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こちら、県立東和高校放送局です!  作者: 田鶴瑞穂


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遂に結果発表だ!・・・て、手の震えが止まらない・・・さぁ、果たして私の順位は?そして、真帆ちゃん、神倉先輩の結果はどうなったの???

『それでは、閉会式に移ります。まずは、各部門の結果発表です。』

 さぁ、待ちに待った結果発表だ!うん?て、手が・・・手が震えている・・・。何で・・・そ、そんなに緊張しているの・・・これって・・・自分では認識していなかったけど・・・。

『アナウンス部門の結果を発表します。まずは、優秀賞です。』

 優秀賞・・・去年、先輩が獲得した全国三位の賞だ。二人選ばれるはずだけど・・・。

『優秀賞・・・F県立鐙野高等学校、鵜峠鹿の子さんと・・・。』

 あちゃー。駄目だったかぁ・・・。まぁ、そうだよねぇ・・・所詮私なんだし、先輩と肩を並べるなんてことは無いよねぇ・・・。

『N県立東和高等学校、栗須入鹿さんです!』

 わーっと、会場中から歓声が上がった。

 全国三位、おめでとうございます。他人のことでも、この場では素直にお祝いできるよ・・・ん?・・・ん???突然、先輩が私をぎゅっと抱きしめて来た。

「おめでとう!栗須さん!」

 えっ・・・と、なんでしょうか?何故、私は先輩に抱きしめられているんですか???

「おめでとう!ドルフィンちゃん!」

 先輩の胸で見えないけど、これは真帆ちゃんの声だよね。

「おめでとうございます!先輩!」

 これは、神志山さんの声・・・え?・・・何がおめでたいんだ???

「おめでとう!!ドルフィン!!去年の先輩と並んだよ!!凄い!!」

「おめでとう!」

 響子ちゃんと紙織ちゃんの声だ・・・???何???

「もう!何を呆けているのよ!貴女、全国三位を取ったのよ!」

 うん?何?私が全国三位?先輩、何言ってるんですか?

「皆、何言ってるの?」

「何って、ドルフィンちゃん、聞いてなかったの?貴女が全国三位になったのよ!」

 響子ちゃんが怒っている・・・え、えっ!!えー!!!私が・・・三位・・・なの!?こ、今度は全身が震えている。ふ、震えが止まらないよぉ。

『続いて、準優勝です!準優勝は、N県立高倉高等学校、渋川真帆さんです!』

 わーっと、再び会場中から歓声が上がった。え、ええっ!?ま、真帆ちゃんなの!?す、凄い・・・全国二位・・・二位だよ!真帆ちゃん!

「ま、ま、ま、真帆ちゃん!?あ、貴女・・・す、凄い!凄すぎるよ!真帆ちゃん!」

 自分でも何言ってるのか判らなくなった。でも、讃えなきゃ。

「お、おめでとう!!」

「あ、有り難う、ドルフィンちゃん!」

 私は思わずぎゅっと真帆ちゃんに抱きついていた。泣き虫の真帆ちゃんは、もう既に泣いていた。でも、そうだよねぇ・・・全国で二番だよ!二番!泣くほど嬉しいに決まってるじゃん!そう思いながら、私も頬を涙が伝っているのを感じた・・・あぁ、自分のことのように嬉しいよぉ。良くやったぞ!真帆ちゃん!

『さて、いよいよ、優勝者の発表です。』

 おっ、いよいよ優勝者の発表だ。でも、それが誰だかは判っている。そう、私や真帆ちゃんにこの人が負ける訳が無いんだ!

『優勝者は・・・N県立東和高等学校、神倉千穂さん、です!』

 わーっと、これまでに無い、大きな歓声が会場中から沸き起こった。

 あぁ、これが全国一位に対する歓声なんだぁ。

「せ、先輩!おめでとうございます!」

 自然に言葉が出て来た。

「「「先輩!!おめでとうございます!!!」」」

 私の言葉に触発されたのか、一斉に皆が先輩を祝福した。

 すると・・・見開いた先輩の双眸から涙が溢れてきた。私はそれを見た時、最初は驚いた。先輩が泣くなんて、と。でもしばらくして考えが変わって来た。そうなんだ・・・全国一位と言う目標は簡単に達成できることじゃない。それは先輩であっても同じなんだ。先輩のことだ。私達の知らないところで不断の努力を続けていたんだろう。私とは違って、先輩には共に頑張ってくれる友達はいない。そんな中で、心折れること無く頑張り続けることがどれほど大変なことか。それが遂に報われたんだ。泣くほど嬉しいに決まっている。

「本当に・・・本当に、目標達成、おめでとうございます・・・先輩!」

 私は呟くような抑えた声で、そっと先輩にだけ聞こえるようにもう一度お祝いの言葉を述べた。先輩は涙を拭きながら、私の顔を見た。そして。

「ありがとう、栗須さん。」

 隣に居る私にだけ聞こえる小さな声でお礼を言ってくれたのだ。

 ☆

『以上で、結果発表を終わります。各部門の優秀賞、準優勝、優勝を受賞した人、並びに学校の代表者は、表彰式を行いますので、決勝の際に集まって頂いた舞台袖入口に、速やかに集合してください。』

「あっ!呼ばれてる。行かなくっちゃ。先輩!真帆ちゃん!行こう!」

「あっ!栗須さん、そんなに急ぐとこけるわよ!」

 先輩が言い終わらない内に私は蹴躓いてこけていた。

「もう!ドルフィンちゃんたら!」

 真帆ちゃんが悪態をつきつつ私の腕を掴んで引き起こしてくれた。

「あ、有り難う・・・。」

「言ってるしりから・・・駄目よ、急いでいるときこそ慎重に!“急がば回れ”って言うでしょ!」

 先輩が呆れ顔で言った。はい、済みません。言い訳すらありません・・・。

「さぁ、行くわよ!」

 真帆ちゃんが暗く沈んでいる私を励ますためか、何時もにも増して明るく言った。

「うん!行こう!」

 私達はロビーの集合場所へと向かった。

 ☆

「エントリーカードにて確認を行っています!受賞者の皆さんは、部門とお名前を言って、エントリーカードを見せてください!」

 係の人が叫んでいる。皆それに従って一列に並び、指示通りに受賞部門と自分の名前を係の人に言い、エントリーカードを見せていた。

「はい!それでは部門別に並んでください。順番は優勝、準優勝、優秀賞、優良賞の順です。複数受賞者のいる優秀賞、優良賞はエントリー番号の若いもの順に並んでください。アナウンス部門はここ!朗読部門はここ!ラジオドキュメントはここです!」

 指示通りに並ぶと、すぐに列は動き出した。そのまま舞台袖へと誘導された。そこで行進を止められた。

「まずはアナウンス部門の人!舞台に出て順に座ってください!」

 舞台上には椅子が並べられていた。大人しく指示通りに座った。私達が座っていく間に司会者は表彰式を進めていく。

『それでは、これより表彰式を始めます。まずはアナウンス部門です。』

 係の人に促されて、先輩が舞台中央に進み出た。すると、万雷の拍手が沸き起こった。

 先輩が偉いさんと対面すると、偉いさんはおもむろに賞状を補助の人から受け取り、恭しく読み始めた。

『“表彰状。優勝。N県立東和高等学校、神倉千穂殿。あなたは、第71回NHK杯全国高校放送コンテスト、アナウンス部門において、頭書の成績を修められたので、これを賞します。令和6年7月25日。全国放送教育研究会連盟理事長、扇谷愛美。”・・・おめでとう。』

 普段は決して見せない誇らしげな表情で先輩は賞状を受け取った。さらに大きな優勝杯が手渡された。私は夢中で拍手した。自分のことのように誇らしかった。会場中からもさっきにも増して大きな拍手が起こった。

 続いて真帆ちゃんが舞台中央に進み出た。

『表彰状。準優勝。N県立高倉高等学校、渋川真帆殿。以下同文です。』

 会場から先輩の時と同じように万雷の拍手が起こった。私も夢中で拍手していると、係の人に声を掛けられた。

「鵜峠鹿の子さん、栗須入鹿さん、舞台中央に進み出てください。」

 慌てて席を立ち、鵜峠さんに続いて舞台中央まで歩いた。発表の時とは違った風景が見えていた。アナウンスをしている時は観客席は気にならなかった。でも、今はあまりにも多くの人が私達の為に拍手してくれているのを見て、ひどく緊張してしまった。脚が震えて上手く歩けない。鵜峠さんは何とも無いのかなぁ・・・。そう思いながら、ふと鵜峠さんの手を見ると、細かく震えていた。そうか・・・やっぱり緊張してるんだ。私だけじゃ無いと判ると、震えが止まった。

『表彰状。優秀賞。F県立鐙野高等学校、鵜峠鹿の子殿。以下同文です。』

 鵜峠さんに賞状が手渡された。彼女が後ろに下がったので、代わって私が前に出た。

『表彰状。優秀賞。N県立東和高等学校、栗須入鹿殿。以下同文です。』

 私の手に賞状が手渡された。また目頭が熱くなった。必死に涙を堪えて後ろに下がった。あぁ、去年の先輩に並ぶことができたんだ。ようやく、そのように実感できた。

「では、アナウンス部門の方、退場してください。」

 指示通り私達が舞台袖に引っ込むと、代わりに朗読部門の人達が舞台へと出て行った。

 ☆

 こうして長かったNコンの全日程が終了した。最終日も終わるのが夕方5時を過ぎるのが判っていたので、国立オリンピック記念青少年総合センターにもう一泊することになっていた。

 緊張の連続だったせいか、センターに帰って来てからも頭がくらくらする。

「ドルフィンちゃん、ふらついているよ。大丈夫?」

 真帆ちゃんが心配して声を掛けてくれた。

「うん・・・疲れたのか、頭がくらくらして、体もふらふらするんだよね・・・。」

「良くないね。部屋で休む?」

「うーん・・・でも、風邪をひいた時とは違って、お腹がペコペコなんだよね・・・。案外食べたら元気になるかも・・・。」

「なら、少し早いけど夕飯にしましょう。」

 先輩がそう提案してくれた。皆も異存は無いようだったので、カフェテリアに移動した。

 今日は奮発して料理以外にジュースも注文した。

「皆!ジュースは手元に行き渡ったかな?・・・うむ、それでは皆の健闘を祝して乾杯しましょう!」

 私がそう言ってグラスを持って立ち上がると、響子ちゃんが呆れ顔で言った。

「ドルフィンちゃん、ふらふらするって言ってたのに、のりのりだねぇ。」

「だって、だって、先輩が日本一になったんだよ!お祝いしたいじゃん!」

 それを聞いた先輩は、ちらりと私の顔を見ると、同じようにグラスを持って立ち上がった。

「体調が良くないのに、そんな気を遣わせてしまって、ごめんなさい。でも、とっても嬉しいわ。」

 それを聞くと、皆がグラスを片手にすっと立ち上がった。私は全員がニコニコしながら立っている様子を確認して、音頭を取った。

「では、皆さんの健闘と、神倉先輩の日本一を祝して・・・乾杯!」

「「「乾杯!!!」」」

 ごくごくとジュースを飲む。んんーん、こんな美味しいジュースを飲んだのは生まれて初めてかも。正に五臓六腑に染み渡るとはこのことなんだろうなぁ。ジュースを飲み干すと、頭のくらくらもすっと無くなった。この調子なら、体のふらふらも食べたら治りそうだ。

「では、皆さん!ご飯にしましょう!・・・いただきまーす!」

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