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こちら、県立東和高校放送局です!  作者: 田鶴瑞穂


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ええ~!?決勝の課題原稿って・・・まるで入試問題みたいだ!果たして私の学力でクリアできるのか!?

 受付を離れると、壁際で先輩と真帆ちゃんが待っていてくれていた。

「開会式まで時間が無いから、課題内容を確認するわよ。」

「「はい!」」

 先輩は、私と真帆ちゃんにプリントを見るよう促した。

「いい?課題を読み上げるわよ。

 “決勝大会当日の午前の部に発表されるラジオドキュメント部門4作品の中から1作品を選び、100字以内の「紹介ニュース」としてまとめ、自校ニュースに続けてアナウンスしなさい。”

 “注意事項、1、発表時改めて「課題」と言わないこと。

 2、原稿化に当たっては、必ず紹介する学校名を入れること。

 3、原稿は、当日朝配布する指定原稿用紙に記入し、同じものを2部作成し、集合時に提出すること。”以上よ。」

 え・・・えええっ!?作品を聞いてから、集合時間までに仕上げないといけないの!?

「ど、ど、ど、どうしましょう?先輩。」

「まずは、深呼吸でもして落ち着きなさい。」

 は、はいっ!ゆっくり息を吸って~・・・はい、ゆっくり吐いて~・・・もう一度、ゆっくり息を吸って~・・・はい、ゆっくり吐いて~・・・。ふー、ちょっとは落ち着いたかな?

「はい・・・落ち着きました。」

「いい?4校の作品を集中して聞いて、内容をメモしなさい。全てを聞き終わった後で、一番自分の心の琴線に触れた学校を紹介するのよ。自分が感動した内容なら、紹介文を書き起こすのは容易いわ。ただし、100文字しか許されていないので、聞き手に対してどう伝えるか、普段の自分の表現力が問われるわね。」

 えぇーーーー!?何ということだ・・・まるで入試問題みたいだ・・・果たして私の学力で良い原稿が書けるのだろうか・・・???

「栗須さんも渋川さんも筆記用具は持ってる?メモできる紙はある?・・・そう、では、席に戻りましょう。」

 神倉先輩は私達が筆記用具やメモ用紙を持っているかどうかを確認してから自席に戻るため階段を登り始めた。実は、筆記用具とメモ用紙については、宿舎を出る時に一度確認されているんだよね。先輩が心配性なのか、それともおかぁちゃん気質なのか、まぁ、どっちにせよ私達の事を心配してくれるのは有り難かった。

 受付に意外と時間が掛かったので、時を置かずして開会式の時間になった。

 開会式では、コンテスト委員長の挨拶に続いて審査員の紹介が行われた。それから、昨年の優勝カップが返還されるセレモニーが行われた。

 そして、いよいよ審査開始!午前中は番組部門だ。 

 しかし、楽しむ訳にはいかない。私達は、最初のラジオドキュメント部門を聞いた上で課題原稿を書かなければならないのだ!

 ☆

 流石、決勝進出したラジオドキュメント部門の作品は、どれも聴きごたえのある素晴らしいものだった。この中から一作品選んで推薦文を書かなければならないのかぁ・・・まず一つに絞るのが大変だ。先輩は、自分の心の琴線に触れたものを選びなさいと言ってたなぁ・・・どの作品が一番自分の心に響いたんだろうか・・・。

 しばらく自問自答した後に、決まった。K県のK市立国分寺高等学校の作品だ。きちんとデータ整理が出来ているし、落ちも良い。よし!紹介文を書こう!

「ドルフィンちゃん、どの作品にするか決まった?」

 真帆ちゃんが心配そうに聞いてきた。

「うん!決めた。国分寺高校にする。」

 真帆ちゃんは意外そうな顔をした。

「そうなの?私はH県の北黒滝高校の作品かなぁ。社会派な内容が良いと思って。」

 うん。確かに内容はいいよ。でも、良すぎて自分が紹介しなくてもいいような気がするんだよね。

「うん。確かに良いよね。でも、皆が選びそうじゃない?独自性を持たそうとすると、別のがいいかな、って思って。」

「うーん、そう言う考え方もあるのかぁ・・・でも、迷っていても仕方ないから、私は北黒滝高校の作品にするよ。」

「そうだね。迷っている暇はないもんね。よし!お互い、良い紹介文を書こうね!」

 ☆

 ラジオドキュメント部門から始まった決勝戦は、続いて創作ラジオドラマ部門、テレビドキュメント部門、創作テレビドラマ部門と、番組部門の作品が次々と発表されていった。作品が発表された後、各校の代表者が登壇した。司会の高原さんが作品に込めた思いなどを代表者に聞いている。これだけの大舞台、そして三千人を超える観客を前にして、皆さん実に堂々と答えている。それだけ自分達が創った作品に対して胸を張れるだけの自信があるんだろうなぁ。逆に、これぐらいの自信を持てなければ決勝には行けないのかもしれないなぁ・・・。

 なんて、考え事をしている暇は無いんだ。テレビドキュメントを創る者としては、決勝まで残った作品を真剣に聴いたり視たりしたかったんだけど、課題原稿のことを考えるとそうはいかない。あーでも無い、こーでも無いと書いては消し、書いては消しをしている間に、全ての番組部門の発表が終わってしまった・・・とほほ・・・。

『以上で、番組部門の発表を終了します。』

『午後はアナウンス部門、そして朗読部門の決勝を行います。』

『また、全ての発表が終了した後もNコンはまだまだ終わりません。』

『皆さんもご存じの通り、昨年、Nコンは今回で第七十回を迎えました。それを記念して、校内放送研究発表会の発表がここNHKホールで行われました。今年も昨年に引き続き、校内放送研究発表会の発表を行います。

 発表するのは発表校同士の投票によって選ばれたT県の南総里見高等学校とH県の市立発寒高等学校の2校です。発表内容は、皆さんのこれからの学校放送活動に必ず役に立つことと思います。楽しみにしていただきたいと思います。』

『それでは休憩に入ります。』

 休憩時間になってしまった。課題原稿、こんなんでいいのかなぁ?

「先輩!課題原稿が出来たんですけど、一度見てもらっていいですか?」

「ええ、いいわよ。」

 私は先輩に下書きを書いたメモ用紙を手渡した。それを受け取った先輩は真剣な表情で読んでくれた。

「少し手直ししても良い?」

「え!?も、勿論です!宜しくお願いします!」

 私の返事を聞くと、先輩は赤ペンを筆箱から取り出して、幾か所かをささっと訂正した。

「これでいいと思うわ。急いで清書して。」

「はい!有り難うございます!」

 私が提出用の原稿用紙に清書している間に、響子ちゃん、紙織ちゃん、神志山さんの三人は賞状を貰いにロビーに向かった。しばらくして、神志山さんが戻ってきた。

「先輩!皆さんが記念撮影しようって言ってます。もう、原稿の方は書けましたか?」

 どうやら、私を呼ぶためにわざわざ戻ってきてくれたみたいだ。

「あ、有り難う。もうすぐ終わるから、ちょっと待ってね。」

 書き上げた原稿に間違いが無いか読み直してみる。二部ともちゃんと書けていた。

「うん、お待たせ!書けたよ。行こうか。」

「はい!」

 神志山さんと一緒にロビーに降りると、朝には無かった賞状を渡すスペースがずらりと設置されていた。そこには大勢の参加者が未だ列を成していた。

「ほへ~、部門毎に窓口が設けられているんだねぇ・・・。」

 道理でロビーが受付窓口で埋まるはずだ・・・。

 さて、玄関から外へ出ると、フォトスポットが設置されていた。一つは、N・H・Kの三つのアルファベットのオブジェだ。如何にも、だけど大人気で撮影するために列が出来ていた。

 もう一つは、昭和の時代から馴染まれているマイクのイラストに「NHK杯」と「全国高校放送コンテスト」のロゴを重ねた、ちょっとレトロな感じのするパネルだ。

 最後の一つは、Nコンマスコットキャラクター「めで.co」がマイクの前にスタンバっており、やはり手前に「第71回全国高校放送コンテスト」のロゴが入れられたパネルだ。うーん、何とも今風だなぁ。

「さて、どれの前で記念撮影しようか。」

「何言ってんですか、先輩。全部に決まってるでしょうが!」

 神志山さんが当たり前のように胸を張って言った。

「えっ!?そうなの?」

「そうだよ、ドルフィンちゃん。折角なんだから、わざわざ選ぶ必要は無いでしょ。」

 紙織ちゃんも神志山さんと同じ意見らしい。

 神倉先輩の顔を見ると、うんうんと頷いている。真帆ちゃんの顔を見てもやはりうんうんと頷いている。わ、私だけかぁ!?遠慮してるのは!?

「さぁ、さぁ、早く、早くぅ!後ろが閊えているよ!ドルフィン!」

 響子ちゃんが私の背中を押している。あぁ、もう、どうでもいいかぁ。

「よ~し!取るぞぉ!」

「あ!私がシャッターを押しましょうか?」

 近くにいた見ず知らずの他所の学校の人がわざわざ申し出てくれた。

「あ、有り難うございます!」

「す、済みません。有り難うございます。」

「いえ、いいんですよ。お互い様ですから。」

 遠慮せずに撮って貰った。お礼をせねば!

「私も皆さんの写真を撮らせて頂きます!」

「ふふ・・・有り難うございます。宜しくお願いします。」

 なんか皆さん、凄く社交的だ。私も見習わないとなぁ・・・。

「はい!チーズ!」

 カシャ!・・・皆さん、良い笑顔だ!

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