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こちら、県立東和高校放送局です!  作者: 田鶴瑞穂


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よーし!全員、準々決勝クリア!次は準決勝だ!同じ轍は踏まない。今日は十分な睡眠も摂ったし、全力でいくぞぅ!!

 Nコン二日目。

 一日目の失敗に懲りた私達は、昨晩は早めに就寝してしっかりと睡眠を取った。お蔭で、目覚ましに頼ることなく起きることができた。それは私だけじゃなくて、皆も同じだった。

「おはよう!」

「おはよう、ドルフィンちゃん!」

「「「おはよう!」」」

 全員寝坊することなく起床をしていた。そこで、朝飯前の運動として、私達は昨日と同じように明治神宮の森の方へ向かって発声練習を行った。真夏とは言え、早朝、そして多くの木々に覆われた神宮の森の傍は爽やかだった。

「「「あ・え・い・う・え・お・あ・お。

 か・け・き・く・け・こ・か・こ。

 さ・せ・し・す・せ・そ・さ・そ。

 た・て・ち・つ・て・と・た・と。

 ・・・・・・・・・・・・。」」」

 静かな神宮の森に私達の声が響いてゆく。

 変な緊張感は無い。よし、今日もベストを尽くすぞ。そう自分自身に誓った。

「おはよう。今日は皆、顔色が良いわね。よく眠れた?」

 神倉先輩が玄関から出てきた。

「はい!よく寝ました!」

 響子ちゃんが元気よく答えた。

「そう・・・声出しも出来たようね。・・・貴女達、今日の課題はチェックした?練習もしておくのよ。」

 うん?課題?何のこと?

「えーと、先輩。何のことですか?」

 先輩は、ふぅーと大きな溜息を吐くと、私達の方をきりっと睨んで言った。

「月曜日のNコン事務局からのお知らせに附いてたでしょ?PDFファイルの2枚目と3枚目よ。」

 うん?お知らせ?私はスマホをポケットから取り出してファイルを開け、スクロールしてみた。すると!

「あっ!?準決勝の課題が載ってる!!」

 再び先輩は大きな溜息を吐いた。

「やっぱり気が付いていなかったのね・・・。まぁ、準々決勝では関係なかったから言わなかったんだけど、今朝の内に言っておいて良かったわ。」

 響子ちゃんと紙織ちゃんもスマホを見て叫んでいる。

「「ぎゃぁーーー、朗読の課題も出ているぅーーー!?」」

 その様子を見ながら、先輩はまったく慌てず、静かに言った。

「朗読部門は午後からよ。だから、響子さんと紙織さんは、午前中にしっかりと読みの練習をリハーサル室でやりなさい。空で言えるまで繰り返すのよ。判った?」

「「は、はいぃぃぃ!」」

 明らかに響子ちゃんと紙織ちゃんの表情にほっとした色が浮かんでいる。そっか・・・朗読は午後だもんね。・・・うっ!?ちょっと待って!私達アナウンスは朝からじゃん!

「真帆ちゃん!今から練習しよう!」

「え、ええ!よしっ、やろう!」

「先輩!朝ごはんまでに仕上げます!」

 それを聞いた先輩はふっと笑いながら私達の顔を見て優しく言った。

「焦っちゃぁ駄目よ。焦りは失敗の元。貴女達の実力なら、難なくこなせるはずだから。」

「はいっ!有り難うございます!」

 先輩はそのまま回れ右して、宿泊棟に戻って行った。

「よーし、頑張るぞう!」

「おーーー!!!」

 ☆

 さて、アナウンス部門の準決勝進出者は、9時に受付をしなければならない。皆で朝食を摂った後、センター棟に向かった。

「では、先輩。私はカルチャー棟に行ってきます。」

 テレビドキュメントの準決勝はカルチャー棟の大ホールで行われる。今日も神志山さんは一人でそっちに行ってくれるのだ。

「御免ね、神志山さん。全部任しちゃって・・・。」

 済まなさそうにする私に対して、彼女は毅然として言った。

「何言ってんですか!先輩こそ、準決勝頑張ってください!私の方はただ動画を再生するだけで、大変なことなんてないんですから!」

 ううっ・・・有り難い・・・なんて良い後輩なんだ・・・。

「お願いします。」

 私は神志山さんにぺこりとお辞儀をした。響子ちゃんと紙織ちゃんも同じようにぺこりとお辞儀をしている。

「任せてください!」

 そう言って神志山さんは自分の胸を叩いた。

「ドルフィンちゃん、私達も神志山さんと一緒にカルチャー棟へ行くね。」

 そう響子ちゃんに言われて、私はスマホで準決勝進出者へのお知らせを再度見てみた。

「えっと・・・“アナウンス・朗読準決勝進出の皆さんへ。出場受付はセンター棟417号室で、アナウンス9:00~9:10、朗読12:50~13:00にあります”・・・か。」

「そう。だから、私と紙織ちゃんは神倉先輩に言われた通りリハーサル室で課題原稿の練習をしたり、昼食を食べたりしてるね。発表直前にご飯を食べると声を出し難くなるから、早めに食べたいし。」

「うん、そうだね。じゃあ、私達アナウンス組は受付しにセンター棟に行くよ。」

「頑張ってね!」

 こうして、響子ちゃんと紙織ちゃんもカルチャー棟に向かった。

 ☆

 受付時間にはまだ少し早かったけど、既に多くの人が並んでいた。私達も最後尾を探して列に並んだ。

「9時になりました。ただいまより、準決勝進出者の受付を開始します。準々決勝のエントリーナンバーカードはお持ちでしょうか?準々決勝のカードと引き換えに準決勝のエントリーナンバーカードを配布します。あと、原稿も必要です。受付時に提出して頂きますので、用意しておいてください。」

 さぁて、いよいよ準決勝だ。出場者はまだ60人もいる。だから、準決勝も準々決勝と同じように6つのグループに分けられている。それぞれのグループに集合時間は決められており、その時間までに会場入りしなければならない。それまでは昨日同様リハーサル室で練習したり、他校生との交流をしていても良いのだ。

「先輩はどのグループですか?」

「私は第2グループよ。集合時間は9時45分だから、リハーサル室に行ってる暇はないわね。ここで待つわ。」

「そうですか・・・真帆ちゃんは?」

「私は初っ端。だから、このままこの部屋に待機だよ。そう言うドルフィンちゃんは?」

「私は第3グループ。集合時間は10時10分だから、あと1時間ほどあるかな・・・。」

「でも、開会行事が9時10分から30分まであるみたい。あんまし時間はないね。」

 そっか・・・今日も開会行事があるのか・・・まぁ、諸注意とかも含まれてるし、聞き逃すと碌なことはないから、ちゃんと出ないとね。

「それで・・・。」

 先輩が小声で聞いてきた。

「二人とも、課題原稿の練習はできたの?」

「はいっ!バッチしです!」

「それほど長い文章でもないので、もう覚えちゃいました。」

 えっ!?真帆ちゃん凄い・・・でも、確かに短いものだから、朝ごはん前にあれだけ繰り返せば覚えちゃうか・・・。

「そう・・・でも、油断は禁物よ。必ず原稿を確認しながら読みなさい。」

「「はいっ。」」

 さぁ、そろそろ開始時間だ!

 ☆

 開会行事が終わって、第1グループの発表が始まった。

 せっかく全国大会に参加できたんだし、準決勝ではリハーサル室には行かないで他の参加者の発表を聴くことにした。全国ベスト60のアナウンスを聴くチャンスなんかそうそう無いもんね。

 などと考えている間に真帆ちゃんの出番だ。真帆ちゃん、全然緊張してないな。これは期待できそうだ。

『十一番、渋川真帆。

 “皆さんに残念なお知らせがあります。

 長年に渡り、我が校の入学式や卒業式の際に式場の生け花を活けてくれた高倉生花店が、今年度末で閉店されることになりました。

 高倉生花店さんは式典だけではなく、生徒会役員の引退式、先生方の離任式などでも、採算度外視でとても素敵な花束を作ってくれました。

 私達高倉生にとって掛け替えのない思い出と共にある花屋さんです。

 何故閉店されるのか、お店を訪れてその理由をお聞きしました。

 閉店の理由は、お年を召されて体力のいる生け花を活けることが辛くなったためでした。

 式典の生け花を活けるには、近くの水道から舞台上まで何度も重い水の入ったバケツを持って往復しなければなりません。また、多くの花を運び込むために、トラックと舞台上との間を何度も往復しなければなりません。最近膝と腰に痛みを感じるようになり、それらの作業が辛くなったとのことでした。

 次の卒業式が長年親しんだ生け花の見納めとなります。高倉生花店さん、これまで本当に有り難うございました。”』

『NHKニュース7(せぶん)の担当キャスターのうち伊藤アナウンサーと福島アナウンサーはNコン出身です。「きょうもあすも あなたと一緒に」を合言葉に私たちの先輩が活躍しています。』

 うん。お見事!流石真帆ちゃん!課題原稿も今朝の特訓が効いているな。二人でここの間を開けようとか、ここでワンテンポ置こうとか意見を出し合ったところが見事に再現できている。私も頑張らなきゃ・・・。


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