開会行事も終わり、いよいよ予選開始だ!おおっ、一年生達も良い調子じゃないか。それでは私達も頑張らねば!
『以上で開会行事を終わります。予選を開始しますから、アナウンス部門に出場する人は大会議室に移動してください。朗読部門に出場する人はこのまま大ホールに留まって下さい。番組部門の審査は午後からになります。場所は視聴覚室です。』
さぁ、いよいよ予選だ。アナウンス部門の参加者は去年よりも少なくて七十人ほど。一方、朗読部門は九十人を超えているから、会場が前とは逆になったようだ。
「じゃぁね、皆。私達は大会議室に移動するから。」
「うん!新鹿さんも神志山さんも頑張ってね!」
響子ちゃんが二人を励ました。
「「はい!頑張ります!」」
朗読部門に参加する四人を残して、私達アナウンス部門参加者は移動だ。さぁて、頑張るぞぉ。
『それでは、アナウンス部門の予選を開始します。エントリーナンバー1番、2番、3番の人は前に来てください。1番の人は発表席に、2番3番の人は発表席横の待機席に座ってください。発表が終わったら1番の人は席に戻り、入れ替わりで2番の人が発表席に着いてください。その間に4番の人は前に移動して待機席に座ってください。以後、これの繰り返しです。スムーズに発表が進みますよう、皆さんのご協力をお願いします。』
予選が始まった!私は何時ものように、自分で作った手製の採点表を取り出してペンを構えた。他の人達の発表を聴いて、それぞれの良いところ、悪いところをメモるのは、凄く勉強になるからだ。あっ?!一年生にこのことを教えていないや・・・すっかり忘れてた・・・まぁ、今更仕方が無いか・・・後で教えよう。
さて、うちの一番手は神志山さんだ。
『十二番、神志山心愛。
“落ちこぼれた生徒を一人でも多く救いたい。そう語るのは、個別指導の塾を経営している柳本茂さんです。
柳本さんは、十年間有名進学塾の講師をしていました。しかし、塾の授業について行くことができない生徒が、次々に辞めていく姿に疑問を感じ、五年前に独立しました。
彼が作ったのは、進学を目的とはしない、もっぱら小中学校の授業内容の復習や、定期考査対策を行う塾でした。
塾の方針は、決して見捨てない、と言うこと。どんな子も時間を掛けて教えれば理解できる、と言う信念のもと、柳本さんは何時も根気強く、子供たちに向き合ってくれます。
子供たちがつまづいているところは様々です。柳本さんは、子供たち一人一人を分析して、それぞれに合わせた方針を考えてから指導しています。
受験の為の画一的な授業をすればよい進学塾と比べると、柳本さんの塾は、準備も指導も大変です。
しかし、学校の勉強についていけるようになった子供たちの姿を見ると、そんなことは苦にならないそうです。
柳本さんは、子供たちのために、今日も熱い授業を行います。”』
うん。私が指摘したところは全て直っているな。時間も一分二十五秒、上出来だ。
神志山さんから六人置いて、今度は新鹿さんの番だ。
『十九番、新鹿陽花里。
“大人気のシェフ山本のどら焼きは、どうしたら手に入るのか。
皆さんは、東和市内で人気のケーキ屋、シェフ山本をご存じでしょうか?
大変おいしいケーキを作るお店なので、東和高校の生徒の間でも、よく話題に上ります。
しかし、東和生が問題だと感じているは、この店の人気商品である、洋菓子風どら焼きが手に入らないことです。
どの生徒に聞いても、何時も売り切れていて食べたことが無い、と言う人ばかりです。一体、どうすれば手に入るのでしょうか。
実際にお店のパテシエ、山本さんに、何故何時も売り切れなのか、その理由を聞いてみました。
山本さんによれば、毎日作ってはいるが、人気商品なので午後1時には売り切れてしまっている、とのことでした。
私達高校生は、夕方にならないと買いに行けないので、夕方まで買えるように、もっと増産できないか、と聞いてみました。
残念ながら、山本さんのお答えは、無理だ、と言うものでした。その理由は、ご夫婦で経営している小さな店なので、一日で作れるお菓子の総数は三百個が限界で、今以上どら焼きの生産数を増やすのは無理だから、とのことでした。
どうしても手に入れたい人は、休みの日の朝、開店時間の三十分くらい前から並ぶしか方法はなさそうですね。”』
うん。新鹿さんも特に問題となるようなところは見られないな。時間も一分二十六秒。よしよし。上出来だよ、二人とも。
さてと、そろそろ私の番か・・・待機席に移動しよう。
コンテストに出るのもこれで四回目か・・・だいぶ慣れて来たな・・・そんなことを考えている内に自分の番が回ってきた。
発表席に座ってマイクの位置を確認し、一度深呼吸をしてから私はアナウンスを始めた。
『二十四番、栗須入鹿。
“皆さんは、書道パフォーマンス、と言うものをご存じですか?
書道パフォーマンスとは、音楽などに合わせて、体全体を使って大きな半紙に大きな筆で文字を書く演技のことです。
元々は、愛媛県立三島高校書道部が、町おこしの一環として地元を盛り上げようと始めたもので、これが全国放送されたところ瞬く間に評判となり、今では全国大会が開かれています。
我が校の書道部も、昨年からこの大会に参加するようになりました。切っ掛けは、現在書道部の部長を務めている大曾根亜衣さんが、入部と同時に顧問の先生に対して大会への参加をお願いしたことでした。
大曾根さんは、中学生の時、テレビで書道パフォーマンスを見て、その虜となり、高校生になったら自分も参加したい、と思い続けていたのです。
昨年は残念ながら予選落ちでしたが、大曾根さんは諦めず、一年間思いを共有する部員達と共に研鑽を積んできました。
そして、今年の大会。大曾根さん達書道部は見事予選を突破しました。
本戦は七月二十八日に四国中央市で開催されます。”』
うん。自画自賛するつもりはないけど、上手く読めたと思う。後は審査結果を待つだけだ。・・・おっと、まだ真帆ちゃんと神倉先輩の発表が残っている。二人のことだから大丈夫だとは思うけど・・・。
真帆ちゃんの発表は私の五人後だ。私が席に戻って間もなく、真帆ちゃんが待機席に移動した。さぁて、今回の真帆ちゃんの原稿はどんな内容なんだろうか・・・。
『二十九番、渋川真帆。
“皆さんに残念なお知らせがあります。
長年に渡り、我が校の入学式や卒業式の際に式場の生け花を活けてくれた高倉生花店が、今年度末で閉店されることになりました。
高倉生花店さんは式典だけではなく、生徒会役員の引退式、先生方の離任式などでも、採算度外視でとても素敵な花束を作ってくれました。
私達高倉生にとって掛け替えのない思い出と共にある花屋さんです。
何故閉店されるのか、お店を訪れてその理由をお聞きしました。
閉店の理由は、お年を召されて体力のいる生け花を活けることが辛くなったためでした。
式典の生け花を活けるには、近くの水道から舞台上まで何度も重い水の入ったバケツを持って往復しなければなりません。また、多くの花を運び込むために、トラックと舞台上との間を何度も往復しなければなりません。最近膝と腰に痛みを感じるようになり、それらの作業が辛くなったとのことでした。
次の卒業式が長年親しんだ生け花の見納めとなります。高倉生花店さん、これまで本当に有り難うございました。”』
うん。流石真帆ちゃんだ。正直私より上手いと思う。全国大会で上位に行くためには、まずは真帆ちゃんに追いつかないといけないな・・・。
さて、いよいよ神倉先輩の出番だ。先輩の発表を聴くのは一年ぶりかぁ・・・先輩のアナウンス、一体どれくらい進化してるのかなぁ・・・予想がつかないや。
『三十四番、神倉千穂。
“皆さんはボランティア活動に参加したことはありますか?
そもそもボランティアとは、何でしょうか?一般的には自発的な意志に基づき他人や社会に貢献する行為だと言われています。強制されたり、義務としてではなく、自分の意志で行う活動です。
何だか難しそう、そもそもやる時間が無い、なんだかやるのが恥ずかしい、そのように考える人も多いのではないでしょうか?
大丈夫です。ボランティアはそんなに畏まったものではありません。
道路の落ち葉を掃き集める。
地域のお祭りの手伝いをする。
横断歩道を渡ろうとしているお年寄りを助ける。
こう言うことも立派なボランティアなのです。
情けは人のためならず、と言うことわざがあります。人にした親切はめぐりめぐって自分に返ってくる、という意味です。
このことわざこそ、ボランティアの本質ではないでしょうか。
誰しも、はじめの一歩を踏み出すには勇気がいります。人のために何かをする、と思うと、つい力んでしまうかもしれません。
しかし、そのはじめの一歩をあなたも踏み出してみませんか?”』
・・・うーん・・・流石と言うべきか、久し振りに聞いた神倉先輩のアナウンスは既に高校生離れをしてしまったような気がする。贔屓目では無く本当に群を抜いている。私や真帆ちゃんも対抗すらできていないよぉ・・・これが全国トップクラスの実力なんだなぁ・・・。




