよ。
第一段はそのまま食べること。
第二段は付属の薬味を使って色んな味を楽しめって。薬味はねぇ・・・山椒、海苔、わさびの3種類!ピリッとしてさわやかな山椒!風味のよい海苔!ツンと刺激的なわさび!どれもうなぎの味を引き立ててくれるって。
そして最後、ごはんが残り3分の1ほどになったところで、付属のだしをまんべんなく掛けてお茶漬けのようにして食べるべし!って書いてあるね。」
な、なんかイベントみたいなお弁当だなぁ・・・でも、まぁ楽しそうで何よりだ。
そんな感じで響子ちゃんとワイワイ駅弁を楽しんでいる間に、列車は三重県の県庁所在地である津を出発、いよいよ進路を南から西へと変えていった。




