さぁ、決勝戦だ!皆さん凄い人ばかりだけど、負けてらんない!やるぞ!目指すぞ!全国を!
神志山さんの発表が終わった。やっぱり何十回となく反復練習をした自作原稿と比べると、課題原稿の方はかなり見劣りする・・・。まぁ、しょうが無いよねぇ。初めてなんだし。でも、去年の私と比べれば上手だった、と思う。うん。
神志山さんはしょげて、肩を落としつつ降壇してきた。おっと、入れ替わりに私が登壇せねば。神志山さんを慰めるのは後だな。
私は、神倉先輩をリスペクトして、堂々と階段を登り姿勢良く待機席に座った。
これでコンテストへの参加も四度目だ。大勢の知らない人達の前で喋るのにもだいぶ慣れて来たなぁ。神倉先輩みたいに普段と全く変わらずにしゃべれたら・・・去年はそう思ったんだよね・・・今年の私はできてるのかなぁ・・・いまいち判んないな・・・。おぉ!今年は三人の一年生が両拳を胸の前でしきりに上下させて“頑張れ”ってエールを送ってくれてる。皆、有り難う!私、ベストを尽くすからねっ!
丹鶴高校の池田さんの発表が終わった。池田さんと入れ替わりで真帆ちゃんが登壇し、席に着いたことを確認した。よーし!いくぞぉ!
『二十四番、栗須入鹿。
“皆さんは、書道パフォーマンス、と言うものをご存じですか?
書道パフォーマンスとは、音楽などに合わせて、体全体を使って大きな半紙に大きな筆で文字を書く演技のことです。
元々は、愛媛県立三島高校書道部が、町おこしの一環として地元を盛り上げようと始めたもので、これが全国放送されたところ瞬く間に評判となり、今では全国大会が開かれています。
我が校の書道部も、昨年からこの大会に参加するようになりました。切っ掛けは、現在書道部の部長を務めている大曾根亜衣さんが、入部と同時に顧問の先生に対して大会への参加をお願いしたことでした。
大曾根さんは、中学生の時、テレビで書道パフォーマンスを見て、その虜となり、高校生になったら自分も参加したい、と思い続けていたのです。
昨年は残念ながら予選落ちでしたが、大曾根さんは諦めず、一年間思いを共有する部員達と共に研鑽を積んできました。
そして、今年の大会。大曾根さん達書道部は見事予選を突破しました。
本戦は七月二十八日に四国中央市で開催されます。”』」
よしっ!緊張もしなかった。我ながら上手く読めた。次!課題原稿だ!
『“榛生市にある榛生高校で、介護を学んでいる生徒が地域のお年寄りを学校に招いて、おもてなしをするイベントが行われました。
この日は、地域の高齢者およそ七十人が学校を訪問し、床に敷かれている的に玉を投げ込むなど、体を動かすゲームを生徒と一緒にして楽しんだり、生徒達が作ったコーヒーやお菓子を食べながら会話を楽しんでいました。
参加した80代の女性は「若い人と話をして元気が出ました。高校生が介護を学んでくれていて、大変心強いです」と話していました。
また、2年生の大野さんは「将来は介護の仕事を希望しています。お年寄りが日々明るく過ごしていけるよう接していきたいです」と話していました。”』
うむ!初めて見る原稿でも思う通りの間を取れたし、読み詰まりもしなかった。取り敢えずベストは尽くせた。去年は上手く読めなくて泣いちゃったけど、今年は堂々と自信を持って降壇できるな。
私と入れ替わりで神倉先輩が登壇して行った。相変わらず凛とした姿勢で登っていく。あ、ああっ!そうだ!県内のコンテストでは、これが先輩の発表を聴く最後の機会になるんだ。早く席に戻って、先輩の勇姿をこの眼で見なければ!
私が席に着くと同時に真帆ちゃんの発表が始まった。
『二十九番、渋川真帆。
“皆さんに残念なお知らせがあります。
長年に渡り、我が校の入学式や卒業式の際に式場の生け花を活けてくれた高倉生花店が、今年度末で閉店されることになりました。
高倉生花店さんは式典だけではなく、生徒会役員の引退式、先生方の離任式などでも、採算度外視でとても素敵な花束を作ってくれました。
私達高倉生にとって掛け替えのない思い出と共にある花屋さんです。
何故閉店されるのか、お店を訪れてその理由をお聞きしました。
閉店の理由は、お年を召されて体力のいる生け花を活けることが辛くなったためでした。
式典の生け花を活けるには、近くの水道から舞台上まで何度も重い水の入ったバケツを持って往復しなければなりません。また、多くの花を運び込むために、トラックと舞台上との間を何度も往復しなければなりません。最近膝と腰に痛みを感じるようになり、それらの作業が辛くなったとのことでした。
次の卒業式が長年親しんだ生け花の見納めとなります。高倉生花店さん、これまで本当に有り難うございました。”』
『“榛生市にある榛生高校で、介護を学んでいる生徒が地域のお年寄りを学校に招いて、おもてなしをするイベントが行われました。
この日は、地域の高齢者およそ七十人が学校を訪問し、床に敷かれている的に玉を投げ込むなど、体を動かすゲームを生徒と一緒にして楽しんだり、生徒達が作ったコーヒーやお菓子を食べながら会話を楽しんでいました。
参加した80代の女性は「若い人と話をして元気が出ました。高校生が介護を学んでくれていて、大変心強いです」と話していました。
また、2年生の大野さんは「将来は介護の仕事を希望しています。お年寄りが日々明るく過ごしていけるよう接していきたいです」と話していました。”』
うん。何回聞いても真帆ちゃんは上手い。間違いなく全国に行くんだろうなぁ・・・。
さて、次は神倉先輩の出番だ。
『三十四番、神倉千穂。
“皆さんはボランティア活動に参加したことはありますか?
そもそもボランティアとは、何でしょうか?一般的には自発的な意志に基づき他人や社会に貢献する行為だと言われています。強制されたり、義務としてではなく、自分の意志で行う活動です。
何だか難しそう、そもそもやる時間が無い、なんだかやるのが恥ずかしい、そのように考える人も多いのではないでしょうか?
大丈夫です。ボランティアはそんなに畏まったものではありません。
道路の落ち葉を掃き集める。
地域のお祭りの手伝いをする。
横断歩道を渡ろうとしているお年寄りを助ける。
こう言うことも立派なボランティアなのです。
情けは人のためならず、と言うことわざがあります。人にした親切はめぐりめぐって自分に返ってくる、という意味です。
このことわざこそ、ボランティアの本質ではないでしょうか。
誰しも、はじめの一歩を踏み出すには勇気がいります。人のために何かをする、と思うと、つい力んでしまうかもしれません。
しかし、そのはじめの一歩をあなたも踏み出してみませんか?”』
『“榛生市にある榛生高校で、介護を学んでいる生徒が地域のお年寄りを学校に招いて、おもてなしをするイベントが行われました。
この日は、地域の高齢者およそ七十人が学校を訪問し、床に敷かれている的に玉を投げ込むなど、体を動かすゲームを生徒と一緒にして楽しんだり、生徒達が作ったコーヒーやお菓子を食べながら会話を楽しんでいました。
参加した80代の女性は「若い人と話をして元気が出ました。高校生が介護を学んでくれていて、大変心強いです」と話していました。
また、2年生の大野さんは「将来は介護の仕事を希望しています。お年寄りが日々明るく過ごしていけるよう接していきたいです」と話していました。”』
あぁ、やはり私の目標は先輩だ。いつか・・・いつかこんな風に喋れたら、素敵だろうなぁ・・・。全国に行けたら、もう一度先輩の喋りを聴けるんだけどなぁ・・・県内ではこれが最後かぁ・・・名残惜しいなぁ・・・。いかん、涙が出て来た。別にお別れって訳じゃないのに・・・。あぁあ、涙よ止まれ!止まってくれぇ!
『以上で、アナウンス部門の発表を終わります。続いて、朗読部門の発表を始めます。二番、七番の人は登壇してください。』
泣いている内にアナウンス部門が終わってしまった。真帆ちゃんが心配そうにこっちを見てる。うん、真帆ちゃん、心配はいらないから・・・でも後で何て説明しようか・・・うーん、困ったぞ・・・。
☆
「ドルフィンちゃん!大丈夫?どうしたの?心配したんだからぁ!」
朗読部門の発表も終わり、休憩時間に入った途端、案の定真帆ちゃんが詰め寄ってきた。やっぱり、何事!?って感じで心配してくれてたんだ。・・・済みません。ご心配かけるようなことじゃないんです・・・。
「大丈夫だよぉ。心配かけてごめんね。」
「えっ?どうしたの?また泣いてたの?今年は去年みたいに失敗しなかったのに。」
神倉先輩も驚いて聞いてきた。・・・済みません、先輩。先輩には余計に恥ずかしいので理由が言えません。
「ほ、本当に大丈夫ですから!・・・あっ!鯨山君!番組の方も発表は終わったの?」
ホールに鯨山君達が入って来たのを見て、皆の注意をそちらに向けるべく、私は殊更大声を出した。
「やぁ、皆。あっ、先輩、お久し振りです。」
鯨山君達は、私達の中に神倉先輩がいるのに気付いて、ぺこりと挨拶した。
「お久し振りね。番組部門の当番、ご苦労様。」
「いえ、座っているだけでしたから、大した事はありませんよ。」
そんな会話を聞いている内に、NHKのアナウンサーさんとプロデューサーさんが舞台に上がられ、MCの先生がマイク前に立ち、アナウンスが始まった。
『お待たせいたしました。審査が終わりましたので結果を発表します。まずは、アナウンサー部門の結果を発表します。
優秀賞、東和高校栗須入鹿さん、高倉高校渋川真帆さん、東和高校神倉千穂さん・・・優良賞、御船高校鷲頭浅茅さん、丹鶴高校池田阿須賀さん、猪垣高校市野咲花さん・・・奨励賞、猪垣高校高森香菜さん、東和高校神志山心愛さん、越路高校西向亜衣さん・・・以上です。』
おぉ!やったぁ!三人揃って優秀賞だ!神志山さんは奨励賞か・・・去年の私と同じだな。これは来年が楽しみだ。
『続きまして、朗読部門の結果を発表します。
優秀賞、高倉高校浜野宮優華さん、東和高校三輪崎響子さん、東和高校鵜殿紙織さん・・・優良賞、丹鶴高校鏡野月渚さん、御船高校二河玲佳さん、猪垣高校橋杭海愛さん・・・奨励賞、高倉高校荒船絢さん、越路高校浦神耕太郎さん、丹鶴高校珊瑚美那さん、以上です。』
おぉ、おおお!響子ちゃんも紙織ちゃんも優秀賞ではないか!凄いぞ!皆で全国大会に行ける・・・うう、夢みたいだぁ・・・。
『続いて、ラジオドキュメント部門です。・・・・・・。』
おっと!番組部門の発表も始まっているぞ。うちの作品はどうだったのかな?
『続いて、テレビドキュメント部門です。優秀賞、高倉高校「視聴率を獲得せよ!校内放送大作戦」、東和高校「書道部の挑戦!行くぞ、“書道パフォーマンス甲子園”へ」、優良賞・・・・・・。』
うん?今、うちの名前、呼ばれなかった?
「ねぇ、うちの名前、よばれた?」
小声で響子ちゃんに聞いてみた。
「うん・・・呼ばれたよね?」
「質問に質問で返さないでよぉ。ねぇ、紙織ちゃん?」
「大丈夫。ちゃんと呼ばれたよ。これで番組部門でも全国に行けるね!」
えー!?信じらんない・・・番組でも優秀賞をとれたの!?凄くない!?
「おめでとう、ドルフィンちゃん!」
真帆ちゃんもニコニコ顔で祝福してくれた。まぁ、高倉高校も優秀賞だから、ね。余裕あるなぁ・・・。
『・・・以上です。では、続いて表彰式を行います。今、名前を呼ばれた人、番組部門に関しては代表者一名が舞台に上がってください。』
おっと、早く舞台に登らねば・・・。しかし・・・。
「誰が番組の表彰を受ける?」
私は鯨山君を見た。でも、彼は首を振ってゼスチャーで断って来た。
「作った人が賞状を受け取るべきだろ・・・ドルフィンが兼ねれば?」
それを聞いて、響子ちゃんも紙織ちゃんも異論は無いようだった。
「ここまでで一番熱心に頑張ったのはドルフィンちゃんだから、ね。」
「そうそう。貴女以外にはいないわよ。」
あぁ、ほんと、私はいい友達に恵まれたなぁ・・・。
舞台に上がると、アナウンス部門が先頭列で、優秀賞、優良賞、奨励賞の順に並ばされた。私たちの後ろに朗読部門が同じ様に並び、その後ろにラジオ部門の代表者が、さらにその後ろにテレビ部門の代表者が並んだ。
「東和高校のテレビドキュメントの表彰を受ける人は?いないのですか?」
「はいはい!私が兼ねます!」
私は手を挙げて、慌てながら申し出た。
「そうですか。では、テレビドキュメントの時も忘れずに前へ出てくださいね。」
「判りました。」
『では、表彰式を始めます。本コンテスト主催の、県放送教育研究会会長、城山大輔先生に表彰していただきます。』
あっ!?今年はいきなり私から表彰を受けるんだ!・・・な、なんか、発表中とは違って緊張するなぁ・・・。
「アナウンス部門、優秀賞、東和高校、栗須入鹿殿、貴方は第七一回NHK杯、全国高校放送コンテスト県大会において、優秀な成績を修められたので、これを賞します。令和六年六月十六日、放送教育研究会会長、城山大輔・・・おめでとう。」
「有り難うございます!」
思わず大声で答えてしまった。自分では見えないけど、多分、今私、とってもにやけてるんだろうなぁ・・・。ぺこりとお辞儀をし、両手で賞状を受け取る。途端、胸の奥から熱いものが込み上げてきた。・・・おっと、下がらないと。次は真帆ちゃんだ。
「優秀賞、高倉高校、渋川真帆殿、以下同文です。・・・おめでとう。」
「有り難うございます!」
満面の笑みで真帆ちゃんも元気一杯の返事をしている。なんかそう言う流れを作ってしまったみたいだ・・・御免なさい。
「優秀賞、東和高校、神倉千穂殿、以下同文です。・・・おめでとう。」
「有り難うございます!」
おぉ、何時もクールな先輩が、今回もまた物凄く綺麗な笑顔で賞状を受け取ったぞ!先輩でもNコンで賞を取るのは嬉しいのかぁ・・・凄く意外な気がするけど・・・先輩も高校生なんだなぁ・・・。
『・・・続いて優良賞です。・・・・・・。』
☆
『・・・以上で、表彰を終わります。表彰された皆さんは降壇して席に戻ってください。なお、各部門の優秀賞、優良賞を受賞者、並びに作品は、東京で開かれます全国大会に推薦されます。』
とうとう全国大会かぁ・・・去年は行けるなんて思ってもみなかったんだけどなぁ・・・。素直に嬉しい。皆と一緒に行けるのも嬉しい!今日は人生で一番嬉しい日かも。




