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こちら、県立東和高校放送局です!  作者: 田鶴瑞穂


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審査開始!池田さんも鷲頭さんも、凄く博識な原稿だなぁ・・・私も負けてらんない!さぁ、いくぞ!

 その後、三十分ほど練習を続けてから私達はホールに戻った。勿論、池田さんを応援するためだ。狙いはバッチし。丁度池田さんが舞台に上がるところだった。

 池田さんは発表席に座ると、マイク位置を調節し、一呼吸おいてからアナウンスを始めた。

『73番、丹鶴高校、池田阿須賀

 皆さんは、城跡に建つ高校が、全国にどれだけの数あるかご存じですか。

 答えは、十二校です。

 では、何故お城の中に高校があるのでしょうか?

 実は江戸時代にも学校がありました。藩校と呼ばれ、各地の大名が藩士の子弟を教育するために設立されたものでした。

 明治になり、廃藩置県が行われると各地の藩校は廃止されましたが、中学校令の公布に伴って城跡に移転され、その地域唯一の旧制中学になったのです。

 ではなぜ、旧制中学は城跡に移転したのでしょうか?

 学校の建設には広い土地が必要だったということもありますが、なによりの理由は、城跡の使い道に明治政府が神経を尖らせていたからです。廃藩置県によって全国には不平士族が溢れていました。この不平士族が反乱を起こし、城跡に立て籠らないか、と心配したのです。学校など平和的な利用であれば政府も安心したと言う訳です。

 私が通う丹鶴高校もまた、そうした城跡に建つ高校の一つです。

 江戸時代以来の長き伝統は私達にとって大きな誇りです。

 これからもこの伝統は引き継がれていくことでしょう。』

 流石は池田さん。流れるようなアナウンスだ。

 さてと・・・鷲頭さんの出番までは少し間が開くけど、十分に喉が温まったので、このまま観戦を続けることにしよう。私の出番は午後だから、発声練習は昼休みにもう一度やれば良いや。

 参加者の多くは、Nコン全国大会でも見かけた人達だ。まぁ、県予選を突破できる人達なんだから当然か・・・。相変わらず皆さんお上手だ。

「私の出番はもうすぐだから、控え席に移動しますね。」

 鷲頭さんが私の耳元に口を近づけてささやくように言った。私はうんうんと頷き、“頑張ってくださいね”とだけ鷲頭さんにだけ聞こえるようにささやき返した。

 しばらくして、鷲頭さんの出番が来た。大きな音を立てないように、ゆっくりと階段を登って行く。同じくゆっくりと席に着き、マイク位置を確認している。

 さぁ、いよいよだ。

『九十四番、御船高校、鷲頭浅茅

 皆さんは日本の城をイメージする時、どのような姿を想像しますか?

 ほとんどの人が姫路城のような天守閣を想像するのではないでしょうか。

 天守閣を持つお城を初めて築いたのは織田信長です。

 信長が築いた安土城は、それまでにはない独創的な絢爛豪華な城であったと推測されています。

 それでは皆さんは、安土城にモデルとなった城があったことはご存じでしょうか?

 私が通う御船高校の近くにはかつて多聞山城と言うお城がありました。このお城を建てた武将は、信長にも仕えた夕里弾正です。弾正は安土城よりも十二年も早い一五六四年に、四層の多聞櫓を持つ、当時としては斬新な城を築きました。この多聞櫓が後の天守になったと考えられています。

 多聞山城は、壁は白漆喰で屋根は瓦葺き、本丸御殿や能舞台、茶室、庭園などもある、近世城郭の先駆けと言っていい城でした。

 弾正の死後、多聞山城は信長によって破却されてしまい、現在はその遺構すら残っていません。信長にとって、自分よりも先じてこのような素晴らしい城が存在してはならなかったのです。

 もし残っていれば、間違いなく世界遺産になったことでしょう。残念でなりません。』

 おぉ!鷲頭さんも流石だなぁ。見事なアナウンスだった。内容も池田さんに負けず劣らず素晴らしい。皆さん、物知りだなぁ・・・。

 さて、最後は私だ。お二人に負けないよう、頑張ろう。

 ☆

 お昼休み、私は一人で大会議室に籠って発声練習をした。うん!良い感じに声が出ている。これなら大丈夫だ。

『間も無く、午後の審査を開始します。出場する学校、生徒の皆さんは会場にお戻りください。』

 おっ!?いよいよかぁ。大ホールに戻ろう。私のエントリーナンバーは108番。言ってる間に順番が回ってくるぞ。

 午後は101番からだから8番目の席で良いよね。私が一番乗りぃ・・・かと思ったけど、すでに多くの出場者が座っている。

『お待たせしました。午後の審査を開始します。』

 MCが開始宣言をした。101番の人と102番の人が舞台に登って行く。

 思えば、Nコンではこんな余裕は無かったなぁ・・・三日間、毎日怒涛のように審査があって、あれよあれよと言う間に時間が経っていったなぁ・・・。それに比べて、全総文はやっと自分の番が回ってきた・・・って感じだ。逆に、気が緩んでしまって、ヤバい。本当にヤバい。緊張感がなかなか湧いてこない・・・。

 “でも、Nコンの直後だから、気が抜けちゃってて、あんまし納得のいくパフォーマンスは出来なかったのよねぇ・・・。”

 そう言えば、去年、全総文から帰って来た神倉先輩が溜め息交じりにそんなことを言ってたなぁ・・・。確かに先輩が言ってたように、私たち放送部の頂点は、やっぱりNコンなんだろうなぁ・・・。

 などと余計なことをつらつらと考えてたら、何時の間にやら私が舞台に上がる順番が来ていた。危ない危ない。

 さてと、マイクの高さと距離は、と、うん、これで良い。107番の人が審査を終えて立ち上がった。代わりに109番の人が舞台へと登ってきた。彼女が座ったのを確認した。よしっ!行くぞ!

『108番、東和高校、栗須入鹿。

 私が通う東和高校は弾正山の中腹にあります。この山の頂上には、有名な松永寺があります。

 聖徳太子によって創建されたと伝えられる松永寺は、太子が奉納した毘沙門天像をご本尊としており、全国の毘沙門天信仰の総本山です。

 ちょうど我が校の正門の前から、松永寺の山門まで、千本桜並木道と名付けられた数キロメートルの遊歩道があります。

 不思議な事にこの遊歩道は、山道にも関わらず真っ直ぐな道なのです。何故でしょうか?

 実はこの遊歩道、かつてここを走っていた松永寺の参拝客を運ぶためのケーブルカーの跡地なのです。自家用車での参拝が当たり前となった昭和の終わりに廃線となり、その跡地が遊歩道となったのです。

 遊歩道には桜の木が植えられており、毎年春には満開の桜の中を歩くことができます。

 また、遊歩道の向かい側の斜面には多くのモミジが生えており、秋には山一面の紅葉を楽しむことができます。

 “からくれなゐに 水くくるとは”は、伊勢蔵人が詠んだ有名な和歌の一節ですが、実は、この歌、弾正山の麓を流れる龍王川の様子を詠ったものなのです。

 四季折々、美しい姿を見せる弾正山。是非一度訪れてみてください。』

 うん!自分では問題無くやれたと思う。あとは審査員の先生方がどう評価してくれるか、だな。

 ☆

 アナウンス部門の審査は無事終了した。しばらく休憩した後、15時45分からは生徒交流会が始まる。

 総合文化祭では生徒実行委員会が組織され、駅から会場までの道案内や、受付業務、審査の進行、表彰補助など、大会の運営のほとんどを生徒実行委員達が担っている。そこがNコンとの大きな違いだ。

 そして、全国から集まった高校生達の交流を目的としたイベントである生徒交流会は、生徒実行委員会が担う仕事の中でも最も大きなものだと言える。何せ、自分達の都道府県に対して良い印象を持ってもらえるか、それとも逆に悪い印象を持たれてしまうかは、この交流会次第だからだ。

 “鹿児島は良かったわよぉ。”

 神倉先輩は去年の全総文から帰って来た後、度々そう言っていた。その理由として、生徒交流会で好印象を持てたことを挙げていた。だから、今回私は交流会にとても期待しているのだ。

「皆さん、とっても良かったですよぉ。」

 席に戻ると、響子ちゃんを始め朗読部門の面々がそう言って出迎えてくれた。

「有り難う、響子ちゃん。浜野宮さんも鏡野さんも有り難うございます。」

 そうお礼を返すと、浜野宮さんと鏡野さんはにっこりと微笑みながら軽く手を振ってくれた。

「後は、生徒交流会と閉会式を残すのみ、か。」

 響子ちゃんが天井を見上げながらぽつりと言った。

「うん。Nコンと比べるとあっと言う間だったね。」

「私達はともかく、Nコンではドルフィンちゃんは三日間ぶっ続けで審査だったもんね。全総文は実質審査は一日だけだから、短く感じて当然だよ。」

「うん。あれだけの緊張感を三日間も持ち続けたのは、生まれて始めてだったよ。」

 思い出しても冷汗が出てくる。本当、Nコンの緊張感は半端なかったなぁ・・・。

「実は、私、生徒交流会が楽しみだったんだぁ。」

「あ、私も!神倉先輩がやたらと褒めてたもんね。」

 やっぱり響子ちゃんも気になってたんだぁ。・・・さてさて、どんな会なんだろうか・・・。


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