表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちら、県立東和高校放送局です!  作者: 田鶴瑞穂


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/119

さぁ!まずは準々決勝だ!頑張ってクリアするぞ!なんたって、目指すのは決勝なんだから!

 そろそろ朗読部門が終わる頃だ。声出しは十分やった。気持ちも落ち着いている。

「それじゃ、会場に向かいましょうか。」

 神倉先輩が自信に満ち溢れた顔つきをしながら言った。他の人に後れを取ることなど微塵も思っていないようだった。それもそうだ。先輩は自分が参加できる最後のこの大会で日本一を取るつもりなのだ。準々決勝などで心が乱れるはずは無い。私もこの尊敬する偉大な先輩に勝つ気で臨まなければ決勝など夢の又夢だろう。よし!やるぞ!

「はい!行きましょう、先輩!」

 私の意気込みが伝わったのだろう、先輩は私の顔を見て、ふっ、と微笑んだ。

「いい顔つきね。アドバイスはいらないわね。」

「はい!これからの三連戦、全力で臨みます!」

 真帆ちゃんが吃驚した顔で私の方を振り向いた。

「えっ!?さ、三連戦って・・・な、何???」

「何言ってるの、真帆ちゃん。準々決勝、準決勝、決勝の三連戦に決まってるじゃん!」

「えっ!?・・・まずは準々決勝を勝ち抜けないと先には行けないよ?」

「決勝進出を目指すなら、準々決勝と準決勝は勝ち抜けて当然でしょ!私、決勝のことしか考えていないよ!」

 真帆ちゃんは最初目を丸くしていたけど、やがて納得したように幾度も頷いた。

「そうだよね・・・準々決勝如きでびびってたんじゃ決勝には行けないよね・・・よぅし!私もやるぞ!ドルフィンちゃんや神倉さんに置いてけぼりを喰らうのは御免だもんね。」

「そうそう、その意気だよ。お互い頑張ろうね!」

 そんなことを言い合っている内にセンター棟に着いた。

「それじゃぁ栗須さん。後でね。」

「はい!後で!真帆ちゃんも後でね!」

「うん!頑張ってくる!」

 私達はホールで別れを告げて、それぞれの会場へと向かった。

 ☆

 発表そのものは県大会とさほどの違いも無かった。最初に点呼があって、エントリー順に座って、自分の順番が来たら発表席に移動して、何時ものように発表するだけだった。

 自分のグループの発表が終わって、エントランスホールに出ると、真帆ちゃんが待っていた。

「真帆ちゃーん!」

 私は真帆ちゃんの元へ駆け寄った。

「真帆ちゃん、どうだった?」

「うーん。自分では上手くやれたと思うんだけど・・・。」

「それじゃぁ大丈夫だね。結果の発表は夜なんだよね。それまでのんびり待とうよ。」

 二〇分ほど待っていると先輩がエントランスホールに出て来た。

「お待たせ。」

「いえ。先輩、どうでしたか?」

「いつも通りよ。」

 先輩は表情を変えることなく言った。

「それじゃぁ先輩。宿泊棟に帰って結果を待ちましょう。」

「そうね。でも、貴女達、折角の機会なんだから他府県の人達と交流してきたら?」

 私は真帆ちゃんと顔を見合わせた。他府県の人達との交流?考えもしなかった。

「交流って・・・どうするんですか?」

「カルチャー棟に沢山の人がいたでしょ?皆、他校の人達と交流するために集まってるのよ。番組部門の参加者は自分達の作品をDVDROMに焼いたものを交換したりしてるわよ。アナや朗読参加者は貴女達も貼ってた寄せ書きにメッセージを書いて交流を呼びかけたりしているわね。」

 そうだったのか・・・まぁ、確かに全国の同志が集まる機会って、Nコンと全総文ぐらいしかないもんね・・・でも、まだ交流したいほど親しみは湧いてないかな・・・。

「うーん・・・先輩、まだ交流したい、と思えるほど他校の人達と接触してませんから、今日はまだいいです。真帆ちゃんは?どうする?」

 私の問い掛けに真帆ちゃんは顎に指を当てて少し上を向きながら考えていたけど、しばらくして私の方を見て言った。

「高倉のメンバーは多分DVDROMの交換をやってると思う。百枚ほど焼いてたし。・・・私はいいかな。他の子に任すよ。」

 う、うちも判っていたら準備したんだけどな・・・まさか、そんなことが行われるなんて・・・予想外も良い処だよ。

「貴女達がいいと言うのならそれでいいけど・・・。」

「せんぱーーーい!ドルフィンちゃーーーん!」

 うん?誰かが私達を呼んでいる?あっ!?響子ちゃんと紙織ちゃんが駆け寄って来る。そっか、私達を待っててくれたんだ。

「二人ともお待たせ。アナウンスも終わったよ。」

「ど、どうだった?」

 響子ちゃんが息を切らせながら聞いてきた。

「うん、私達は平常運転だよ。夜の結果待ちだね。」

「私達のことより、貴女達はどうだったの?」

 先輩が心配そうに響子ちゃんに聞いた。

「はいっ!私達も平常運転できました!多分、大丈夫です!」

「そう・・・では、夜に行われる結果発表を楽しみに待ちましょう。」

 ☆

 午後六時半ごろになって、神志山さんがヘロヘロになりながら戻ってきた。

「お帰り!どうだった?」

 神志山さんはテレビドキュメント部門に我が校代表として参加してくれていたのだ。

「はい・・・全国の作品を見れたのは面白かったんですが・・・五十本近い番組を見るのは後になるほど段々しんどくなって・・・疲れました・・・。」

 うん。確かに神志山さん、目の下に隈ができてる。

「ごめんね、神志山さん一人に任せてしまって。」

「いえ・・・先輩達は発表があるんですから・・・自分が担当するのは当然です。」

「いやいや、ほんと、神志山さんが居てくれて助かったよ。有り難うね。」

 先輩みんなからお礼や労いの言葉を掛けてもらって、神志山さんははにかんでいた。

 ☆

 午後八時頃、待ちに待った結果がようやく発表された。

 昔は準決勝進出者・校一覧は模造紙に手書きで発表されたらしいけど、今はHP上にUPされるのだ。しかし、スマホだと字が細かすぎてよく判らない・・・。

 ふふっ、しかーし!心配ご無用!こんなこともあろうかとタブレットを持って来ているのだよ、明智君!

 さて、私達はどうだったのかな?まずはアナウンス部門だ。六〇名の名前がずらりと並んでいる。エントリー順に書かれているから、上から順に見ていくしかないな・・・。

「A会場は、っと・・・あっ!?神倉先輩の名前、みっけ!」

 当然あるものだと思っていたけど、実際にあるのが判るとほっとする。先輩の顔を見ると、にこりともせずに頷いている。嬉しいと言うよりも、第一段階突破って感じなんだろうなぁ・・・。さて、お次は、と。

「B会場・・・あっ!?真帆ちゃん、みっけ!やったね!」

 真帆ちゃんの名前もあった!真帆ちゃんの顔を見るとめっちゃ嬉しそうにニコニコしている。うむ。素直でよろしい。私も嬉しいよ・・・あ、でも、これで私の名前が無かったら嫌だなぁ・・・し、C会場は、と。

「あっ!?私の名前もあったぁ!あはははは、やったぁ!あはははは!」

 安心すると笑いが止まらない・・・我ながら恥ずかしい・・・。

「おめでとう!ドルフィンちゃん!やったね!」

「有り難う、真帆ちゃん。でも、まだ他の部門を見てないから、喜ぶのはまだ早いよ。」

 さぁて、次は朗読部門だ。響子ちゃんはB会場か・・・えーと。

「あっ!響子ちゃん、みっけ!やったね!」

 響子ちゃんは腰に両手を当てて、どうだ、と言わんばかりだ。えーと、紙織ちゃんはC会場か・・・えーと。

「あっ!紙織ちゃんもみっけ!やったね!」

 紙織ちゃんは頬を赤らめながら俯いた。ふふっ、嬉しいんだよね。判るよ、その気持ち。

 これで、私達は全員準決勝への進出が決まった!

「先輩!テレビドキュメントは?」

 おっと、神志山さんの言葉で我に返ったぞ。テレビドキュメントも確認せねば!

「えーと、準決勝進出はわずか四十校か・・・えーと・・・あっ!高倉高校、みっけ!やったね、真帆ちゃん!」

「うん。順当だね。うちのメインはテレビだから、準々決勝敗退はありえないよ。」

 おお!凄い自信だ!・・・まぁ、判るけど。高倉の実力はよく知っている。これまで何回も全国一位を取ってるもんなぁ。むしろ、決勝進出を逃す方が難しいのかも・・・。

 さて、我が校はどうかな・・・と、と、と、あ、あ、あったぁ!

「神志山さん!響子ちゃん!紙織ちゃん!ある!あるよ!私達の学校名が!凄い!初出場で準決勝進出だぁ!」

「えーーーーーっ!本当!」

 響子ちゃんは素っ頓狂な声を上げた。

「嘘みたい・・・。」

 紙織ちゃんは本当に信じられない、って顔をしている。

「きゃーぁー!やりましたぁ、先輩、おめでとうございます!」

 神志山さんは、我が事のように喜んでくれてる。

「皆さん、おめでとうございます!」

「いや、いや、これも真帆ちゃんや桑畑先生のお陰だよぉ。私達だけの力じゃ準決勝進出なんて有り得なかったと思うよ。ありがとう、真帆ちゃん!」

 真帆ちゃんは顔を真っ赤にして俯いてしまった。でも、事実なんだよなぁ・・・真帆ちゃんの協力と桑畑先生の指導がなければ、こうはいかなかったはず。

「私、今から桑畑先生にお礼を言いに行ってくる!」

 そう言って立ち上がった私に次いで、響子ちゃんも紙織ちゃんもすっくと立ち上がった。

「私達も一緒に行く。私達からもお礼をいわなくっちゃぁ。」

「うん!行こう!」

「私もアナウンスの準決勝進出を報告に行くから、一緒に行こう!」

 真帆ちゃんもニコニコ顔で立ち上がった。

「神倉先輩、出かけてきます。」

 私が先輩に告げると、先輩は右手を挙げて私達を制した。

「いえ、私も一緒に行くわ。後輩たちがお世話になったのに、未だ一度もお礼を言って無かったから。」

「では、皆で行きましょう!」

 ☆

「いや、よくやった。我が県から2校も準決勝に進出したのは、本当に喜ばしい。できればこのまま決勝まで行きたいものだがなぁ。」

 皆揃って桑畑先生にお礼と準決勝進出を報告しに行ったところ、先生はうちの事も自分の学校の事のように喜んで、褒めてくださった。

「本当に、これまでご指導、有り難うございました。東和は番組作りの経験者もノウハウも無かったのに。今回準決勝に進めたのは、ひとえに先生のお陰です。」

 神倉先輩も先生に丁寧なお礼を言ってくれた。

「君達はセンスもあるし、何よりも自ら学ぼうとする姿勢があったからな。これからも研鑽を積みなさい。」

「「「はい、有り難うございます!」」」

「まぁ、しかし、お礼を言うのは未だ早いかもしれないぞ。今日の審査次第では決勝進出もあり得る訳だからな。」

 その言葉を聞いて、私達は思わず顔を見合わせてしまった。まさかね・・・。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ