準決勝終了!60名の内、決勝に行けるのはたったの10名だ!うぅ、発表までドキドキが静まらない!
然う斯うするうちに第1グループが終了。第2グループの発表に移った。
それにしても皆上手だなぁ・・・流石だ。この中で上位に食い込まないと決勝には行けないんだよなぁ・・・。果たしてそんなことができるんだろうか?
おっ!いよいよ神倉先輩の出番だ。まぁ、先輩のことだから心配はいらないだろうなぁ・・・。
『二十一番、神倉千穂。
“皆さんはボランティア活動に参加したことはありますか?
そもそもボランティアとは、何でしょうか?一般的には自発的な意志に基づき他人や社会に貢献する行為だと言われています。強制されたり、義務としてではなく、自分の意志で行う活動です。
何だか難しそう、そもそもやる時間が無い、なんだかやるのが恥ずかしい、そのように考える人も多いのではないでしょうか?
大丈夫です。ボランティアはそんなに畏まったものではありません。
道路の落ち葉を掃き集める。
地域のお祭りの手伝いをする。
横断歩道を渡ろうとしているお年寄りを助ける。
こう言うことも立派なボランティアなのです。
情けは人のためならず、と言うことわざがあります。人にした親切はめぐりめぐって自分に返ってくる、という意味です。
このことわざこそ、ボランティアの本質ではないでしょうか。
誰しも、はじめの一歩を踏み出すには勇気がいります。人のために何かをする、と思うと、つい力んでしまうかもしれません。
しかし、そのはじめの一歩をあなたも踏み出してみませんか?”』
『NHKニュース7(せぶん)の担当キャスターのうち伊藤アナウンサーと福島アナウンサーはNコン出身です。「きょうもあすも あなたと一緒に」を合言葉に私たちの先輩が活躍しています。』
うむ!県大会の時よりも更に上手くなっている。贔屓目では無く、明らかにここまで聴いてきた二十人よりも頭一つ分抜きんでているぞ・・・。うーん、先輩よりも上手い自分と言うものが想像できないなぁ・・・。どう考えても今年自分が全国上位になることは無い気がする・・・。いやいや・・・そんな弱気なことでどうするドルフィン!とにかく現時点での自分のベストを示せば良いんだ!
さて、発表はいよいよ私が属する第3グループに移った。
自分の出番までに心を落ち着かせよう・・・ゆっくりと息を吸い込んで、それをゆっくりと吐き出す。もう一度、ゆっくり息を吸い込んで、ゆっくりと吐き出す・・・。もう一度・・・・・・よし!次はいよいよ私の番だ!
『二十八番、栗須入鹿。
“皆さんは、書道パフォーマンス、と言うものをご存じですか?
書道パフォーマンスとは、音楽などに合わせて、体全体を使って大きな半紙に大きな筆で文字を書く演技のことです。
元々は、愛媛県立三島高校書道部が、町おこしの一環として地元を盛り上げようと始めたもので、これが全国放送されたところ瞬く間に評判となり、今では全国大会が開かれています。
我が校の書道部も、昨年からこの大会に参加するようになりました。切っ掛けは、現在書道部の部長を務めている大曾根亜衣さんが、入部と同時に顧問の先生に対して大会への参加をお願いしたことでした。
大曾根さんは、中学生の時、テレビで書道パフォーマンスを見て、その虜となり、高校生になったら自分も参加したい、と思い続けていたのです。
昨年は残念ながら予選落ちでしたが、大曾根さんは諦めず、一年間思いを共有する部員達と共に研鑽を積んできました。
そして、今年の大会。大曾根さん達書道部は見事予選を突破しました。
本戦は七月二十八日に四国中央市で開催されます。”』
『NHKニュース7(せぶん)の担当キャスターのうち伊藤アナウンサーと福島アナウンサーはNコン出身です。「きょうもあすも あなたと一緒に」を合言葉に私たちの先輩が活躍しています。』
うん・・・やれることはやった。自分では上手くしゃべれたと思う・・・後は審査結果を待つだけだな。
☆
アナウンス部門の審査が終わり、私達は昼食を摂るために会場を後にした。
「先輩、この時間ならもうすぐテレビドキュメント部門も昼休憩に入るはずですから、神志山さんにも声を掛けてあげたいんですが?」
番組部門の準決勝では、それぞれの学校の発表時間が決められており、開会行事の後、9時30分から16時40分までぶっ続けで審査が行われる。しかし、流石に審査員にも昼食を摂る時間が必要なので、12時40分から13時30分までは休憩時間が設けられている。
「そうね。彼女も一人で心細いでしょうから、声をかけてあげるのは賛成よ。」
よし。先輩も賛成してくれた。私達は、テレビドキュメント部門の審査会場であるカルチャー棟大ホールに向かった。
アナウンス部門の方が早く終わったので、私達が大ホールに着いた時はエントリーナンバー20番の発表が始まったところだった。私にとっては全国レベルの番組を視るのは、高倉高校の作品以外では初めてだ。・・・衝撃だった。偶然視ることになったこの作品も、高倉高校の作品に決して劣るものでは無かった。こんなレベルの作品が四〇本も出てるのか!?
「先輩・・・。」
「何?栗須さん。」
「午後はここに居て他校の番組を視ていいですか?」
神倉先輩はニコッと笑って許してくれた。
「折角だものね。私なんかに遠慮せずに是非そうして。貴女は私と違って番組も作るんだから。勉強させてもらうと良いと思うわ。」
「有り難うございます!」
すると、真帆ちゃんが身を乗り出して来た。
「私もドルフィンちゃんと一緒に視る!我が高倉が再び日本一になるために研鑽を積むのだ!」
あはは・・・真帆ちゃんらしいなぁ。神倉先輩もニコニコと私達のやり取りを見ている。うーん・・・まるっきり先輩が顧問のようだ。西町先生は何をしているんだ、まったく・・・。
そうこうする内に番組は終わり、昼休憩に入った。神志山さんを探すと・・・あぁ、居た居た。
「神志山さーーーん!」
私が声を上げると、神志山さんはぎょっとしたような反応を見せた。そして、急いで私達のもとに駆け寄って来た。
「せ、せ、せ、先輩!何事ですか!?」
なんか、神志山さん、凄く焦っているんだが・・・何故?
「いや、何事って?」
「そんなに大きな声で呼ばなくても聞こえますって!?」
「えっ?そんなに大きかった?普通に呼んだつもりだったんだけど・・・?」
私と神志山さんの会話を聞いて、真帆ちゃんと神倉先輩がふっと笑った。
「ドルフィンちゃん・・・私達が本気で発声したら、普通では無い大きさの声になるの、自覚してる?」
「えっ!?」
「自覚無しかぁ・・・普通の女子高生では出ないレベルの声を私達は出しているの。自覚しておかないと要らぬ恥をかくわよ。」
ええーーー。そうなのか?!私は思わず神倉先輩の顔を見た。すると先輩はふぅと溜息をついた。
「まさか栗須さんが自覚してなかったなんてね・・・いい?渋川さんの言う通りよ。私達の本気の声はもの凄く大きんだから。日常会話をする時とアナウンスの時で声の使い分けができるようにならないと駄目よ。」
愕然とした・・・そうだったのか・・・私、そんなの意識したこと無かったよぉ・・・。そんな私を放っておいて、先輩は神志山さんに話しかけていた。
「お疲れ様、神志山さん。今から私達と一緒にお昼ご飯を摂らない?」
「えっ?いいんですか?」
「いいも何も、遠慮なんかしなくていいのよ。貴女も私達の仲間なんだから。」
「はいっ!有り難うございます!ご一緒させてください!」
「それじゃぁ、行きましょう。・・・栗須さん!いつまで固まってるの!行くわよ!」
はっ!?あまりのショックに固まってしまっていた・・・あぁ、待ってぇ~!置いてかないでぇ!?
☆
昼食後、私達はカルチャー棟の大ホールに直行した。テレビドキュメント部門は午後から後半の二〇本が上映、審査される。全国レベルの作品をこれほどまとめて視る機会は滅多にない。響子ちゃんと紙織ちゃんはこれから朗読部門の発表だから、私達が視て勉強しないとね。
「先輩、午前中の二〇本も力作揃いで凄かったんですよー。午後も楽しみです。」
神志山さんは凄く前向きだ。これからの番組作りには彼女が重要な存在になってくれる、そう思えるのだった。
午後5時前、テレビドキュメント部門の準決勝が終わった。ほぼ同じ時刻に朗読部門も終了。私達は響子ちゃんと紙織ちゃんと合流して、早めの夕食を摂ることにした。
夕食の場で私は衝撃の事実を知った!神倉先輩から決勝進出者の発表は決勝戦の会場、すなわちNHKホールで行われることを聞いたのだ。
「えぇ~!?このドキドキハラハラ状態のまま明日を向かえないといけないんですかぁ?」
「ええ、そうね。この中から決勝進出者が出るといいわね。」
食事をしながら神倉先輩は他人事のように呟いた。
いやぁ~、先輩が駄目だったらこの中の誰も決勝には行けないでしょ、と言う言葉が喉元まで出掛かったぞ。いや、よく我慢したなドルフィンよ!褒めてやるぞ!
アナウンス部門の場合、決勝に進出できるのは、準決勝出場者六〇名中たったの十名だ。私や真帆ちゃんは決勝に進むことができるのかなぁ・・・。あー!?こんな気持ちで明日の朝まで待たなきゃいけないなんて!?まるで拷問だよぉ・・・。




