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こちら、県立東和高校放送局です!  作者: 田鶴瑞穂


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先週Nコンが終わったばっかりなのに・・・今度は”全国高等学校総合文化祭”だぁ!行くぞ!多治見へ!

 早えものだなぁ・・・あの戦いからもう一週間・・・私達は、新たな戦いに向かおうとしていた!・・・なんちゃって。

 いやいや、嘘は言ってないよ。明日明後日の両日、岐阜県多治見市で全国高等学校総合文化祭放送部門が開催されるからだ。東京から帰ってきたばかりだと言うのに、もう次の大会だ。

 今回、私や響子ちゃんと一緒に岐阜に行くのは、アナウンス部門では御船高校3年の鷲頭浅茅さんと丹鶴高校3年の池田阿須賀さん、朗読部門では高倉高校3年の浜野宮優華さんと丹鶴高校2年の鏡野月渚さんだ。ビデオメッセージ部門で高倉高校が出場するけど、残念ながら真帆ちゃんではなく番組制作班の人が行くそうだ。

 “番組制作は部員の皆で頑張ってるから。私ばかりが全国に行くのはおかしいからね。いろんな人に全国を経験してきて欲しいんだ。”

 真帆ちゃんは微笑みながらそう言ってた。うーん・・・真帆ちゃんは大人だなぁ・・・自分が行きたいのを我慢して他の人に譲るなんて・・・私ならできないなぁ・・・私ももっと大人にならなければ。

 まぁ、そんな訳で今日八月一日、私達は先週と同じように駅のコンコースに集合していた。とは言っても、前回は目的地が東京だったので、新幹線の乗降ができる洛中駅に集合したけど、今回は新幹線を使わないので別の駅に集合だ。

 えっ?なぜ新幹線を使わないのかって?そりゃ単純に値段が高いからだよぉ。まずは名古屋まで移動しなきゃならないんだけど、新幹線だと洛中・名古屋間は乗車券二千六百四十円と特急券三千二百七十円合わせて五千九百十円掛かってしまう。一方、近畿日本鉄道の特急“ひのとり”だと乗車券二千四百三十円と特急券千六百四十円と特別車両料金二百円、合わせて四千二百七十円で済むんだよ。まぁ、所要時間は新幹線よりも1時間ほど長くなるけどね。でもね、Nコンの時、新幹線の中で皆でワイワイやってると二時間十分の移動時間なんてあっと言う間だった。だから、一時間四十分なんて苦にはならないはずだ。

「各校の顧問の先生は、点呼が終わり次第、こちらへ報告してください!」

 あの先生、Nコンに向けて出発する時にも同じことを大声で叫んでたなぁ。何時も仕切っているってことは放送部会のお偉いさんなのかなぁ?おっ、各学校の顧問の先生がお偉いさんの許に集まったぞ。先生一人一人の話を聞きながら、お偉いさんは頷きながらプリントにチェックを入れてる。最後にプリントにざっと目を通すと、顔を上げて再び大声を上げた。

「全総文に参加する生徒諸君!全員の集合を確認できたので、これからホームに向かう!迷子にならないように!乗車間違いの無いように!では、出発!」

 あはは、まるで小学生に対する扱いみたいだなぁ。でも、確かにおしゃべりに夢中になってたりすると迷子や乗車間違いをやりそうだ。気を付けねば。

 この駅は分岐点なので、ホームがいくつもあり、それぞれ行き先が異なる。確かに迷子になりそうだ。私達は名古屋に行くから改札を抜けるとすぐにエスカレーターに乗り、上のホームへと向かった。

 伊勢中川行急行、宇治山田行特急、朝倉行準急と三本の列車を見送った後、ようやく私達が乗る名古屋行特急がやってきた。個人旅行とは違って団体で移動する際は必ず時間的な余裕を設けるから、三本程前にはホームに待機するのは至極当たり前のことだ。

 スピード感のあるフォルムでメタリックレッドに塗装されたこの特急は“ひのとり”と名付けられている。車内は広く、新幹線よりもゆったりとした椅子が設置されている。座り心地がとても良い。

「“のぞみ”も良かったけど、この列車はもっと快適だね。」

 響子ちゃんが深々と座ってからそう言った。

「確かに・・・新幹線よりも贅沢かも。」

「これから一時間四十分、まったりできるね。」

「・・・うん・・・。」

 ・・・。・・・。・・・む?な、なんか記憶が無いぞ。気が付くと窓の外は見覚えの無い風景が広がっていた。

「おはよう、ドルフィンちゃん。よく寝てたねぇ。」

 響子ちゃんの声で、はっと意識が覚醒した。

「え?え?え?わ、私、寝てたの?」

「うん。出発してすぐにこっくりこっくりし出したなぁ、って思っていたら、ガクッと頭を垂れてそのまま動かなくなったんだよ。よっぽど眠かったんだねぇ。」

「ご、ごめんね。」

「別に謝らなくていいよ。今朝も早かったんでしょ?」

 そう、今朝も早起きだった。それに昨日の夜は旅の仕度でバタバタして寝たのが遅かったから、あまり睡眠時間が取れなかったんだ・・・。

「えっと・・・それで今はどのへんなの?」

「さっき津を過ぎたところ。後三十分ほどで名古屋かなぁ。」

「え?そんなに寝てたんだぁ。あー、もっと風景を楽しみたかったのにぃ。」

「あはは。仕方無いよ。寧ろゆっくりと休めて良かった、って思わなきゃ。」

 それもそうか。行く前から疲れてたんじゃ良いパフォーマンスなんて到底出来ないからなぁ・・・。後三十分・・・のんびり過ごすか。

 ☆

 やがて名古屋駅に着いた。さぁ、ここからはJRに乗り換えだな・・・って思ったんだけど・・・。

「さぁ、これから宿に向かうぞ。連泊になるから場所をきちんと覚えるように!」

 えっ?こ、これから多治見に行くんじゃないの?何で?

「ねぇねぇ、響子ちゃん!何で、何で名古屋止まりなの?」

「さてはドルフィンちゃん、ちゃんとプリントを読まなかったんだな。宿泊地はここ名古屋だよ!」

「いや、だから何で?」

「名古屋から多治見までは四十分。多治見駅から会場までは歩いて十二分。だから、明日明後日は名古屋から通うんだよ。」

「ええぇ!?多治見に泊まるんじゃないんだ!何で会場の近くに泊まらないの?」

「多治見には全国から集まる放送部員全員が泊まれるだけの宿のキャパシティは無いそうだよ。それに比べて名古屋は大都市だから宿は腐るほどある。値段もピンキリだから、私達高校生が泊まるに相応しい安いホテルもふんだんにあるんだよ。」

「な、なるほど・・・全国大会ってそれだけ人が集まるんだもんね・・・規模が大きくない地方都市だとそう言う問題が起こるんだ・・・。」

「判った?まぁ、今日は名古屋見物でもして、明日への活力を養おう!」

 なるほど・・・ほんとだ・・・名古屋駅周辺には腐るほどビジネスホテルがある。流石大都市だ!私達が泊まるホテルも名古屋駅から徒歩数分のところにあった。

「では、今日この後は自由時間とする。しかし、名古屋は大都市だから物騒でもある。単独行動は慎むように!必ずグループで行動するか、顧問と一緒に行動しなさい。以上。」

 一旦部屋に荷物を置いた後、ロビーに再集合したんだけど、こういうお達しがあっただけだった。さて、これからどうしようか?そう考えていると、突然、響子ちゃんが私と鼻どうしがぶつかるんじゃないかって距離まで顔を近づけて来た。そして、私の両肩を強く掴みながら、こんな至近距離なら必要ないんじゃ、って思えるぐらい大きな声でこう言ったのだ。

「ドルフィンちゃん!勿論、これから名古屋城に行くよね?」

 えっ?

「名古屋に来たからには名古屋城に行くしかないでしょう!」

 えっ?

「むふぅ!やっぱりドルフィンちゃんも名古屋城に行きたかったのか!そうか、そうか!」

 えっ?

「では、早速行くのじゃ!すぐに行こう!」

 えっ?えー、私の意見は聞かないの?・・・でも、私は行きたい所を特に決めてなかったし、まぁ、いいかぁ・・・。響子ちゃん、戦国マニアだもんね。やっぱり行きたいよねぇ・・・。

「え、何々、東和さんは名古屋城に行くの?」

「私達も行きたいなぁ・・・一緒に行ってもいい?」

 丹鶴高校の池田さんと鏡野さんが響子ちゃんの叫びを聞いていたらしく、こちらの話に乗ってきた。

「東和さんと丹鶴さんは名古屋城に行くの?私達も行きたいなぁ。」

 今度は高倉高校の浜野宮さんと高倉高校の番組制作班代表として来ている九鬼さんが声を掛けて来た。

「ええ、勿論良いですよ!皆で行く方が楽しいですし、これを機会に是非仲良くなってください!」

 響子ちゃんが勝手にどんどん話を進めていく。

「ねぇねぇ、響子ちゃん。こんだけ一緒に行くんだったら、御船高校の鷲頭さんと猪垣高校の人にも声を掛けようよぉ。」

 私がそう提案すると、響子ちゃんはすぐに反応した。

「おぉ、そうだね。ええと、鷲頭さんは、と。あ!居た居た!鷲頭さーん!」

 響子ちゃんの声掛けに気付いた鷲頭さんがこちらに近寄ってきた。

「はい、なんでしょう?」

「これからなんか予定を考えておられます?私達六名はこれから名古屋城見学に出かけるんです!もし、よろしければご一緒に、と思いまして。」

 それを聞いた鷲頭さんは、すっごく嬉しそうな笑顔を浮かべた。

「嬉しい!誘ってくださるのね!勿論、ご一緒させていただくわ!有り難う!」

「いえいえ、折角ですから。」

 えっと・・・猪垣高校さんは、と。ラジオ番組の人とは交流がないから顔を良く知らないや・・・。こう言うときは響子ちゃんみたいに大声で呼ぶのもありだな。

「えーと、猪垣高校さーん、おられますかぁー?」

 すると、ロビーの隅の方で本を読んでいた女性が反応した。あの人かな?

「猪垣高校さんですか?済みません、お名前を知らないもので。」

 私が近付きながらそう言うと、眼鏡を掛けたその女性は、仕方ないとでも言うように頷いた。

「いえ、番組部門はアナウンスや朗読と違って、個人名が出ませんもの。名前が判らなくても不思議はありません。初めまして、私は猪垣高校の阿曽亜香音と申します。宜しく、栗須さん。」

「ん?私、名乗りましたっけ?」

「いいえ。名乗られてはいませんが、Nコンの表彰式でお顔とお名前を覚えたんです。」

「えっ?凄いですね、そんなことで覚えているなんて。」

「“そんなこと”・・・いえ、貴女は凄い人なんですよ。初出場の全国で優秀賞を取ったんですから。」

「いやいや、それなら同じ初出場で二位を取った渋川さんはもっと凄いですよぉ。」

「それはそれ、これはこれ、ですよ。・・・ところで、何かご用事ですか?」

「あ、そうだ。阿曽さんはこの後何かご予定は?私達七名は、これから名古屋城見物に行くんですが。もし宜しければご一緒に、と思いまして。」

 阿曽さんは鷲頭さんの時と同じようににっこりと微笑んで頷いた。

「有り難うございます。私も誘ってくださるんですね。」

「はい!どうでしょう?」

「勿論、ご一緒させて頂きます。」

「あぁ、良かった!では、皆で行きましょう。」

 これで話はまとまった。

「じゃぁ、私は顧問の先生方に行き先を言ってくるね。」

「あ、ドルフィンちゃん、私も行くよ。・・・皆さん、ちょっと待っててくださいね。」

「いいえ、そんなことまでお二人にさせる訳には。」

「私達も一緒に行きますよ。」

 こうして八名全員で顧問の先生方に行き先を伝えて許可を貰った。

「よーし!ちゃんと許可も貰ったし。それでは名古屋城に向けてしゅっぱーつ!」

 やっぱり響子ちゃんは、ここでも何時もの響子ちゃんだった。

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